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ちしきの金曜日
 
日本人はクジラを食べる


日本人はクジラを食べることで知られている。
が、実際のところはほとんど食べてないのが実情だ。戦後、食料のない時代には手に入りやすい食料としてポピュラーな存在だったものの、国際捕鯨委員会(IWC)で捕鯨が制限されるようになってからは流通量が激減し、高級食材・珍味というポジションになった。私も、親から話を聞いたことがあるぐらいで、実際に食べたことはなかった。

ところが、関東から長崎に引っ越したら(10年ほど経つが)、スーパーの鮮魚コーナーに普通にクジラが並んでるではないか。街にはクジラ専門店まである!

つまり、クジラ食文化は地域によってかなり大きな差があることを知った。場所によっては今でもけっこうメジャーに食べられているのだ。

ということを、日本人でもけっこう知らない人が多いんじゃないだろうか(私がそうだったように)と思ったので、そのあたりのことを書いてみます。

T・斎藤



鯨カツ弁当

まずは、長崎駅で駅弁としても売っている「鯨カツ弁当」について書こう。

駅弁でクジラという時点で、もうかなり珍しいと思う。


鯨かつ弁当、1050円。 (長崎駅などで販売)

駅弁は、冷めた状態で食べるのが基本という弁当道の王道を行く弁当なので、カツなどの揚げ物系をメインに据えるのは難しい。(揚げ物は揚げたてが美味しいと相場が決まっているので)

なので、「どうなのかなぁ?」
と思いながらフタを開けたら、次の瞬間、カツのうまそうな匂いが漂ってきた!


フタを開けた瞬間からバターのようなカツのいい匂いが漂ってくる。

肉自体にたれを染みこませてある。

カツ自体に味がついており、ソースは付いてない。
この味付けが絶妙で、ソースなしでも物足りなさがまったくない。冷めた状態でも美味しいカツになっていた。


付け合わせはクジラの竜田揚げ。

付け合わせもクジラの竜田揚げ。さらに写真ではよく見えないが、クジラそぼろがご飯の上に敷き詰めてある。という徹底したクジラ攻勢。こういう尖った駅弁、大好きだ。

というわけで、駅弁として非常に高い完成度を誇っていた鯨カツ弁当。ほんと美味しいのでもっと有名になってほしいと思う。

 

鯨カツは、駅弁に限らず長崎ではあちこちで売っている。


お総菜コーナーで見かけることも。

駅弁がおいしかったので、他の鯨カツはどうなんだろうと思って買ってみたら、これまたうまい。

やはり肉自体に味付けがしてあり、ソースは不要。
何カ所かで買ってみたが、どこも同じスタイルだったので鯨カツとはこういうものなのだろう。

長崎ではあちこちで見かけるが、
それ以外では私はまだ見たことがない。

スーパーで普通に売ってる

冒頭でも述べたが、長崎ではスーパーで普通にクジラを売っている。


長崎ではスーパーの鮮魚コーナーにクジラがあるのは珍しくない。

 一方、刺身といえば超主流だと思っていたマグロが、長崎ではあまり見かけない。下手すると、マグロよりクジラの方が多いんじゃないか?と思ったくらいだ。(特に長崎に引っ越したばかりの頃はそう感じた。が、最近はマグロもよく見るようになったのでそうとも言い切れない。)


長崎では正月に鯨を食べるという習慣もあるので、年末は特に増える。

けっこうとんでもなく鯨だらけになったりもする。

くじら専門店がある


わかりやすい。

こちらは最近新しくなったクジラ専門店のビル。
でっかく描かれたくじらの絵が印象的だ。

くじら専門店は探してみるとけっこう幾つもある。
長崎ではもしかするとマクドナルドよりも多いかもしれない。
スターバックスよりは確実に多い。

結婚式でよく出る

長崎ではおめでたい時にはクジラを食べるので、結婚式ではよく出る定番だ。


鯨の盛り合わせ (写真はちょっと食べかけ)

さすが、結婚式で出る料理だけあって、きれいに盛りつけられている。

(写真を撮るのが遅れて、三分の一くらい無くなったところで撮った)


ベーコン。

こちらはクジラのベーコン。
薄く切って、ポン酢+もみじおろしや、からし酢味噌をつけて食べる。


いろいろな部位を食べる。酒もすすむ。

居酒屋などでもよく出る

こちらは割烹料理店で刺身の盛り合せを頼んだところ。さりげなくクジラ(湯かけ鯨)も出てきた。


この盛り合せは激うまだった。

以前、「究極の飲み放題の店」という記事で凄まじい飲み屋を紹介したが、そこでは刺身で出ていた。


大胆な出し方。(何かと衝撃的なことが多い店だったのでここでのクジラの味は覚えてない)

真っ二つに切っただけの柑橘類にも目がいってしまう。

年間消費量全国1位

後で知ったのだが、長崎はクジラの年間消費量が全国1位らしい。なるほど、どおりであちこちでクジラを見かけるわけだ。

では2位はどこだろうか?

以前、高知に行った時に街中にクジラのオブジェがあったりしたから、高知もクジラ文化が盛ん⇒高知かな?


高知も、街中にクジラオブジェがあるなど、クジラ押しな印象だった。

高知城の中にこういうジオラマが展示してあったり。

そういえば和歌山も捕鯨が盛んだったいう話を聞いたことがあるな…、などと思ったら、答えは宮城県だった。

宮城県は鮎川港に捕鯨基地があるかららしい。
(祖母が仙台に住んでたので宮城にはよく行ってたが、クジラは食べたことがなかった・・・)

次いで多いのは、、佐賀、山口、福岡…という順位らしい。
(ほとんど九州北部一帯しゃないか)

親父・お袋世代にとってのクジラ

今でこそ、特定の地域以外ではほとんど食べられていないクジラだが、昔は給食にも出るくらい一般的だったという。そのあたりの話を、おふくろに電話で聞いてみたところ、

戦後、食料のない時代に配給で配っていた。

ベーコンだったが、しょっぱくて脂でギトギトしていてまずかった覚えしかない。だから今でもあえて食べようとは思わない。

という、超マイナス・イメージだった。
ちなみにおふくろは東京の下町育ち。昭和13生まれなので終戦を迎えたのは7歳の頃、つまり小学校低学年での感想となる。

一方、おやじは昭和7年生まれ、終戦のころ中学生だったのでまた違った感想かもしれないと思って聞いてみた。ちなみに親父は仙台出身。クジラ消費量第2位の県出身なわけだが・・・

戦後は牛肉も豚肉もまったく手には入らなかったから、肉といえばクジラだった。

牛肉の大和煮の缶詰というのがあるが、それと同じ鯨の大和煮の缶詰をよく食べた。あれはわりあい美味しかった。

ウサギも食べた。家で飼ってるウサギを肉屋に持って行くと捌いてくれた。味は鶏肉とまったく同じでおいしかった。何度も食べた。

ウサギを捌くのは嫌だから肉屋でやってもらったが、鶏は自分ちで捌く家が多かった。

・・・だんだん違う話になっていったが、いずれにせよそういう時代の食べ物というイメージが、この世代の人たちに強いのは確かなようだ。

しかし、長崎で私が食べた鯨料理はどれも美味しかった。
長崎では、前述の鯨盛りの写真のように
・上等な部分を
・薄ーく切って
・ポン酢や酢味噌、それに薬味などをつけて食べる
というように、食し方が文化として確立しているところが
今も続いている理由なのかもしれない。

長崎では、ほんとあちこちでクジラが食べられる。
(ちゃんぽんとかトルコライスとか、長崎はどういうわけか食のガラパゴス現象がよく見られる)

 
 

 

 
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