片道7時間かかりました
朝10時の新幹線で東京駅を出発してからざっと7時間。ホテル立山に到着したのは17時だった。標高2450m。なんとなく空気が薄いように感じる。
フロントでチェックインを済ませ、新魚津からずっと気になっていたことを聞いた。 宿泊客は僕1人なのか?
「いえ、お客様の他にも6組のお客様が宿泊なされます」
良かった。東京から7時間もかかった山の中で1人きりは耐えられない。いや、「シャイニング」的な状況を楽しむのなら、1人きりの方がむしろ良いはずだ。でも、どうだろう。突然、双子の霊が現れたりしたら(映画にそういうシーンがあります)、洒落にならない。
雪深い山奥のホテルで、今シーズン最後の日。 「シャイニング」的な要素はそれだけで充分だ。
フロント横に置いてあった模型図を見て、改めて凄い場所にいることを認識した。この立地。まさに「シャイニング」のオーバールック・ホテルそのものだ。外に出てホテルの外観を見たかったのだが、フロントの人に止められた。吹雪いてきたから明日の朝にした方が良い。地元の人の的確なアドバイスである。
もう1つ、聞きたかったことを質問した。
「冬の間、管理人はいるんですか?」
もし、いるとしたら、それこそ「シャイニング」である。
「冬の間は従業員が1週間交代で管理します」
映画のように1家族がずっと住み込むようなことはないらしい。 「シャイニング」的なことにならないよう、1週間交代のシステムを導入しているのかもしれない。
フロントの人からキーを受け取り、部屋へ向かう。
僕の部屋は3階の一番奥。 最後の日なので通常料金で広い部屋を用意してくれた。
部屋の中はしっかりと暖房が効いていて、むしろ暑いくらいだった。二重構造になっている窓を開けると、一気に冷気が部屋の中に入ってきた。フロントの人が言うように、外はかなり吹雪いているようだ。慌てて窓を閉めると、部屋が再び静寂に包まれる。
静けさに耐えられなくなって、とりあえず部屋を出た。夕食までの時間、ホテルの中を歩いてみることにした。
「シャイニング」なホテルで、是非確認しておきたい部屋があったのだが、それは食事の後に確かめることにした。
1人の淋しさをお酒で紛らわそうと、高いビールを飲んだ。 高地だからだろうか。お酒の回りが早い。
程よくお酒が回ったところで、「シャイニング」な部屋を確認することにした。
超能力を持つ子供トニーが、同じ能力を持つホテルの料理人ハロランから「あの部屋には絶対に近づくな!」と言われた部屋がある。237号室だ。
ホテル立山の237号室はどうなっているのだろう?