次の周回が回ってくる
過酷過酷と言うけれど、今年のレースは明らかに去年よりも楽だった。道が凍っていないので横滑りを考えなくても良いのだ。そのためかレースはスピード化していたような気がする。僕も去年よりも速いラップタイムで走れていた。
順番が回ってきました。
楽とはいえ、去年に比べたら、という話だ。普段の暮らしに比べたらもちろん全然楽じゃない。こんな必死に寒い中で自転車漕ぐことないだろう。
前述のとおり、長い直線のあとの第一コーナーは鬼門だ。調子に乗って直線を飛ばしてきたレーサーをいともかんたんに飲み込んで離さない。両脇に救急車を常に待機させていることから、大会側の心配も読み取れる。
安全に、かつ速く曲がるには思いっきりアウトからインに向かってつっこむのがよい。
つっこんだらそのままハイスピードの下りが始まる。
普通ならばここはブレーキをかけずにスピードを稼げる場所のはずだが、我らがチームのマシンは「このレースに出るために捨てずに置いておいた」といわれるアンティーク。スピードに比例してハンドルが大げさにガタガタ震えるしブレーキが遊びなく急激に効くので恐ろしくて全権をゆだねられない。
それでも登りでは他のマシンを圧倒するパフォーマンスを見せてくれた。
いやそれは言い過ぎだ、他のママチャリと変わらないくらいには進んでいた。まあ登りは自分の頑張りが全てなのだけれど。
去年もさんざん悩まされたのが後半の登り。高低差が35メートルくらいあるところをママチャリで登っていく。
ここではぼとぼとと他のチームが脱落していく中、自転車を降りることを許されていない我らがチームは、ごりごりと登っていった。隣で降りて押している人と速度的には変わらないわけだが、足を着かないのが美学だ。
このレースは基本的にスピードを競うことに主眼を置いていないので、参加者はコスプレをしたり明らかに遅くなりそうなデコレーションを施したりしてそれぞれに楽しんでいる。過酷さすら楽しむレースなのだ。
再び感動のストレートへ
なんとか坂を登り切ると再び感動のホームストレートに戻ってくる。ピットに入れば交代のチーム員が待っていてくれるのだ。この達成感と安堵感のためだけに泣きながら(寒風が目に痛いので)走ってきた。
2巡目が無事終わった。時間的にも僕の出番はこれが最後だろう。すがすがしい達成感、そして見事なまでの疲労感。ああ、やってよかった。
しかし僕には他にもなにかやることがなかったか。
・・そうだ、ランチパック食べるんだった。