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土曜ワイド工場
 
クジラ工場見学


先日、「日本人はクジラを食べる」という記事を書いた。

それで、ふと思ったのだが
クジラを加工してる光景ってどんなんだろう?
捌いてるところとか、いまいち想像がつかない。

ということで、長崎のクジラ工場を見学させてもらいに行って来た。

T・斎藤



今回おじゃましたのは、長崎市にある株式会社日野商店さん。 長崎では古くからある鯨加工品会社だ。


こちらがクジラ工場

始めに鯨肉について、よもやま話を伺った。


社長の日野裕一さん
と、ネットショップ店長の日野寛子さんに話を聞きました。

前回の記事でも触れたが、長崎は個人1人当たりのクジラ消費量が全国1位の県である。というだけあって、現在も非常によくクジラが食べられている。それも、飲食店が普通に「鯨」と書いたのぼりを掲げていたり、年末には鯨の特設コーナーがあちこちに乱立するなど、「なんで?」と思うくらい鯨食文化が発達している。

その理由について、テーブルの上のクジラのフィギュアを見ながら説明してくださった。


クジラのフィギュア

九州では昔、クジラはすべて長崎の大村湾(東彼杵)に水揚げされていた。

そこで解体されて九州各地に運ばれていたわけだが、

鯨肉の中でも一番良い部分(腹の部分)は長崎に運ばれ、
次に良いとされる背中側の部分は佐賀に、
福岡には赤身の部分、
そして鹿児島には尾っぽの部分
という具合に地域ごとに運ばれる部位が違っていた。

当時(江戸時代)日本で唯一の貿易港として長崎は非常に栄えていた。つまりお金持ちの県だったので。


この辺は福岡に・・・


というわけで長崎には鯨肉の一番おいしい部分が、それも鮮度的にも良い状態で流れていた。

それが今日に至るクジラ文化の繁栄に繋がった。
というわけである。


鯨肉の説明

鯨肉は、腹の部分(畝)が一番おいしいらしい。
クジラは口を大きく開けてグワ〜ッと海水ごと食料を飲み込むが、そのグワ〜ッと膨らむ部分である。


このスジになっている部分を、畝(うね)と言う。(このフィギュア便利)


鯨肉の食べ方として有名なベーコンも、この部分から作る。
が、クジラのスケール感が普通じゃないので、実物のベーコンを見てもどこをどうしたものなのかいまいちよくわからない。


クジラのベーコン (手前)

図で説明してもらってようやく理解。
(マウスオーバーでお腹の縦ラインに該当する部分を表示)

上の画像にマウスを載せると赤いラインが表示されるが、それがクジラのお腹についてる縦のスジに該当する。

ベーコンは黒い表皮を取って赤く着色。
ブロックとして切り出したものをさらに薄くカットすると、2コ上の写真のようになる。


無駄なく全パーツ食べる。

この他、鯨はどの部位も無駄なく食べることができる。睾丸、食道から、歯茎など、漢方薬に出て来そうな名前が並ぶ。歯茎は髭のつけ根部分を差す。「百ひろ」というのは小腸。胃袋は、クジラは4つもあるそうだ。


くじら工場内部

さて、ではいよいよ工場に入ってみよう。
食品を取り扱う工場なので、まずは私もこんなふうに白衣に着替えた。


うっかりかわいくなったぞ。


一気に工場見学ムードが高まった。

洗面台の下に水が溜まってたり、見慣れぬ装置がいろいろあってついキョロキョロしてしまう。


長靴を洗うマシン。(中央の切り込みに足を突っ込む)

作業風景1

こちらが中の作業風景。

この日行っていたのは「オバ」と呼ばれる部分の最終選別作業。柔らかさによってランク分けする。


オバの選別作業

手袋をして感触を確かめさせてもらう。

分けられた物の触感を確かめさせてもらう。
ぐにゃぐにゃしている。たしかに物によってやわらかさが全然違った。


手掴みでも、白い手袋をはめていると実験っぽくなる。

そのまま酢味噌をつけて食べる。
クジラ独特の濃い旨みがあった。


作業風景2

こちらは先ほど選別した物をパッケージングする工程。


パッケージング作業

こんな感じでスーパーに並ぶ商品となる。


クジラのパーツ

別の場所には、加工前の「オバ」の部分がカゴに入って置かれていた。


加工前パーツ

オバというのは、オバQのオバではなく、
しっぽの「尾」に「羽」と書く。クジラの尾ひれの部分のことだ。


この部分がオバ(尾羽)。

これらは工場に入って来る段階で、すでにある程度の大きさにカットされた状態で入ってくる(25kgくらいと言われていた)。

写真に写っているのはそれからさらにカットしてるので、もう少し大きい状態で入ってくるそうだが、いずれにせよ我々が漠然とイメージするあの巨大なクジラがそのままの状態で運ばれてくるのではなかった。 (よく考えてみればそりゃそうか)


こちらもたしかカットされたオバ。

いわゆる解体作業は、捕鯨船の上で行われる。

クジラは捕獲されるとすぐ、まず調査のための測量が行われ、それが終わると直ちに解体作業が行われる。解体は40分という素早さで完了し、そのまま即冷凍保存される。そうすることで非常に鮮度の高い状態を維持できるそうだ。

そういえばマグロなんかも捕ってすぐに冷凍するという話を聞いたことがある。


船上の解体作業の様子。(商業捕鯨時代)

こちらは、商業捕鯨時代の写真なので、現在とは若干違うが、こんな感じで船上で様々な作業が行われる。


すごいスケール感。
これを40分で解体⇒冷凍するって尋常じゃない速さだ。

昔は、数を捕ることを優先させるために、捕獲作業が一通り済んでからまとめて解体していたが、現在は一匹捕ったらすぐに調査・解体する。従って昔よりも今の方が鮮度がいいらしい。


テーブルの横に昔の写真が飾ってあった。

また、商業捕鯨ではなるべく大きい鯨から狙って獲っていたが、現在の調査捕鯨では、ランダムに(大きいのを選んだりせず)一定の決められた間隔を開けて捕っている。あくまでも調査だからだ。


船に引き揚げる様子。船の先端がガバッと開く。


工程の流れ

工程の流れをまとめると以下のようになる。

1.選別
2.解凍
3.カット
4.熟成(中間処理)
5.選別
6.ボイル・スライス等
7.最終選別
8.パッケージング

選別作業が何段階にも分かれて入っていることがわかる。
素材を見分けることが品質に大きく影響するからなのだそうだ。


忙しくない時を狙って取材に来ました。

このうち今回、私が訪れた時に行われていた工程は
最終選別とパッケージング作業の2つ。

長崎ではお正月に鯨を食べる習慣があるため、12月は工場フル稼働でさまざまな作業が行われるが、今時期はちょうど最も忙しくない時期とのことで、この日はオバしかやっていないとのこと。という、写真的にはふさわしくない時に訪れてしまったわけだが、そのおかげでゆっくりとお話を聞くことが出来たというわけで。


絶品・湯かけくじら

こちらは「どうぞ」と言われて食べさせて頂いた「湯かけくじら」。

これがこの工場(日野商店さん)の全商品の中で最も売れていて、且つ美味しいと評判の自信作だそうだ。


湯かけクジラ

これが本当にうまくてびっくりした!

最初に何もつけないでそのまま食べた。
ほんのり塩味がついていて、何もつけなくても十分うまい。
次にポン酢をつけて食べたら、もう超うまい!

私が
「いくらでも食べられますね。」
と言いながら、バクバク食べていたら、残りをおみやげとしてくださった。(後から考えると、こういう場面では普通、一口か二口くらいにしておくべきだろう)

実は年末、長崎では街のあちこちでクジラが売ってるので私もひとつ買ったのだが、何を間違ったか安いテキトーなのを買ってしまい、それがひどくハズレだったのだ。酸化した油みたいな味というか、タイヤみたいな味というか。なるほどクジラは難しいな…というのがよくわかる残念な味だったのだ。

その後だっただけに、
ここの湯かけクジラのおいしさにはびっくりした。
なるほどたしかに!と鮮度・選別の重要性を認識。
ネット通販でも買えますとのこと)


こういうのもあった。

以下、余談になるが、これは鯨のヒゲの部分。
こういうちょっとしたパーツもすごいでかい。
(ヒゲというのは、口の部分に並んでいるやつだ)


大きさがわかるだろうか?

こちらはヒゲで作られたオブジェ。(入り口に飾られていた)

きれい。

知らない業界の話を聞くのは面白い。クジラみたいな特殊な世界(なにしろ商業的に捕っちゃダメなのに商売になっている)などは尚更だ。しかし振り返ってみると工場そのものは別段、特殊なところは何もなかったようにも思う。その他の食品工場とそんなに違わないのでは?という印象だ。

そして一番の発見は、湯かけクジラが美味しかったこと。
鯨肉にあまり良い印象を持ってない人(うちの親とか)も、こういうのを食べてみると印象が変わるのではないかと思った。

取材協力:日野商店くじら日和


 

 
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