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ロマンの木曜日
 
地元密着の町営ダムめぐり 〜2010年シーズンに向けた自主トレを開始〜


町営住宅、町営バス、などと並列の町営ダム

ダムにはいろんな型式や用途があって、規模も見た目もすごくバラエティーに富んでいます。それだけでなく、ダムを造って管理する、いわゆるダム事業者にもさまざまな種類があります。

たとえば、このところニュースに登場する八ッ場ダムや胆沢ダムは国が直轄で建設、管理しようとしているダム。また、日本最大で有名な黒部ダムは電力会社が造って管理しています。都道府県が運営しているダムもたくさんあります。

そんななか、なんと市町村レベルで建設、管理されているダムもあります。今回は、新聞の一面を飾る華々しいダムたちとは対極の場所にひっそりと建つ、町営ダムたちをめぐりました。

萩原 雅紀



房総半島で自主トレ

関東地方で市町村営ダムの宝庫は千葉県。特に房総半島に集中しています。千葉といえば落花生や菜の花が有名ですが、全体に占める割合だけで言えば町営ダムも特産物の仲間に入れてあげたいほど。もはや固有種と言ってもいいかも知れません。

そんな房総半島ですが、ダムめぐりの行き先として考えると、規模も存在感も地味なダムが多く、どうしても群馬や長野の巨大ダムたちの後回しになってしまいがち。


やっぱりこういうでかいダムを観たい

しかし、そういった巨大ダムが建つ山岳地帯は同時に豪雪地帯でもあるので、冬はダム好きにとってオフシーズン。

そこで、巨大ダムが雪に閉ざされて行けない冬の間は、温暖(なイメージ)で滅多に雪の降らない房総半島のダムたちをめぐって、不足した堰分(えんぶん)を補ったり、ダムを見る目やカメラの腕を養ったりします。言わばダムめぐりの自主トレ。

夜のスポーツニュースではプロ野球選手の自主トレ模様しか放映されませんが、彼らがバッティングのフォームを念入りに確認したりしているそのころ、僕らダム好きも洪水吐の形式を念入りに確認したりするのです。

というわけで、僕も今年1年の活躍を誓って、千葉に向かって出発しました。


しかしレインボーブリッジを渡ったり
アクアラインのトンネルをくぐったり

海ほたるでひと休みしたり
ぜんぜんダムに行く道っぽくない

 

元名ダム&鋸山ダム

アクアラインから繋がっている高速道路を南下、南房総の太平洋に面した鋸南町(きょなんまち)にやってきました。およそ東西9km、南北5kmという小さな町ですが、ここはなんと自前のダムを2基も持っています。


元名ダム/鋸南町
形式:ロックフィルダム
高さ:28.2m、幅69.0m
用途:上水道用水
着工:1978年/完成:1979年
鋸山ダム/鋸南町
形式:重力式コンクリートダム
高さ:19.1m、幅55.0m
用途:上水道用水
着工:1960年/完成:1962年


一見豪勢な話のような気がしますが、どちらも上水道用のダムと聞けば、安定して取水できるような大きな川がなく、もともと水の確保が難しい半島という場所で、多数の海水浴客が訪れる夏に水需要が急増する、という難題解決のためのソリューションではないでしょうか。

小さな町の小さな水道用ダムだけあって、万が一水が汚れたりしたら一大事。そこで、どちらのダムも立入禁止で、のどかなダムの雰囲気には似つかわしくないフェンスや監視カメラが設置されていました。ま、釣りとか以外でわざわざここを見に来る人がいる、とは想定していないのでしょう。


元名ダムの上は立入禁止
しかし洪水吐の入口は何とか確認

鋸山ダム入口には不釣り合いな監視カメラ
町のイメージとはかけ離れた強硬手段

 

作名ダム

鋸南町を後にして高速道路をふたたび南下。終点で高速を降りて一般道を進み、館山の市街地を抜けると田園地帯に。そこから地元の人しか通らないような細い道を進むと、作名ダムにたどりつきます。


途中、自主トレの場所っぽい道が出てきてテンションアップ でもダム直前は地元の人しか通らないような道

こういう、普段は地元の人しか通らないような道を通ってダム方面に向かうと、農作業中のおじさんとかが手を止めて、不審者を見る目でじーっと眺められたりするのであまり気持ちのいい道ではありません。

幸い稲作もオフシーズンらしく今回はそういう目に遭いませんでしたが、ある意味、自主トレ恒例の精神鍛錬(野球選手がお寺で座禅したりするような)と言えるかも知れません。


作名ダム/館山市
形式:重力式コンクリートダム
高さ:24.5m、幅145.0m
用途:上水道用水
着工:1971年/完成:1977年
どこから見ても地味すぎてどの写真を使うか悩んだ


作名ダムは館山市営の上水道用ダム。鋸南町と比べて人口も観光客も多いため、作名ダムの貯水量は元名ダムと鋸山ダムの貯水量を足した分のおよそ3倍くらい。こうして見るとちゃんと理にかなっているシステムだと思います。ダムのすぐ下流には浄水場があって、何というか「産地直送感」があります。

こういった町営や市営の小さなダムを調べていると、国直轄の巨大ダムで見られるような、さまざまな思惑が絡んだ人と人とのぶつかり合いが想像できなくて、本当に必要とされて造られ、完成してみんなに喜ばれた、というような光景しか見えてきません。都合のいい想像でしょうけど、ダムの脇に建つ自由な記念碑を見るとそう思います。


ダムの横に浄水場に水を送る貯水タンクが
「地元のおじいちゃんがダム周辺に植樹した」記念碑のようだ

 

白浜ダム

作名ダムを離れ、さらに南下すると房総半島最南端の南房総市(旧白浜町)に。この突端に建つ野島崎灯台付近から内陸に入る細い道を延々と進むと、旧白浜町エリアの水道を賄っている白浜ダムに突き当たります。


この道は何度通っても少し不気味
白浜ダム/南房総市
形式:重力式コンクリートダム
高さ:18.5m、幅62.3m
用途:上水道用水
着工:1963年/完成:1966年

市町村合併に伴って白浜町は南房総市となったため、白浜ダムも市営になってしまいましたが、もとはれっきとした町営ダム。堤体の小ささ、地味さともに、今回の町営ダムめぐりの最後を飾るにふさわしいダムと言えるでしょう。


写真はOKというお墨付きをもらったー! 冷静に考えると因果関係が分からないけど

というわけで、地元によって地元のために地元の税金を使って造られた町営、市営ダムを見てきました。大きなダムのような観光要素もないし、その地域以外の人には(旅行で町の水道を使うとかしなければ)まったくなんの関わりもないダムたち。でも考えてみれば「地域で使う水を貯めたい」という、ダムという概念の本質をいちばん残しているのがこの小さなダムたちではないか、という気もします。


自主トレのその後

4つのダムをめぐって汗を流したあとは、野島崎の岩場に立ち、目の前の太平洋に向かって今年の抱負を叫んだり、地元で採れた新鮮な魚介類を味わい、今シーズンも積極的なダムめぐりに出かける決意を新たにしました。


「年間30ダムめぐるぞー!」
千葉のダムに行くとそのあとの魚が楽しみになった

最後に、この日1日の行動を動画にまとめたのでご覧ください。


1年中ダムめぐりしたい

結局なんだかんだ理由をつけていつもダムめぐりしたいんだ、という記事でした。

どんな条件でも、好きなものは好きなので楽しいのです。でも房総半島は手強いダムが多いので、もし今シーズンからダムに参戦予定の方がいたら、やっぱりまずは群馬とか長野のでかいダムを思う存分見てきたらいいと思います。

そういえば浄水場の書体がマンガみたいだった

 
 

 

 
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