カリンバという楽器がある。板の上に配置された鉄の棒を親指で弾いて鳴らすアフリカの楽器だ。
シンプルな構造だが、触る人や板の後ろにつけるものによって奏でる音がまったく違ってくる。
カリンバ片手に街へ出て、その実力を確かめてみました。
(安藤昌教)
きっかけは職人の技から
カリンバとの出会いはこの方の演奏を見てから。
いい音。このカリンバは板の後ろにひょうたんが取り付けられていて、中で反響してすごくいい音が出る。
演奏しているのはカリンバ作りのプロ、高崎コウジさん。高崎さんは楽器や雑貨などを扱う小さくてかわいらしいお店を経営している。
高崎さんにお話しをうかがうべく、お店を訪れた。
で、店長どこいった
木や貝殻、廃材なんかでできた素朴な雑貨や、どこの国のものだかわからない楽器なんかがびっしりと詰まったお店はすごく居心地がいい。いいお店ですね!
「……」
高崎さんいない。なぜならさっきカギ閉めてお弁当買いに行っちゃったから。
ちなみに今日が高崎さんとは初対面だ。
いきなり訪ねてきた相手にお店を任せて弁当買いに行く。これだけで高崎さんがどんな人なのかわかってもらえると思う。
僕も以前お店やっていた頃、お客にお店を任せて足りない物を買いに行っていた。信用できないお客はそもそも自分のお店には来ないような気がしていたのだ。
カリンバありました
高崎さんが弁当買いに行っている間、お店にあったカリンバを触らせてもらった(勝手に)。
まったく初めて触るのだが、それでも親指で適当に弾くとポロンポロンと綺麗な音が鳴ってくれる。これは楽しい。丸っこい形にも気取ったところがなくていい。
店を見渡すと天井からぶらさがっている大きなひょうたんは、よく見ると底がメッシュになっている。
店内に広がるいい音のBGM、なんとこのひょうたんの底から流れているのだ。なんと、これスピーカーだ。
しばらくお店の中をうろうろしながらも、誰かお客が来たらどうしよう、とハラハラしていたのだが(もろに開店時間中なので)、しばらくして高崎さんが帰ってきてくれた。あ、弁当持ってる。
「いやあ、すみません」
こうやっていきなり相手を和ませるのも作戦なのだろうか。高崎さんは何事もなかったように話を始めてくれた。
聞くとこのお店で売られているカリンバはすべて高崎さんの手作りだという。実はこの道15年の職人なのだ。
カリンバとは
「カリンバのいいところは厳密にドレミを決めたりしなくても弾くことができるとこですかね」
高崎さんは言う。
「その日の天気とか気分によってこうやってピンの長さを変えて音を作ってあげるんですよ。ピアノみたいに決められた音を出すんじゃなくて、自分で音を作る感じですかね」
「それからカリンバは反響音が自分の方に向いているでしょう」
そういえばギターならばボディの穴がお客さんの方を向いているが、カリンバは弾き手に向いている。
「つまり自分に聴かせる楽器なんですよ。例えば散歩しながらでもいいからこうやって適当に弾いてみるでしょう、そうすると気持ちが落ち着いたり、逆にノッてきたりするんですよ、自分の」
実際に触ってみると高崎さんの言っていることがなんとなくわかる。
この楽器、最初に触った時も思ったのだが、まったく楽器経験がなくても弾くことができるのだ。だから楽しい。そもそも楽譜がないのもうれしい。
「でもこれが音楽なんだと思うんですよね。やっぱり音を楽しむのが音楽ですから。」
という高崎さんは本当にたのしそうにカリンバを弾いてくれた。
「あとね、例えばこういう箱にひっつけて弾くでしょう、そうするとまた音が変わるのも面白いところ」
おー、本当だ変った!これにはびっくりした。
ティッシュの箱にあてて演奏したカリンバは、さっきとはまったく違う、広くてクリアな音に変ったのだ。
ということはこれ、あてる物をなんでも楽器にしちゃうってことですよね。それは面白い。一つゆずってもらった。
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