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ひらめきの月曜日
 
ブッシュパイロットの仕留めたエゾシカの味

飛行機は道具である

自衛隊での戦闘機パイロットの話や、アラスカでのブッシュパイロットの話を聞いていてちょっと疑問に思ったことがあります。イメージとして超飛行機野郎な湯口さんは、アラスカ以外の他の空は飛びたくはないのでしょうか?


その空はどこまでも繋がっている。どこか違う空へは行かないのだろうか?(写真提供:湯口公)

馬場「アラスカ以外の空は飛ばないのですか?」
湯口「今はもっとアラスカを楽しみたいですね。アラスカの大地を楽しみたいから空を飛ぶ。飛ぶことが目的ではなく、飛んだ先で何かをしたい。飛行機は道具です。」
馬場「道具ですか?」
湯口「何処か他に行くならばその地にあった乗り物で行きます。登山や釣りなどに行くのならば、アラスカなら飛行機が最適。ハスキーは自分でこうしたいと持ったときに自由に出来るツールなのです。」

これは意外な答えでした。飛行機はあくまでも手段であって、目的ではないのです。


確かに道もないこんな場所へ行くには飛行機しかない。(写真提供:湯口公)


また、湯口さんはこうも言っていました。

湯口「一番は楽しむこと。記録とかには興味はありません。この景色の素晴らしさを伝えていきたい。」

楽しむこと。それが全ての原動力となっているようです。


今回連絡をくれた友人もアラスカの景色に魅せられた1人。最小限の補給で数週間も原野を歩いたり、シーカヤックで氷河を見に行くようなアウトドアの達人。彼女も楽しむことが原動力になっていると思う。

 

命との対峙

アラスカを中心に様々な活動をしている湯口さんですが、冬場は日本に戻り北海道でも活動しています。現在は師匠についてエゾシカ猟をしています。今回の会で食べたエゾシカは湯口さんが仕留めてきたもの。

 


鹿肉ロースト、グリル、レバー。鹿肉づくし。獣臭さは思ったほどなく、肉質はとても柔らかく、脂肪が少ない。


馬場「なぜエゾシカ猟を?」
湯口「アラスカ先住民の狩猟との深いかかわりを知りました。彼らは70%以上を土地の物を食べている。鮭や鹿など。」


鹿肉のテリーヌ。獣臭さは全く無く、旨味の強い肉といった感じ。

こちらはソーセージに加工したもの。サラミやジャーキーも予約販売していました。


湯口「冬山を登るなど厳しいアウトドアはやったが、何かが足りないと思った。動物を基準に山を歩くこと。命と対峙してそれを食す。自然を理解するためには狩猟は欠かせないものと思ったのです。」

今回食べた鹿肉は想像していたよりも遥かに臭みがない。きめ細かく、脂肪の少ない肉は野生を感じさせるも、とても柔らかく美味しい物でした。湯口さんの話を聞きながら食べると、これが命を頂くということかと少しだけ実感出来た気がする。

実に興味深い話が沢山聞けた夜でした

非常に旨い鹿肉でした。

著書「アラスカ極北飛行」。DVDもあります。写真が綺麗です。

好きなことをやって生きるとはこういうことか。

湯口さんは、今年の5、6、7月にまたアラスカの村々を飛ぶ予定だそうです。そんな湯口さんに今一番望むものは何か聞いてみました。すると「日本がもっと面白くなってほしい。日本に生きている人々が考えて楽しく生きて欲しい。」と言っていました。

閉塞感の漂う昨今。是非そうなって欲しいと願います。そして、湯口さんに一番大切なものは何かと聞くと。「気合、夢。心の内から起こる何か。」と言っていました。そして「どうしたらいいかわからないけど、軸とした何かをもった若者が増えてほしいです。まずは自分が楽しまないと影響は与えられないですね。」とも言っていました。

湯口さんのような人が増えれば、どのような方向かは分かりませんが、きっと世の中が大きく変わっていくのだろうなと思う今回のインタビューでした。あなたのような人がもっと増えればいいのに。

ハスキーと湯口さん(Photo by Jean Nakashima)

取材協力、写真提供

野営飛行舎
https://talkeetna.jp/


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