すべて手作りのエジソンの電球
ここで作られるエジソンの電球も京都の竹が使われている。社長自らがその竹を0.3ミリ程度に削っているそうだ。機械などは使わずすべて手作業。10本削るのに3時間程度かかり、深夜の誰にも邪魔されない時間帯に集中して削るのだとか。
浅田社長は78歳。お世辞にも若いとは言えない年齢でそのような細かな作業ができることはすごいとしか言いようがないが、この道50年以上の経験が物をいう作業なのだろう。一部が0.3ミリではなくフィラメントとなるすべてが均等に0.3ミリでないといけないのだ。すごい!
そうして削られた竹は先に書いた方法で炭化させフィラメントになる。一度にできるフィラメントの数は決まっていてそれより多くても少なくてうまく行かない。とてもデリケートで技術を必要とする作業だ。
そんな手間暇をかけられたエジソンの電球は2万円で売られている。それを安いと感じるか高いかと感じるかは人それぞれだとは思うが僕は欲しいと思う。博物館等の定番イベントである「エジソン展」などでは必ずこの電球が展示されているそうだ。昔を照らしていた明かりを現代でも見れることはとても考え深いものに思える。
ひと目で面白い電球
浅田電球製作所では、このほかにもいろいろな電球が作られている。それらはどこかユーモラスで遊び心があって面白い。エジソンの電球と違い一見して目を引く電球だ。
パチンコ屋のネオンはいろいろな文字になっていたりして面白いと思うのだけれど、フィラメントがハートという電球は初めて見た。それもそのはずでフィラメントをそういった形に加工するのはやっぱりとても技術がいるそうだ。また技術云々は抜きにして、ハートが光るというのは非常ロマンチックだと思う。ハートをチョイスした社長のセンスが好きだ。
そのほかにフィラメントが揺れる電球があった。磁石を利用して揺らめくようにしているそうだけれど、こちらもオリジナル商品でヒット商品になっているそうだ。事前にこの電球を作っていることは知っていたが、想像以上に揺れていて興奮してしまった。中二の夏みたいな大きな揺れだ。
社長は今後はフィラメントの部分をアルファベットにした電球を作りたいと言っていた。「二つ買えばイニシャルになるからね」と。「常に研究」と社長は言っていたがなんだかカッコいい。僕は生まれてこの方「研究」をしたことなんて無い。小学生の時の夏休みの自由研究すらまともにやらなかった。見習いたいと素直に思う。
電球の温かさ
手作りのため多少の個体差があるとのことで、買いに来たお客さんは実際に点灯させじっくりと選ぶそうだ。30分程どれを買うか悩むお客さんもいるとか。こういうところが一般に売られている電球との違いを感じる。
社長は電球にはLEDとは違う温かみがあると言う。僕もそう思う。高校時代に好きな女の子からもらう手編みのマフラーみたいなものだ。僕はもらったこと無いから今の例えが的確は分からないけれど、その温かみは僕の妄想では間違っていないはずだ。
浅田電球製作所 東京都品川区南品川6−6−4エジソンハウス1F Tel:03−3471−2257
知らなかった
今回取材でお話を聞いていたら昔の電気事情も教えていただけた。常識なのかもしれないが昔は大体の家が電気は一灯だけだったそうだ。しかも定額だったらしい。知らなかった。そして、電気が定額だったのか! と驚く反面、定額と聞くと携帯電話が浮かぶ僕は現代っ子だな〜と話を聞きながら思った。