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ひらめきの月曜日
 
東京が主産地の野菜・小松菜づくし


 

「東京」という地名を聞いて思い浮かぶイメージにはどんなものがあるだろうか。「都会」や「首都」という言葉を思いつく人は多いと思うが、「野菜の産地」というイメージはほぼないと言っていいだろう。そんな東京だが、実は東京が主産地となっている野菜がある。

答えは小松菜。農林水産省の統計によると、平成20年度の生産高は埼玉に続いて多いのが東京。数年前までは全国一の生産を誇っていたようだ。

そんな意外な一面をもつ小松菜。東京の中でも特に江戸川区は大産地であるとのこと。まずは小松菜の現状を探りに、江戸川区内を巡ってみよう。

小野法師丸



小松菜で押してくる街、江戸川区

さまざまな小松菜シーンを求めて巡る江戸川区。まずやってきたのは、小松菜と縁があるという香取神社。


しんとして厳かな雰囲気の香取神社
「産土神」は「うぶすながみ」と読みます

入口正面から「小松菜の産土神」という立て看板のあるこの神社。「うぶすながみ」という読み方は、実は家に帰ってきてから調べてわかったものだ。

意味としては「小松菜の生まれた土地を守護する神」というくらいになるだろうか。そう、ここ江戸川区は小松菜誕生の地であると言ってもよい逸話があるのだ。


キャラクター的な押しはなく、あくまで本気
産土神の立派な石碑も建つ

時は江戸時代。八代将軍吉宗が鷹狩りの際、食事をする場所としてこの神社を訪れたとのこと。

そのときの神主が餅のすまし汁に青菜を入れて出したところ、吉宗がその青菜をたいそう気に入り、小松川という地名から「小松菜」と命名したとの話が残っているのだ。


このカルピスはお供えものというわけではないと思う

以来、味もよく栄養も豊かな野菜として、東京、ひいても江戸川区の特産野菜として現在に歴史が続いているわけだ。実際、普通に区内をうろうろしているだけでも、小松菜はすぐ目に入ってくる。


住宅街の中で頻繁にビニールハウスを見かける
中では小松菜がすくすくと

こちらのハウスは収穫後のようで、右に見えるのは…
はじかれた小松菜の山

東京、しかも区部であるのに、特に探すまでもなくビニールハウスが多々ある住宅街。夏は露地栽培だが、秋から冬はこのようにハウス栽培をするようだ。ハウス脇に商品とならなかった小松菜が積まれているのは産地ならではの光景。

さすが産地。そして産地ゆえに、区内ではいろんなものが小松菜化されて提供されているのだ。まず訪れたのは、小松菜をちょっと変わった料理として提供するレストラン。


住宅街にある品のよいお店
確かに「小松菜カレー」の文字が

細かくなった小松菜がブレンド
意外な具の正体は

インド風のカレーを出すというこの「ヴィオレッタ」というお店。メニューから「江戸川産小松菜カレー」を注文。

インド料理店に行くとほうれん草のカレーはメニューに大抵あるので、その小松菜版と考えればよいだろうか。しかし、やってきたのは、黄色ベースに細かい緑が見えるカレー。ペーストを使って全体的に緑がかっているインド風ほうれん草カレーとはまた別のものだ。

食べてみよう。…インド風を名乗るだけあってスパイシー。ただ、小松菜の味はこれといって感じられない。もともと小松菜は風味の強い野菜ではないから無理もないだろう。

しかし、カレーをご飯と一緒に噛んで食べると小松菜の存在感がよくわかる。細かくなっているにも関わらず、シャキシャキと葉に当たる感覚が面白い。はじめチーズかと思った具の正体は厚揚げ。全体的にインドの味なのに和風が漂うのが楽しいカレーだった。


酒屋さんでは小松菜焼酎
冷凍ケースにはアイスもあった

パン屋さんにあったのは…
小松菜バターロール

他にも区内では小松菜をぐいぐい押してくる店が点在。酒屋さんでは小松菜を一瓶あたり二把ほど使ったという焼酎が。特産品アレンジ食品の定番となったアイスも品揃えにある。

「ぶれーめん」というパン屋さんでは、生地に小松菜を練り込んだパンを発見。食べてみたところ、目をつぶって神経を集中させると小松菜の断片が感じられるかな、という味わい。

そもそもベースの生地がおいしいし、目を開けたときに見える緑もきれい。小松菜の栄養も当然反映されるのだろう。


「おいしい」とかではなく「エライ」
わかりやすく自慢

区内の篠崎駅そばにある「しのざき文化プラザ」で行われていたのは小松菜のイベント展示。イベント名が「江戸川の小松菜はエライ!」というところからも、小松菜テンションの高さが感じられる。

右の写真は都内市区町村別の小松菜生産高を模式的に表したもの。小松菜が大きければ大きいほど生産高が多いわけだが、右端の江戸川区が突出しているのがよくわかる。


小松菜レシピ募集コーナー
おでこに乗ってるのが小松菜

それぞれの家庭で作っている小松菜料理の紹介コーナーもあった。グラタンやお好み焼といったちょっと意外なメニューもある中、異彩を放っていたのは「おでこに乗せる」というアイデア。

なんでも、熱を出した子供が冷しタオルをおでこに乗せるのは嫌がるのだが、小松菜だと嫌がらないとのこと。これは便利!という解釈でいいのだろうか。というかこれはレシピじゃない。


容赦ない緑の小松菜ジュースで緊張感を伴う水分補給
生食できるタイプの小松菜を使ったサラダも食べた

併設のカフェでは小松菜ジュースを飲んでみた。しっかりと濃い緑にやや構えて飲んだが、リンゴジュースと混ざっているということでほどよく青くさくも飲みやすい。

ともあれ、江戸川区における小松菜熱の高さはよくわかった。続いては家でも小松菜料理をいろいろ試してみよう。


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