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ひらめきの月曜日
 
30年物のサンマ寿司はほぼ液体

お待たせしました30年物、本なれ寿司です

あのなれ寿司を更に発酵、熟成させたらどうなるのか、引っ張ってるけど何か凄いよ。


地味な写真を大きく載せる。


トンとテーブルに置かれたのを見て、え?こんなの頼んでないよ。 と思った。何が出てきたのかよく分からない。でもこれが30年 漬け込んだ本なれ寿司だそう。いやいやいやいや、これ、酢味噌でしょ。


醤油かけてあるから混ぜて食べてね。って言われたので混ぜてる図。これ、寿司な。

どんな風かと思ったら、なんと液体になっていた。その発想は無かったわ。飛躍しすぎの本なれ寿司。いまいち納得出来んがまずはどうあれ食べてみる。

酸っぱい。けれど酢の様な尖がった感じは無く、凄くまろやかでコクがある。もちろん匂いは凄く強烈。サンマの身やご飯粒はチョコチョコあるが、ほぼ液体。濃いー、濃いーチーズみたい。

 

米だけで世界はバラ色だ


日本酒だわこりゃ。

ここでビールから日本酒に切り替える。本当に濃厚なので箸の先で すくってチビチビと嘗めるようにして食べる。ちょっとだけでグオーっと 旨みが広がる。そこに日本酒をキュッとやるのだ。おー、美味い。


なんとこんな食べ方も。

「なれ寿司につけて食べても美味しいよ」

店長がそう教えてくれた。なんじゃそりゃ。寿司に寿司をつけて食べる。文字にすると意味の分からなさが凄い。が、やってみたら美味い。それぞれ味の方向性が違うため、旨みに幅が出る感じ。

それにまた日本酒が合う。でもよく考えたらコレ全部米だ。米に米つけて米飲んだら美味い。一旦別れてまた合わさったら更に美味い。乳製品で言えば牛乳カルピス、ドラゴンボールで言えば神コロ様か(分からなくていいです)。

 

普通のなれ鮨と本なれ鮨は別物


記事にも書いたお祭り、お燈祭りのことなんかも教えてくれました。


よく分からなくて疑問がいっぱい沸いてくる本なれ鮨。ちょっと話を聞きましたよ。

僕「液体になってるって凄いですね、ビックリしました。どのくらいから液状になり始めるんですか?」

店長「頭とかは刻んで入れるから、そらもう2,3年で大体形は無くなってくよ」

僕「意外と早い!でも頭刻んでたら普通のなれ寿司としては出せないんじゃないですか?」

店長「そうやね、長い時間漬け込むのは普通に出すのとはまた別に仕込みやるよ。手順もちょっと違って除菌とかちょこちょこ手間かかるしね。ほっとくだけじゃ出来んのやで」

僕「それなのに何で30年も漬けるんですか?」

店長「30年物を製品化したっていうだけで50年物も60年物もあるよ。でもそれらは酢と他の物の層になっとるし10年物やと酸っぱいだけで美味しくない。30年位したらマイルドになってくるからね」 

ちょっと気が長すぎてクラクラする。初めて長期間つけたとき、10年漬けて酸っぱいから後20年漬けようってスケールがおかしい。寿命が8000年合ったとしても長いと思う。

結果美味しくなったから良いものの、30年経っても美味しくなかったらどうしたんだろう。その落胆は想像も出来ない。


お土産に本なれ鮨を買って帰った。珍味ライターのあの人へ。 どのくらい持つんですか?と聞いたら「いつまででも保つよ」とのこと。

親子の絆が本なれ鮨を作る

僕「60年って凄いですね。失礼ですが、ご主人の年齢よりも上では」

店長「そう、それは親父が漬けたなれ寿司やから。それは商品として出してないから若いなれ寿司にちょっとづつ混ぜて使いやるよ」 

60年前の親が仕込んだ料理が今も活かされている。タレを継ぎ足し使うというのは聞いたことがあるが寿司そのものが残っているんだから凄い。

 

賞味期限、無し。原材料もシンプル過ぎる。

僕「今漬けているお寿司も使えるのは30年後ですよね、ご主人頑張らないと!」

店長「いやー、30年も無理やよ。息子が料理の修行に出とるから帰ってきてくれたらエエんやけどね。都会出たら色々したなるから帰ってこんかもね」 

そう言いながらも自分が使うことの無い料理を30年後の息子の事を思って仕込む。時間だけじゃなく、思いも積み重なったが故のこの味、深みなんだと思うとことさら貴重なものに思える。

 

30年も経ってる食べ物って、ゲテモノのように思えたが味わって話を聞いたらエエもんやなぁと感心させられた。今漬けているなれ寿司が30年後に食べられるように息子さん、帰ってきて欲しいなぁ。


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