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フェティッシュの火曜日
 
タチウオで真珠を作りたい

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タチウオで作る真珠の作り方だが、取り出したグアニンを乾燥させ、溶かしたセルロイドと混ぜて、ガラス玉に塗ればいいらしい。

ここで困ったのがセルロイドの入手である。よくきく言葉なので東急ハンズにでもいけばセルロイドを使った何かが売っているかと思ったら、セルロイドは発火しやすいために、現在はほとんど流通していないそうだ。ミセスロイド(防虫剤)なら薬局にあった。

ネットで買おうと検索しても、古い人形などのコレクターズアイテム的なものしか見当たらず、そういうものは高いし、溶かして真珠にしたら呪われそうで怖い。

東急ハンズの店員さんから、「樹脂ならなんでも溶けますよ」とガチャガチャのカプセルを薦められたが、それは買わなくても手に入るので、お礼をいってタチウオ真珠とは関係のないバネ計りを買って帰った。


ガチャガチャのカプセルの透明な方をもらって帰る。ガチャガチャっていう言い方、通じますか?
ベースとなるガラス玉は、ビー玉を使用。かなり大粒の真珠になりそうだ。

タチウオで真珠だけ作っても使い道がないので、それを指輪にするための小物も購入した。ホワイトデーのお返しはこれで決まりだ。

また参考までに本物の模造真珠も、安かったから買ってみた。本物の模造ってなんだ。


タチウオ真珠で指輪を作るためにあるようなものが売っていてうれしい。
もし失敗したら、これを完成品とすり替えようかな。

夏にタチウオから取り出したグアニンは、冷蔵庫でカラッカラに乾いて、プラモデルを上手に作るためのなにかみたいになっていた。


最後のタチウオ真珠職人であるTさんは、「これ、昔は海の漆と呼ばれていたんだよ」と、懐かしそうにつぶやいた。みたいな。

 

樹脂を溶かしてグアニンと混ぜる

樹脂を熱して溶かすための鍋は、ほかの用途で二度と使えなくなる気がしたので、100円ショップで小さなフライパンを買ってきた。

熱したフライパンにのせたガチャガチャのカプセルは、ツーンとくる有害っぽい匂いを出しながら、ゆっくりと飴細工のように溶けていった。

ビー玉に薄く塗るためには、サラサラした液体状になってほしいのだが、がんばっても水飴くらいまでにしかならないので、この時点でグアニンを入れて、熱しながらよく練る。


今思えば、細かく砕いてから溶かせばよかったかな。
溶けたというか、フライパンにこびりついた。

するとすぐに焼き魚のような香ばしいいい香りが立ち込めてきて、カプセルの揮発した嫌な匂いとせめぎ合う。さすがタチウオだ。

混ぜていくうちに、タチウオのグアニン以外の部分が焦げたのか、なんだか取り返しのつかない色になってきた。あわててビー玉を入れたのだが、もはや「表面に塗る」ということができる状態ではなかった。


「こんなはずじゃない」っていう言葉は、こういう時に使うべきだなと、パニックした自分を見ているもう一人の冷静な自分がつぶやく。
ビー玉を入れて、どうにか薄く塗ろうとした結果がこれだ。火を止めると樹脂が糸状に固まった。

こうしてできあがったタチウオ真珠は、エイリアンの卵みたいなおぞましいものだった。ある意味、歯の鋭いタチウオっぽくはある。


悪魔の目玉とか、モスラの繭とか、ミイラの脳みそとか、悪い表現しか思いつかない造形。ヌラヌラしていて怖い。

中学生が修学旅行先のお土産屋でうっかり買いそうな、なにか。

一応指輪にしてみた。


すぐにでも寄生されそう。

ライブにしていった。


イエーイ!

特撮映画をとりたい若者には、ぜひ参考にしていただければと思う。

ごめんなさい

いやあ、ここまで失敗するとは思わなかった。セルロイドを使わなかったのが悪いのか、タチウオのグアニンに不純物が多すぎたのか、そもそも個人レベルで可能な話ではなかったのか。

作業工程は料理っぽくて楽しかったのだが、二度目の実験のやる気を起こさせない、見事な惨敗だった。ここまで失敗すると、もう逆に気持ちがいい。

撮影で使用したタチウオは、すべておいしくいただきました。夏のタチウオは天麩羅が最高。

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