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はっけんの水曜日
 
親子で作った洞窟と地獄〜ハニベ巌窟院

親子二代で作り上げたカオスっぷり


かなりショッキングかつ珍奇感満点だった地獄巡りを抜けると、またもや雰囲気が一転してお釈迦様と十人の弟子たちの像が。

ガッチャガチャでグッチャグチャだった地獄巡りに比べてこの厳粛な様子ときたら! それにしても、どうしてここまで作風がコロコロ変わってるんでしょうか?

作者の話を聞くことは出来なかったんですが、受付にいたおばちゃんから聞き出したところ、そこには意外な理由があったのです。


初代院主・都賀田勇馬

ここ「ハニベ巌窟院」は、地元出身の彫塑家として活躍していた都賀田勇馬さんが第二次世界大戦後の1951年に、戦禍の犠牲者の霊を慰め世界平和を願うため、自作の仏像をまつる場所として作ったものなんだそうです。

おそらくこういった真面目な感じの像は初代の作ったものなんでしょう。

しかしその後、父親である勇馬さんの跡を継いだ二代目院主・都賀田伯馬さんが相当アバンギャルドな人だったようで……。

若い頃はお寺の放蕩息子といった感じで、お金を持ち出しては車、夜遊び、ゴルフ……などにつぎ込みまくり、1981年に亡くなった父からハニベ巌窟院を受け継ぐと。

……という、とんでもないビッグ・プロジェクトをスタート。

30メートル超という、当時では日本最大の大仏を作ろうとしていたらしいのですが、頭部が完成したところで資金がすっかり底をついてしまい、億単位という莫大な借金だけを残して製作はストップしてしまったそうな。

今では全高120メートルの牛久大仏があるので、これから製作を再開させたところで日本一の大仏にはなれません。……ということで、おそらく永遠に完成することはないのでしょう。


この状態でもインパクトは十分なんで、このままでいいんですけどね

その後、色々と大変な目にも遭い、反省して心を入れ替えた二代目は

「本当の地獄を見た者にしか作れない像を残そう」

ということで、洞窟内の「地獄」の製作をはじめたんだとか。

……なるほど、色々と分かってきました。



このような、仏教をモチーフとした比較的普通な像は初代の勇馬さん作。



こっちの、ちょっと珍妙な感じのする像は二代目・伯馬さんの作、ということなんでしょう。

こう考えると作風がブレブレなのも納得できます。

さらに、二代目には東京芸大を卒業した息子さんがいるそうで、彼がいずれは三代目となる予定なんだとか。そうなれば三代にわたる壮大な洞窟となるわけですね……今から楽しみです。

ちなみにコレは未確認なんですが、洞窟の中に↓

こんな、初代とも二代目とも違った作風の像が展示されていました。コレが三代目の作品なんじゃ……とボクは踏んでいるんですけど、どうなんでしょうね。。

いやあしかし、親子じいちゃんで同じ芸術の道を歩んでいながらも作風が全然違うっていうのは面白いもんです。長嶋茂雄と一茂の関係みたいな……ちょっと違うか。

それにしても、二代目のおっちゃんはホントに面白そうな人です。会ってみたいなー……と思い。

と訊いてみたところ、ちょっときまり悪そうにこんな返事が……。

「二代目は……ちょっと事件を起こしてしまいまして……」

調べたところ、2004年に事件を起こして逮捕されてたようです。すでに戻ってきてはいるものの、それ以降あまり表舞台には出ていないんだとか。

それでもボクは断固リスペクトします!

こういったヘンテコなスポットを作ってしまう人には変わった人が多い(ほとんど!?)もんですが、まさか逮捕されちゃうほど突き抜けてるとは……。

まあ、事件を起こしちゃうのはどうかと思いますが、そこまで突き抜けた人だからこそ、こんなにインパクトの強いスポットを作れたというのも事実でしょう。

だって初代が作った普通の仏像しかなかったら、ボクはわざわざ行ってみようとは思わなかったでしょうからね。……二代目がもうちょっとだけ真面目になって、創作活動を再開されることを願っています。

お土産屋さんではこんなTシャツも売られていました。……外に着ていくのには少々勇気がいりそうです

●ハニベ巌窟院
石川県小松市立明寺町イ1番地
【電話】0761-47-3188
【営業時間】4月〜9月 9:00〜17:00 / 10月〜3月 9:00〜16:00
【拝観料】大人800円、子人500円

https://www.hanibe.com/


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