ハミガキの材料を知った
先ほどからこの原稿は「ハミガキ粉」と言ったり「ハミガキ」と言ったりしているが、ライオンの方の話によると「昔は粉だったけれど、今は違うでしょ、だからハミガキ」だそうだ。一般的にはハミガキ粉と言う気がするが最近のものはどれもペースト状で全然粉ではない。確かにハミガキの方が正しい気がする。
僕の一番のなぞだった「ハミガキは何で出来ているのか?」もここに来て解決した。僕の人生では聞いたことも見たこともない粉が混ぜ合わされて作られていた。だから、「あ〜なるほどこれか!」という感動はなかったけれど、生まれてすぐに生き別れになった兄弟に20年ぶりに再会したかのような納得はあった。
工場を見学
小田原工場では一日に約50万本のハミガキが作られている。工場はほとんどすべてが機械化されていて未来世紀に来ている感覚になる。ライオンの方の話では、一般的に2カ月に1本のペースで僕らはハミガキを使っているそうだから、一日で作られる50万本という量は僕の人生では到底使いこなせない量となるわけだ。
工場にはいくつも釜があってそこでハミガキが作られている。その釜では一回に6トン約4万6千本のハミガキを作ることができるそうだ。ハミガキ6トンとはなんともすごい数字のように思える。一回で作られるハミガキの量もやっぱり僕の人生で使うハミガキよりも多いわけだ。なんだか考え深いものを感じる。
工場内はハミガキのあの爽快感のある匂いが漂っていた。僕の好きな匂いだ。こういう芳香剤を作ってみたらいいのではないかと思いながら工場を見ていた。
あの線がある理由
釜で作られたハミガキはその後チューブに詰められる。そして、チューブに入れられたハミガキはすべて同じ方向を向いて出てくる。これは別に奇跡的なことではないし、別室で誰かが「同じ方向になれ〜」と祈祷をしているわけでもない。もちろん人間が一つひとつ向きを揃えているわけでもない。
チューブは別の会社が作っていてライオンに納品しているわけだけれどその時点では同じ方向を向いていない。機械がそろえるのだ。ウイーンガシャ! という音も出ないくらいにすごい速さで。
どうやって揃えているかと言うとハミガキの裏側を見ると線があると思う(上の画像参照)。これを頼りに機械は向きを認識し揃えているのだ。今まであの線には何の意味があるのだろう、と思っていたがこのためだったのか、と食後の歯磨きに似たすっきりとした気持ちになった。