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ちしきの金曜日
 
うどんとそばが一つになった「そどん」を出す店

うどん豆腐

続いて、「まだ試作品だけれど食べてみてよ」と言ってご主人が出してくれたのが、うどん豆腐。うどんの中に豆腐が練り込んであるという。


今度は、ちょっとオシャレな感じの物が出てきた

ちょっと黄味がかかっている麺

この「うどん豆腐」を食べてみる。最初は、うどんの滑らかさと口当たりを感じる。そして豆の香りがした後に、最後に豆腐のざらつきが舌に残る。うまい。

うまいんだけれども、「うどん」と「豆腐」という、いつも慣れ親しんでいる味が、こんな風に一緒になっているのが妙におかしい。うまい以前に、またつい笑ってしまう。

そして、「うどん」と「豆腐」の味をまとめるのは、ちょっとだけ酸味の入ったツユ。どっちの味にも良く合う。本当によくできた食べ物だ。

ご主人の「面白いやろー」顔

「豆腐が練り込んである、っていうとヘルシーなイメージがあるでしょう。だから女性にウケるかと思ってね。全体をサラダ風にしてみた」
「豆腐を練り込んであっても実際には、ほとんど小麦粉で炭水化物だけれどね。人間、イメージがあるから」

なんでしょう。うどん職人というよりは、まるで芸術家のようなトリッキーな発言が続く。この人は、人間の決まりきった感覚や思考パターンに対して、うどんで挑戦しているのだ!でも、出てくる料理の一つ一つが本当においしくて、決して独りよがりではない。そこがすごい、と思う。

そんな風に感動していると、
「あ、いかん。最後に重要な具をいれるの忘れていた!」
ご主人が厨房に走って行った。


「最後の重要な具」とは、豆腐のことでした

あー、「うどん豆腐」の具に豆腐を入れるのが重要か。いちいち「やられた!」と思わされるのが悔しい。ちなみに次なる課題はこれを温めて「湯豆腐うどん」を作ることだそうだ。

 

うどん豆腐の由来

さて、この「うどん豆腐」だが、当初のアイディアはご主人のものではなかったそうだ。江戸時代から伝わっている「東海道五十三次」の宿場ごとの名物表、そこの戸塚の欄に「うどん豆腐」が載っている。


これは現代の人がまとめて印刷したものですが
「品川の焼海苔」なんてメジャーなものの隣に「うどん豆腐」が

ところが、この「うどん豆腐」が具体的にどういう物であったかは、現在には何も伝わっていない。
「おいしかったら今でも残っているはずだから、まずかったんだと思う」
「多分、固い木綿の豆腐を細く切ってうどんみたいに見立てたんじゃないかな。江戸時代は豆腐も高級品だったから、それでもウケたのかもしれないけれど。今、それだけやってもダメでしょう」

なんだかんだいって、結局はご主人のオリジナルだ。歴史に着眼しながらもそれにとらわれない。とにかく自由だ。かっこいいぞ。うどん2杯でかっこよく思わせる人なんて、そうそういないんじゃないか。

 

そしておもしろいうどんが

この後もさらにうまいうどんが出てくる出てくる。すっかり翻弄されてしまった。
みなさんも、ぱーっと見て下さい。どれもうまいよ


チーズきつねうどん。揚げの中にチーズが入っていて、食べ進めるごとに全体の味が変わる
冷やしかけうどん。なんの変哲もないけれど、そもそもこれが、かなりうまい

サンラータンうどん。これは暑い日にさっぱりと食べたい

一見ふつうのお店に見せかけて、中ではこんな変わりうどんの楽園みたいなことになっている。僕はすっかり、きぶねのファンになった。

それにしても、自由な発想と、それを裏付ける高い技術にはまったく恐れ入る。この人、3年後くらいには、うどんで空ぐらい飛んでいるんじゃないか。

やりかねない感じ

取材協力

京うどん きぶね
神奈川県横浜市戸塚区平戸2−31−3

※うどん豆腐、 サンラータンうどんはまだメニューにありません(2010年4月現在)


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