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はっけんの水曜日
 
水中ロボコンが地味だけど熱かった


「ロボコン」という名前から想像するものと、少し違う内容だと思います。

「ロボコン」というイベントがあるのは昔からなんとなく知っていたが、「水中ロボコン」というのもあるらしい。ロボコンをバスケとすると、水中ロボコンは水球のようなものだろうか。

三回目となる「'10水中ロボットコンベンション in JAMSTEC」は一般公開されないイベントなのだが、水中で動くロボットというのがどういうものなのか見てみたかったので、取材をさせていただくことにした。

玉置 豊



水中ロボコンは、コンテストではなくてコンベンション

ロボコンはロボットコンテストの略だが、水中ロボコンは、水中ロボットコンベンションの略。厳格なルールに乗っ取った競技会ではなく、競技もするし順位もつけるが、あくまで目的は参加者達の技術交流や課題に挑む機会を与えること。

そのため、ロボコンの大会や以前取材したロボフトみたいな派手なものを想像して見に行くと、だいぶ違う世界が繰り広げられていて戸惑うことになる。そう、戸惑ったのは私です。


私がイメージしていた水中ロボット。色は赤の方で。

ここでいう水中ロボは、ロボットといっても手や足がある人型ではなく、潜水艦や深海探査機をイメージさせるタイプのものがほとんどだった。


素人目には、なにをするためのものかすらわからない外観。
なにかの部品っぽいが、こういうロボット。

このコンベンションに参加しているのは12チームで、東京大学や東京海洋大学などの日本国内の大学が中心だが、台湾や韓国からもエントリーがある国際的な大会だ。

個人的には信州大学(長野)や日本工業大学(埼玉)などの海のない県からも参加があるのがうれしい(自分が海好きなのに埼玉に住んでいるから)。

会場はあの有名な「しんかい6500」などを作った海洋研究開発機構(JAMSTEC)の横須賀本部にある訓練用プールで、このコンベンションから生まれた「なにか」が、何年か後に何らかの形で、さらなる技術の進歩に生かされることになる。たぶん。いや、きっと。

 

競技のルール

水中ロボコンは土日の二日間、一泊二日でおこなわれ、一日目は公式練習と技術のプレゼンテーション、取材にきた二日目が水中デモ。

競技の採点は、ロボットの重量(軽い方が高得点)、技術プレゼン、水中デモの三項目。単純に水中で競技をして勝ち負けを決めるものではないため、開発途中で水中デモまで至らなかった高校生チームなども参加している。

水中デモでは10分の持ち時間を利用して、プール内に用意された数種類の課題に挑むのだが、課題を無視して自由に演技をおこなってもいい。採点方法は、課題クリア点、フリー演技評価点、技術評価点、説明評価点となっていて、各チームのやろうとすることがバラバラなので、フィギアスケート以上に採点が難しそうだ。


課題はゲートくぐり、ブイ(風船みたいな黄色い丸)へのタッチ、台へのランディング、水中に描かれたライン上を走るトラッキング。
ロボットは線がつながっているけれど、目標物を自ら探して自動で行動をするものがほとんど。鵜飼いっぽいなと思った。

ラインをカメラで確認して自動操縦するライントラッキング。水中で水深を調整しつつなにかをさせるのはとても難しいらしい。私も泳げるようになったのは最近だ。
用意された課題ではなく、蛇の動きを模して水面を自在に泳ぐロボットを披露した信州大学チーム。よくわからないけど、さすが長野だなと思った。

水中デモでは、参加チームがこれからなにをするのか、今どういう状態なのかを、マイクで説明しながらチャレンジしていく。

なにも説明を聞かずにただ見ていると、とても地味な演技なのだが、採点のポイントでもある説明を聞くことで、どういう技術を使っているのか、それがどれほどの難易度なのかがわかるのだ。わかる人には。

 

水中ロボットは難易度が高いらしい

正直、私の頭では技術的なことがまったくわからないのだが、偏差値の高い大学のチームでも結構な確率でミッションに失敗していく様子を見て、水中ロボットの難易度の高さはよくわかった。


ズボボボと沈んでいく様子がかっこよかった赤いロボット。
しかし、コントロール不能になってダイバーに救助される。

たぶん簡単な技術、確実なシステムでやればできるミッションに対して、「できるかできないかわからないところでのチャレンジ」に挑むチームが多いため、昨日の公式練習ではできたけれど、本番で失敗したというパターンも多かったようだ。


ライントラッキング。ロボットが自動で一定の水深をキープしながら線に沿って進む。

ランディング…の失敗。ロボットがカメラの映像から着地ポイントを検出して、自動で着陸しようとしている。惜しい!

日本が誇る「かいこう7000II」のような世界トップクラスの海底探査機も、こういったチャレンジの積み重ねで少しずつ技術と潜航の深度を進めてきたのだろうか。

そう考えると、なんとなくこの大会にでているロボット達のもどかしさが、「はじめてのおつかい」というテレビ番組や、もうすぐ一歳になる我が子が一生懸命に歩いたり手で食べたりする様子と重なってきた。あ、これはただの親バカですね。


昼休みの見学会で、水中ロボットの親分である本物の「かいこう7000II」にご対面。整備中の「しんかい6500」もあったよ。

 

異色の水中ロボット発見

小型が良しとされるこの水中ロボコンなので、大きさはスキューバーダイビングの人が背負うボンベくらいのロボが多いのだが、一台だけ明らかにビグザムとかアンドレ、アケボノみたいなサイズ違いのロボットがあった。


日本工業大学チームの「潜水管 Mark2」。潜水艦ではなくて、潜水管。確かに管だ。ボディは下水パイプで推進力は排水用ポンプ。ロボットなのかこれは。
彼らの出番は最後の方だったのだが、ぎりぎりまで組み立てをしていた。材料にベニヤ板とかガムテープがふんだんに使われているのは、たぶんこのチームだけだろう。

圧倒的なボリュームと親近感を覚えるディテールを持ち合わせたこのロボット(?)は、日本工業大学の増田殊大さん(左上の写真一番左)が中心となって作り上げた「潜水管 Mark2」。水中ロボコンというよりは、どちらかというと鳥人間コンテストっぽいビジュアルである。

他のチームが大学の研究所や研究室で専門に勉強した上での参加なのに対し、こちらは有志の集まりによる完全プライベートチーム。製作費用もすべてカンパ。作った理由は夢とロマン。

そのため浮力の計算や防水処理など、ソフトからハードまでぶっつけ本番。完成してから水に浮かべたのは昨日の公式練習がはじめてで、「目標は無事にプールから戻ってくること!」だったが、彼らは見事その目標を達成した。


プールへ浮かべるのも一苦労の巨体。アメリカだとなんでも力技で手作りする人がいるけれど、日本の学生にもいるんだね。
これは自動制御ではなく、コントローラーで無線制御するタイプのロボット。ロボコンというより、ものすごい大きなラジコンか。

墜落した小型飛行機ではない。技術的には弱いかもしれないけれど、インパクトだけなら間違いなく一等賞だ。
管の中に市販のビデオカメラがそのまま収まっているので、映像がパソコンで見られて楽しい。

豪快な演技。たとえ競技で負けても勝負には勝った気がする。

この潜水管を設計した増田さんは、将来ハードもソフトもやれる、モノを作れる研究者になりたいそうだ。きっと現場に強いタイプの研究者になるだろう。

知識だけでモノはつくれない。この水中ロボコンに出場している人達は、作りたいものを形にするために必要な行動力とか応用力とかを、高いレベルであわせ持っているのだと思う。

自分ももっといろいろやろう

こういう学生が主役のイベントをみるたびに、学生時代にもっといろいろやっておけばよかったなと思うけれど、だいぶ薹がたった今になって、このサイトなどで好きなことを結構やれている自分は幸せだなとちょっと思った。

日本工業大学チームはベスト・エフォート賞を受賞。彼らの情熱がちゃんと評価されていて、他人事だけどうれしい。

取材協力:水中ロボコン推進会議

 
 

 

 
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