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ロマンの木曜日
 
アメリカでアニソンイベントを開催した男

日米変わらぬ"fanboy"の心意気

キムラさんから聞く、歌ったり踊ったりのアッパーな反応にアメリカらしさを感じるアニソンイベント。では逆に、彼らから見た日本人観というのはどんなもんなのだろう。アニメの国から来た男たちに対して彼ら彼女たちはどんな反応を?

「自分らのイベントとか終わってからも、他の部屋とか行ってみると日本人ってだけでいろいろ質問されるんですよ。『今度のトライガンの劇場が楽しみだ!』『宮崎アニメはいつからダメになったんだ!』『ジェームスキャメロンはオタクの魂を無くした!』とか」

−−日本人と変わらないんですね(笑)。

「変わらないですねえ。ただ、情報に餓えてる感じはしますよね。僕らのイベントでは『アニソンビンゴ』っていう曲によって穴を開けれて、揃ったらプレゼントって企画をやってまして」

−−飽きさせない仕掛けしてますねえ(笑)。

「それでギリシャ人の18歳くらいの若い子がいたんですけど、彼が平成以降の仮面ライダーが大好きで。ビンゴのプレゼント品の中にまだ海外では放映してない『仮面ライダーW』のを見つけて、当てた時は嬉しがってましたねえ。あんまり喜んでたから私物のメモリーカードもあげたらすっごい喜んでくれて」

−−あっちからすればレア物だ。

「その彼、『さあ、お前の罪を数えろ!』*とか日本語で勉強してるんだよね。あと『通りすがりのギリシャ人だ!』*とか」

−−覚えて誰に自慢してるんだろう(笑)。

*それぞれ『仮面ライダーW』『仮面ライダーディケイド』の決めゼリフ&そのもじり。


アニメ系のコスプレイヤーも当然ウロウロ。しかも10代多数。

キムラさんはサムライに。模造刀が持ち込むのに苦労したとか。

先に書いたとおり日本のアニメに関心あるのは若い世代。そりゃ情報とか欲しがるし、語りたいだろうなあ。まるで幕末、異国の話を聞きたがる開国の志士たちのように…というのは言い過ぎか。でも「新しい何か」に興奮してるのは変わらない。

さらにアニソンイベントは歌だけではない。24時間の疲れを取るためにこんな事も。

「歌だけじゃ飽きちゃうんで合間に企画を考えていくんですけど、日本でもやってるのに『体操コーナー』っていうのがあるんです」

−−ラジオ体操的な?

「アニメや特撮でも体操の曲とかあるじゃないですか?『セイザーX体操』とか『ウルトラマンA体操』とかを連続でかけるんです。これがアメリカでもウケたんですよ。歌だと日本語知らないと歌えないけど、体操はマネするだけで出来ますから」

−−見るだけでなく身体で反応したいんだなあ、アメリカ人は(笑)。

「あとイベント始まって時間も大分経ったころにあっちがサプライズを仕掛けてくれて。ALL−CON主催のトッドは向こうのスターウォーズ関係のコレクターで世界的に有名な人で、研究本も何冊か出してるような人なんですよ」

−−トップはSWオタクだと。

「その人がイベント中にこっちも大分疲れてきたな〜ってタイミングで、ラジカセで『帝国のテーマ』を鳴らしながらストームトルーパーのコスプレ集団を率いて50人くらいで入ってきたんです。それで『この会場は我々帝国軍が占領した、主催者は誰だ?』って言って俺が連れて行かれたんです(笑)。僕がスターウォーズ好きなのを知ってやってくれたんですよ。嬉しかったですねえ」


乱入してきたトルーパー!

朝のアニソン体操!

うおー、なんかアメリカっぽいサプライズ!よく考えてみるとアメリカでも普通やらないと思うけど!キムラさんによると「テキサス人はおもてなし好き」なのだとか。それにしてもここまでしてもらえると泣ける!趣味が分かってるオタクならではのツボをついたサプライズですなあ。

「『OTAKU』って向こうでも通じるってよくいいますけど、正確にはカルチャーそのものを指す言葉なので『I'm OTAKU.』だと変なんですよ」

−−「music」とか「sport」みたいな感じなんですね。

「人を指す場合だとnerdとかgeekとかもあるけど、一番最上級は『fanboy』なんだって。作品を愛してる人たちのことを指して言うそうで」

−−作品を愛する、てのがいいですね。

「それで今回自分が『おたく酒』ってユニットで行ったんですけど、そしたらトッドがアメリカの名前を命名してくれて、それが『ファンボーイ・ブーズ・ブラザーズ(Fanboy booze brothers)』。日本語だと『オタクで飲みまくりな兄弟』って意味で、ブルースブラザーズにもかけてるんですよね」


ファンボーイ、っていい響きだなあ。先日公開されたスターウォーズファンの映画も『ファンボーイズ』というタイトルですが、そんな意味があるとは。日本での「オタク」はもはや広義過ぎる気がするけども、胸を張って言える人はfanboyと言うがいい!

ちなみに今年のイベントが好評だったおかげで、来年のALL−CONでもキムラさんらの出演が再び決定!「今度はもっとローマ字の歌詞をあててみんなで歌えるようにしたい」という。交通費も自腹だし、決して儲かるわけでもない。しかしあえて海を越えるこの心意気!まるで布教のために危険も顧みず日本に向かったザビエルのよう。


最終的に24時間で歌った曲数は694曲!そして散乱するビール缶…。

「歌は国境を越える」なんて言うけども、アニソンもまた国境を越える。そして海外の若いオタク&fanboyたちも歌ったり踊ったりしながら、そこに日本の文化や歴史を見ているのだろう。光栄だなあ。若干間違ってるかもしれないが、それもまたオトナになって気づかされる楽しみがあるというもの…だと思う。

「作品が好き」という愛情、それに加えてさらに歌と踊りという行動で互いに繋がれるアニソン。その歌を合唱するだけで一体になれる感じはホントに素敵だなあ!

山本正之さんや串田アキラさんインタビューも収録!

とりあえず歌いたくなった人はこれを

今回お話をうかがったキムラケイサクさんによる『アニソンバカ一代』(K&Bパブリッシャーズ)が発売中です。1年365日にちなんだアニメ&特撮ソングがズラリ、読んでるうちにカラオケで歌いたくなる魔性のアニソン本!ちなみに自分の誕生日は「UFOの日」ということで「戦え!レッドタイガー」だそうです。詳しくは公式サイトを!


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