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フェティッシュの火曜日
 
インドの人が木で歯磨きしてた


20本くらい束になって10円だった歯磨き用の木の枝

先日旅行で訪れたインドで、朝方木の枝をくわえたまま路地に出てきた人を何人か見た。

じっと観察しているとどうやら歯磨きをしているようだった。

その後、市場で木の枝が束になって売られているのを見たのでお土産用に買った。聞けばやはり歯磨きに使うもののようだ。

せっかくなので一度自分でも試してみたい。試して具合よかったらもう歯ブラシ買わなくてもいいじゃないか。

今日はインドで買った木の枝で歯磨きします。

大北 栄人



インド料理屋で聞こう

試すまえに使い方とか聞いておきたいなと思ってインド人を探すことにした。インド料理屋に行けば手っ取り早いんじゃないだろうか。

「インド・パキスタン料理」と書かれたお店に入って、これインドで買ってきたんですけど知ってますかー?と聞いた。


左側が新たに出てきた棒、太いぞ

パキスタンの人が出てきて謎が深まる

オーナーのサニーさんという方が出てきて、「あ〜これね!知ってる知ってる、わたしも今持ってるよ。」とかばんの中から取り出してきたのが左の棒。

ふ、太い!これは負けた!

「でもこれはインドの、という物じゃなくて、回教徒が使う物ですね。イスラムのえらい本に書かれてます。」ありゃ?思ってたのと話がちがうぞ。

サニーさんはパキスタンの人だというし、出てきた枝はぶっといし、私はサニーさんを信用せずに、へ〜、すっごいですね〜、とかなんとか言ってそのまま帰った。


新たなインド料理屋でインド人に話を聞くが…

サニーさんは正しかった

そんなはずはないだろう、これはインドの物だろう、となぜかかたくなに思い込んでいた私は、もう一軒インド料理屋をおかわりした。

お店の人に聞いてみると、何人かいる全員がインド出身。「もちろんその木は知ってるよ。でもそれムスリム。お祭りのときに使ってる。わたしたちはヒンジュだから使わない。」とのことだった。

やはり現在木の枝で歯を磨くのはイスラムの文化で、インドでも回教徒の人たちが使っていた、サニーさんは正しかったのだ。


ということで最初の店に戻る。世田谷の梅ヶ丘商店街にあるアラジンというお店だ。

水につけてしがんでゆっくり上下に…

マスワークというそうだ

回教徒が使う木の枝の歯ブラシのことを「マスワーク」というそうだ。(ミスワークで検索しても出てくる)

お祈りの前はちゃんと歯磨けよ、とえらい本に書かれているらしい。ドリフもイスラム的なことを言ってたわけだ。

「マスワークで歯磨きやるとちゃんときれいになるよ。これただの木じゃなくて特別の木だからね。毎日使ってると先がやわらかくなってブラシみたいになるし。」

やっぱり歯ブラシ代わりに毎日やるの?と聞いてみると、「たまに使う」と自信なさげに言うサニーさん。やはり歯ブラシの方がいいのだろうか。


小泉純一郎とツーショットのサニーさん。サニーさんはもしかしたらパキスタンの大統領か何かだろうか。

私には歯ブラシの血が流れている

サニーさんには悪いが、こっちは歯ブラシ生産量日本一の八尾市出身なんだ。うちの家にはばかでかい歯ブラシを持って八尾パレードに参加するブラシ屋の祖父の写真もある(地元でそれがステータスだということではないが)。

やっぱり歯ブラシ使ってんでしょ?歯ブラシと比べたらどうなの?「イスラムのことを考えたらマスワーク」という答えだ。

なるほどね。確かにお祈りは大事だわいよ。でも磨き心地とか使い勝手だけで言ったら歯ブラシが負けるわけがない。じゃあイスラムのことを考えなかったら?と聞いてみたところ、サニーさんは急に無言になった。

イスラムの人、マジだ。歯ブラシの私、あんまりマジでない。ところでマジって真面目が縮まったものなんだって!


写真とらせて、と言ったら見事なポーズ。これはポーズだ、と唸りたくなるほどのポーズっぷり。

私の買った細いものはニームという木のようだ

検索してわかった歯木の歴史

家で検索したりしてわかったことだが、歯を磨く木は歯木。歯木の起源は西はエジプト、東はインド。古代インドの医学書アーユルヴェーダにも書かれてる。お釈迦さまも歯ぁ磨けよ、ってみんなに言ってたみたいで、仏教と一緒に中国を通じて日本に入ってきた。日本ではその後、房楊枝になったり、そのうち歯ブラシが入ってきた。

インドの歯木は「村の薬局」と呼ばれているニームの木が有名。画像を見てると、私が買ってきたものもニームの木のようだ。

インドの人の中でも回教徒が使う、ということだけど歯ブラシ買えない人も使うんじゃないか?という話もあった。インドでは約13%が回教徒。ちなみにサニーさんが言うにはパキスタンでは30%くらい使ってんじゃないか、という話だった。


先をちょっと削ろう
水につけてやわらかくする

そして恐る恐るしがんでみると

苦い!
苦い!

何度かしがんでいると先が分かれてブラシっぽく

後々まで苦い

先を削ってしがんでみると、これが苦い。どれくらい苦いかというと、「…いやだ!」と口に出してしまうくらい苦い。

しかし苦さをがまんして何度かしがんでいると先がほぐれてきた。ちょっとブラシっぽい感じになってきた。

なんだ結局は歯ブラシなんじゃないか。なら許す。オマエ、オレタチのナカマ。ヤオのメイサンヒン、ワカゴボウクエ。ニームの木に心開いた瞬間だった。


ためた歯垢を染める

さあニームの木の準備は整った。一体どれくらい磨けるのかを見るために歯医者で歯垢を染める薬を買ってきた。一ヶ10円。安い。日常的に使うものではないので、どこにぶつけていいのかわからない安さだ。

そして歯垢も溜めてきた。前夜の歯みがきをがまんして、当日もリンゴなど歯垢を落としてしまいそうなものはとってない。

意識的に歯みがきをしないのは思ったよりも辛かった。そういう拷問があったら私は一日で真実を吐くと思う。


薬は小銭入れに入れておくと危険な香りがするという伊東家の裏技
見事に染まった。溜めたな〜歯垢。

そしていよいよ磨いてみるんですが…む、イイですよ!

歯の裏側はむずかしすぎてあきらめる箇所も

きれいになってる気がする

枝の先のブラシ状の部分を前歯に押し当てて、きゅっきゅっ、とやってみると、あ、これはいい。表面のざらざらが、どんどんとれていく気がする。

細い枝だからか、歯ブラシよりも直接歯間にあてられるので思ったよりも細かい部分に手が届く。こりゃきれいになるわ。

薄れてきた苦味も薬効だという気がしてきて心地よい。天然のハミガキ粉みたいなものだろう。

問題は裏側を磨くのにすごく時間がかかるということだろうか。時間といえば、一本一本やるので歯ブラシよりも全体的に時間はかかる。


お、歯垢は落ちてるけど積年のタバコのヤニが…

歯ブラシもやっておこう

ニームの木は思ったよりもよかったが、磨き心地をくらべるために歯ブラシもやっておく。


歯科医がすすめる基本設計vsインド人がすすめる小枝
きたきたきたきた、すげーきもちいい!!

裏側の磨き残しがなくなって、全体がより白く。もちろんヤニは変わらず。

歯ブラシちょうすごい

シャコシャコシャコシャコー、で思い出した。これだ、前夜から求めていたものはこの感覚だ。すごいわ歯ブラシ。爽快感がケタちがいだ。

歯木は歯木で一本ずつやるスローフード的なよさがあるだろうけど、文明の利器は別腹よ〜、とOLが食後にケーキ食いながら言ってた気がする。ファストフード最高。

これが六分儀っちゅうもんですか〜、とテレビで福山雅治が驚いていたがこの数分間で幕末を生き抜いた感覚だった。文明!ありがとうございます!文明ありがとうございます!


さあ、今回は20本10円の枝でしたが、その辺に落ちてるものだったら夢の0円

エントリーNo.1、黒くて太い何かの枝
No.2、ちょっと細めの葉っぱがついた枝

落ちてた枝で歯を磨く

ニームの木の枝で磨けるなら、もしかして枝ならなんでも磨けるんじゃないだろうか?

これで磨けたらすごいぞ。世界は変わらなくても八尾は変わる(パニックになる)。だって落ちてる枝ならただなのだ。水と安全と歯ブラシがただな国ニッポン!


黒い方、樹皮が厚い!
細い方、わりばしみたい…あ、木目が出てきたんだ

しがんだら黒い方は割れた。脱落。
細い方はブラシ状とはいかないものの、少し先が分かれてくれましたよ。

そしてその辺に落ちてる枝を試す。歯垢も落ちなくはないが磨き心地は…いや、待てよ

これかっこいいんじゃないか?

こんなかっこいい歯みがき見たことないぞ!

思ったよりもきもちいい、歯木体験でした

歯木もいい、だが歯ブラシのすばらしさよ

使い心地の悪いその辺に落ちてた枝でみがいていると、手でやったほうが早いんじゃないか?という気がしてきた。そういえば指で磨くのが日本では一般的だったんじゃなかったか。

調べてみると、指で磨く際に使う粉もいろいろあるようで、ナスのへたを真っ黒になるまで焼いたものとか。それは何か効きそうな気がするなあ。

だが、ナスのヘタには先に言っておこう。歯ブラシにはかなうまい。あのスピードは、爽快感は、現代に生きていてよかったという心地がある。もちろん歯木の一本一本確認できるよさもいい。だが、歯ブラシは、あれは麻薬だ。

私たちは気づかない間に歯ブラシ中毒になっている。歯ブラシ以外のものを使うとそのことがよくわかったりした、歯みがき体験だった。

じゃあな、宿題しろよ、歯ぁみがけよ(ニームの小枝で)。


 
 

 

 
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