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ロマンの木曜日
 
まいまいず井戸レポート2010


公園の看板に描かれた謎のうずまき

小学校か中学校の社会科で出てきた単語を、とつぜん思い出した。

それは「まいまいず井戸」。

一度聞いただけでは分からない、そして一度聞いたら忘れない、かわいくて不思議な名前の井戸。関東地方には聞き覚えのある人が多いと思うのだけど、どうだろう。

それがどんなものだったか、どこにあるのか、調べたら意外と身近だったので、見てきました。

萩原 雅紀



まいまいず井戸とは

「まいまいず井戸」とは、土地をすり鉢状に掘り下げ、その底に掘られた井戸のこと。たいていの場合、井戸のあるすり鉢の底に降りやすいように、淵にらせん状の道が造られていて、その形状がカタツムリに似ていることから「まいまいず井戸」と呼ばれている。カタツムリのことを「マイマイ」と言いますよね。

ただ、「まいまいず」の「ず」の意味は諸説あってハッキリしていないらしい。とりあえず「まいまい's」ではないだろう。


嘘じゃないよ、文化財だしちゃんと看板もあるよ 別の場所にもまいまいに導く看板

おそらく、関東地方以外の方は聞いたことないんじゃないかと思う。それもそのはず、この井戸は関東、特に多摩地方特有の地形と地質によって生まれたものなのだ。では、なぜ地面から直接井戸を掘らず、わざわざすり鉢を掘ってから井戸を造ったのか。

東京西部の多摩地域は、多摩川が山間部から流れ出てきた扇状地で、もともとの地面の上に多摩川が運んできた土砂が厚く堆積していて、さらにその上には、太古の昔から富士山や箱根山の噴火に伴って降り注いだ火山灰が、いわゆる関東ローム層となって積み重なっている。



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何年も住んでるけど多摩が扇状地だなんて意識してなかった

つまり、この地域で地下水の水脈まで到達する井戸を掘るには、普通の井戸の深さプラス関東ローム層と多摩川の土砂の厚み分の深さが必要になる。しかし、井戸が造られた当時はそれほどの深さを掘る技術がなく、また堆積した土砂は崩れやすかったため、まずすり鉢状に広く掘り、本来の地面が出たところで垂直に井戸を掘った、ということらしい。

と、文章ばっかりの成り立ちや構造はこのくらいにして、実際まいまいず井戸がどんなものかを見てみよう。


羽村五ノ神の井戸

青梅線の羽村駅で降りると、駅のすぐ向かいに小さな森が見える。比較的整備された駅周辺にあって、明らかに土地の時代が違うことが分かるこの森は五ノ神社。この中にあるまいまいず井戸は、一説には鎌倉時代に造られたと言われている。こんな駅前の西友の脇に鎌倉時代からの井戸があるなんて!



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駅前のスーパーの隣に歴史的な井戸が!

もしや駅前のオブジェはまいまいインスピレーションか あきらかに周囲と時間の経過が違う土地
井戸の傍では少年サッカーチームが試合後の反省会中 この神社もかなり歴史があるらしい

神社の中に入ると、丸く柵に囲まれた一角が。柵の上から覗いてみると、すり鉢状の窪地に、見事にらせんを描いた通路が下に伸びていた。


すり鉢の淵を1回転半しながら降りていく

深さはおよそ5m。想像よりちゃんとしたすり鉢とらせん。

さっそく通路に沿って降りていくと、案外長い道のりでおもしろい。でも毎日水を汲んでここを行き来していた昔の人は大変だっただろうな。


これでも昔より道はよくなったんだろう 思ったより道のりは長い
底の中心に井戸の跡がある 見上げるとなかなかの谷底感

残念ながら井戸はもう使われていなくて、中を覗いたけど水は枯れているようだった。

しかしここは鎌倉時代(地元の伝説では約1200年前)に井戸が掘られて以来、隣の社とともに村の中心であり続け、戦後に水道が開設されるまで現役で使用されていたという。

きっと、地域の人々が文字通り井戸端会議をするような賑わった場所だったんだろうと思う。


全体的な大きさ深さはこんな感じ

青梅新町の大井戸

水道が引かれる前は関東全域に数多くあったと思われるまいまいず井戸も、現在もその姿を残しているのは数えるほど。そんな貴重な井戸のひとつが羽村の隣、青梅市にもあるというので行ってみた。

場所は羽村駅から青梅方面に1駅下った小作駅から十数分歩いた場所にある、その名も「大井戸公園」の中。すぐ近くの地下を圏央道のトンネルが通っている。



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何の変哲もない住宅地の中に巨大な井戸がある

ここもやっぱり井戸の上が森 立派な碑も建っている
解説書を見たかったが品切れ中 この井戸、月曜定休です

広場や噴水などもあるふつうの公園の一角にこんもりした森があって、その中に大きな窪地があった。すり鉢とは言うけれど、外周は円ではなく陸上トラックのようなイメージ。そしてその中心に立派な井戸が掘られていた。


羽村と比べるとものすごく大きなすり鉢
すり鉢が大きいからか、通路はらせんではなかった

なんと、残念なことに通路はらせんではなかった。つまりここは、形は似ていても厳密には「まいまいず井戸」ではないのかも知れない。そう言えば確かに説明看板のどこにも「まいまいず」の文字は見当たらず。

それにしても大きなすり鉢で、底の部分でも大人が十数人入れそうなほど。周囲を含めてかなり奇麗に整備されているように見えるので、このすり鉢井戸がどのくらい原型をとどめているか分からないけど、資料を読むと江戸時代以前からこの付近に街道の交差点があったらしく、周辺も今より栄えていたのかも知れない。

もちろん現在は使われておらず、井戸の底も土やゴミが溜まっていた。


右から左にかけて、昔はマイマイだった...ように見えなくもない こんな楽しそうな場所で子供に看板の意味はないだろう
直径が大きい分すり鉢も深く、7mくらいあるらしい 井戸の中はゴミが溜まっていた

残念ながらまいまいではなかったけど、羽村の井戸を見て興味を持ったらこの大きさは一見の価値あり。場所もすぐ近くなので一緒に見ることをお勧めします。ただし月曜日は定休なので気をつけよう。

しかしなぜ井戸なのに定休日があるんだろう。


広さと深さに思わず木村ポーズ

府中郷土の森博物館内の井戸

もうひとつ、今回調べていて見つけた場所。南武線、武蔵野線の府中本町駅近くにある「府中郷土の森博物館」の中にもまいまいず井戸があるらしい。



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拡大して写真にすると井戸が見えます

実はここ、僕の自宅から徒歩でも行けるくらい近い場所だったので驚いた。


家の近所なのに来たことなかった 内部には府中近辺に建っていた古い建物が移築されている

この博物館は有料(大人¥200-)だけど、ものすごく広くて、府中近辺に建っていた多くの古い建物が移築されていた。これを見ているだけでも入園料のモトは取れた気がする!

肝心のまいまいず井戸がどこにあるのかと探していると、案内地図の中にぐるぐるのうずまきを発見。なに、あんなにまいまいしているのか!?


とりあえずレコメンドはされてなかった 案内地図の真ん中に不穏なうずまきを発見!


広い館内を歩いていくと、目の前に怪しげな丸い茂みとその中に続く下り坂を見つけた。ここだ!


もう外観だけで見分けがつく!ここに間違いない!
どんだけまいまいしてるか、と思ったら少し拍子抜け

案内地図のまいまい具合を見て、期待に胸膨らませながら降りていくと、なんとちょうど1周まいっとしただけで底に。あの地図大げさ!

でもこのまいまいず井戸、直径が小さい割に深さはあって、かなりまとまりの良い感じ(1日見てまわって何となく好みが出た)。


直径小さくてそこそこ深くていい感じ! ここは井戸の底に水があった

それにしてもこんな家の近くに貴重な遺跡のようなものがあるなんて、昔はこのあたりも栄えていたんだろうか、と思いながら地上に戻って看板の解説を読むと、これは現在の京王線府中駅近くで発掘された井戸のレプリカなのだそう。つまりこの博物館のために人工的に造られたもので(もともと井戸って人工だけど)、実際に使われていたものではないらしい。

なんだそうなのか、と少しがっかりしたけど、それよりいま何喰わぬ顔でビルやマンションが建っている府中の駅近くにこんなものがあったなんて、多摩の奥深さを再認識してしまった。できることなら当時を見てみたい!

地味かわいい

たまたま思いついたテーマだったけど、調べてみると現存しているものは少数で、しかも家の近くに重要な物件が点在していた、というのは嬉しかった。

特に関東は関西と比べて歴史が浅い、重要な文化財が少ない、と言われるけど、まいまいず井戸は関西にはないだろう、と、誇りを持って言いたい。

なにしろあの地味かわいい感じは貴重だと思う。

まいまいず井戸グッズを作りたい

 
 

 

 
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