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ちしきの金曜日
 
日本一のシャッター街・阿久根


 

ブログ市長で話題の鹿児島県阿久根市に行って来た。

目的は、駅前に廃ブルートレインを再利用した宿泊施設があって、それに乗る(というか泊まる)ことだった。が、行ってみたら、むしろシャッター街のすごさに目を奪われた。

「シャッター街がすごい」なんて、まったく失礼な言い方のようだが、別に揶揄してそう言ってるわけではない。本当にすごいというか、なにやら面白いのだ。

順を追って説明したいと思う。

T・斎藤



地方は疲弊している

その日、私はまず砂蒸し温泉で有名な指宿を訪れた。

駅前の広場に足湯があるなど、温泉街らしい楽しげな雰囲気もあったものの、商店街はこんな感じだった。


指宿の駅前商店街。

日曜日の昼間だというのにこの閑散とした空気。

こういった光景は、九州各地で見受けられる。

佐賀県は有田駅で降りた時もやはり駅前がこうだったし、私が住む長崎県でも同様。さすがに長崎や佐世保など大きな所はそうではないが、諫早、大村、島原などのアーケードはこれに近い感じだった。

レンタカー屋のおじさんに聞いたところ、指宿は20〜30年くらい前は新婚旅行のメッカとしてとても賑わっていたそうだが、海外旅行が主流になってからは寂れていく一方だという。

(※おじさんは20〜30年前と言ってたけど、ピークだったのは昭和30年代〜40年代だったようなのでもう少し昔だ )

レンタカー屋のおじさんはさらに
「鹿児島だと阿久根あたりもだいぶひどいらしいねぇ。」
と言われていた。

その阿久根にこれから向かう。


新幹線が通る出水駅から、肥薩おれんじ鉄道に乗り換えて阿久根駅まで約30分。

ブルートレインの宿

阿久根に行った目的は、駅前にある廃ブルートレインを利用した宿に泊まること。

それはまさに駅を出てすぐのところにあった。


駅の前というか、ほとんど敷地内と言ってもいいようなところにある。


かつて熊本=京都を結んでいた寝台特急「なは」の客車が2両置かれている。

料金は一泊2000円。
それに毛布が1枚300円、シーツが1枚150円。
シーツは2枚借りたので合計2600円。 (詳しくはこちら

たったこれだけの値段で憧れのブルートレインに泊まれる。なんて安いんだ!(動かないけど)


これが私が泊まった部屋。B寝台デュエットの2階。
これ、乗ってみたかったんだ。
もうひとつの車両はB寝台開放。
こちらは団らん用として宿泊客は無料で使っていいそうだ。(21時まで)

このブルートレインの宿、名目上はライダーハウスとなっていて、ツーリング客が安い素泊まり用の宿として利用しているようだ。

ただし、風呂などは付いてないから近くの温泉に行く必要がある(風呂に入りたいなら)。食事なども出ない。そのあたりも「なは」と一緒だ。


これぞ寝台列車、というムードの洗面台。(よく見ると水は別の蛇口から出ている)

店がない

さて、ひと通り車内のムードを満喫し、部屋でちょっと休んだ後、夕食を食べようと外へ出かけた。

…が!

店がぜんぜんやってない。
田舎に行くと駅前でも店がまったくないなんてことは驚くようなことではないが、阿久根の場合、一応「駅前通り商店街」なる看板とそれらしきアーケードがある。なのに店がぜんぜんやってない。

その時ふと、指宿で聞いた
「鹿児島だと阿久根あたりもだいぶひどいらしいねぇ。」
という言葉がフラッシュバックした。(エコーがかかって)

もっとも、時刻はその時21時を回っていたのでそのせいもあったかもしれない。ひととおり歩いて、開いてるのが確認できたのは、ほっかほっか亭と寿司屋と小さな居酒屋の3軒だけだった。

小さな居酒屋に入った。


すごくいい店だった。

居酒屋のおかみさん曰く、阿久根もかつては大変賑わっていたという。それが10年ほど前に阿久根を牽引していた水産卸売業の会社が倒産し、それから人がどんどんいなくなり、寂れていったのだという。かつては映画館などもあったそうだ。

労働者が集まってくればそれに付随して新たな仕事が生まれる。が、労働者たちがいなくなればそれに付随していた仕事もなくなる。

「新幹線が通らなかったのも影響してますか?」
と聞いたら、
「それはあまり関係ないかな。それよりもっと前からだから。」
と言っていた。


いろいろ食べて、ビールも焼酎も飲んで全部で3000円だった。

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