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ちしきの金曜日
 
500トンの柱が59本!


埼玉県に「首都圏外郭放水路」というものがあるのをご存じだろうか。

水害から地域を守るためにつくられたこの施設、機能もさることながらそこに広がる光景が信じられないようなものだ。今回念願叶って取材におじゃますることができたので、ご紹介したい。刮目せよ!

大山 顕



実力を兼ね備え、かつかっこいい

とにかく、まずこの外郭放水路のなかのいち施設である「調圧水槽」内部の光景をごらんいただこう!


地下22mにある長さ177m、幅78m、高さ18mの空間。夢の中にいるかのようなふしぎな光景!【大きな画像はこちら / さらに大きな画像はこちら(←横9000ピクセル・20Mありますのでご注意)】

埼玉県のこのあたり、中川・綾瀬川の流域はちょっとした盆地のようになっていて、かつ地形の勾配が緩いため、川が蛇行している。ここへ大雨が降るとどうなるか。洪水になってしまうのだ。
それでもふるくは水田が広がっていたため、これらが貯水池の役割を果たしていたのだが、近年宅地化が進み、洪水も頻繁に起こるようになっていた。

そこでこの外郭放水路の登場だ。この施設により水害による被害が大幅に減った。すごい。実力を兼ね備え、かつかっこいい。こういう男にぼくはなりたかった。


場所はここ(より大きな地図で外郭放水路を表示)

59本もの巨大な柱が立ちならぶ。

今回共同取材したみなさんの姿と比べると、この調圧水槽の大きさがよくわかることと思う。【大きな画像はこちら / さらに大きな画像はこちら(←横9000ピクセル・16Mありますのでご注意)】

そう、今回かねてから念願だったこの外郭放水路の取材がかなった。ふだんの見学会では見ることができない設備を見ることができて大興奮。とにかく、この施設のすごさをご紹介したい。

*今回の取材・撮影は特別のものです。通常の見学会では今回この記事で紹介されている場所すべてに入ることはできず、また個人による取材・撮影も受け付けていません。ようするに、この記事見て「すごい!行ってみよう!撮影しよう!」と気軽に申し込みしないように!

さて、この外郭放水路。着工から完成まで13年。すべての工事が終わったのは2006年のこと。けっこう最近だ。計画段階からだとそうとうの年月がかかっている。このようなものが実現したというそれ自体に大人だったら感動するだろう。


冷やされた湿気のある外気の水蒸気が飽和し、神殿はかすみがかっている。

巨大でシンプルであること

この外郭放水路。しくみはいたって単純だ。いや、これは褒め言葉だ。河川とか海洋とか山とか、人間のスケールをはるかに超えたものを相手にするとき、土木構造物はしばしばとてもシンプルなプランで挑む。それがかっこいいとぼくは思う。

つまり、ここには5つのでっかい「穴」とそれらをつなぐトンネルでできている。そういう単純さだ。

しかし、シンプルだからってそれを設計・施工し日々運用メンテナンスするのが容易かというとそんなことはない。ちょう困難だ。たとえば今回見せていただいた「第1立坑」(最後のページでその写真をご覧いただきます!)は5つある「穴」のうちのひとつだが、これがなんと内径30m、深さは60m以上ある!


この柱群、なんと1本で重さ500t!【大きな画像はこちら / さらに大きな画像はこちら(←横8000ピクセル・18Mありますのでご注意)】

いやいや、ようするに穴掘りゃいんでしょ?と思ったら大間違い(そんなふうには思わないですかね)。きみは土圧というもののすさまじさを知らない。掘れば掘るほど穴をその状態にとどめておくのは至難の業になる。しかも直径も大きい。これはすごい。こんなのよく掘ったなー、しかも5つも、と感動する。感動しないやつには自分で60mの穴掘ってみろ!といいたい。

このすばらしい穴に、大雨のときに河川からあふれた水が流れ込む。計5つの穴の容積がバッファとなるのだ。


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