モテる男の条件とはなんなのか。それはわからないが、「モテている男」がどんな状態かなら、わかる。キスマークがいっぱいついている男は、確実にモテている男だ。
(櫻田 智也)
憧れのキスマーク
今回ぼくが欲しがっているキスマークは、夜中に首筋を吸ったりしてできる生々しいやつではない。
うむ、セクシー。 切り抜いた厚紙を何枚か重ねただけの唇だ。
それを手持ちしやすい土台に貼りつければ、キスマークスタンプの出来上がりである。
おお、沸き起こる劣情。 あとはこれを顔に押していけばキスマークだらけのモテ男になれてしまうという、世にも物哀しいアイテムなのだ。
キッスの嵐
このために買ってきたばかりのスタンプ台にキャサリン(スタンプのことです)を押しつけ、インクをしみこませる。
キャサリンの唇がほどよく潤ったところで、さっそく熱いベーゼをいただくとしよう。
いい。思いのほか、いいではないか。 過程など問題ではない。結果として「おっ、こいつモテてるな」である。
それにしても、この日のキャサリンがとにかくスゴかった。
やっぱり肉をずっと食ってきた民族ってちがうよね。激しさが。
とうわけで、とことんモテたあとの様子がこれだ。
これだけキスマークがついていたら、誰がみたって「モテる男」にちがいない。
やった、俺、モテ男になれた! 母さん、息子がいま、生れてはじめてモテ男になりましたよ!
モテ男がやってきた
せっかくだからモテる男の気分というのを味わいたい。 人は、モテモテに対してどんな反応を示すのか。嫉妬か羨望か、はたまた欲情なのか。生涯未知な領域に、いまなら踏み込める。 一目でモテモテとわかる男として街に繰りだしてみた。
いやあ、夕べはぜんぜん寝させてもらえなくてさあ。そんなノリで街へとやってきたモテ男。
そこに、最近このあたりでモテモテだという噂の焼き鳥屋が。ここはぜひ、「俺だってモテてる」ということを主張しておきたい。
とりあえずびっくりさせないよう、ゆっくりと近づく。
砂肝にシロモツ……え、レバーないの? と、あくまで自然に注文を繰りだすモテ男。相手も動じることなく応じていく。さすがはモテ鳥屋だ。
なんでもない表情で鳥を焼き続ける店主。このところ梅雨でジメジメするといった世間話が交わされる。 だがぼくが聞きたいのはそんな話題ではない。「お客さん、モテてますね〜」の一言だ。それを求めてさらに店主に近づいていく。
淡々と鳥を焼く店主。それを待つモテ男。これ以上とくにどうしようもないなと大人しくしていたら、いつのまにか店内にいた少女の視線がぼくに釘付けであった。なるほど、これがモテか。 どうだい? 眩しいだろう。
モテ気分を味わいつつも、「はやく焼けろ」と祈っていた焼き鳥が出来上がりつつある。
お金を払い終えた瞬間、モテ時間を共有したふたりの間に訪れた安堵感に照れ笑いがもれる。
モテの競演を終えてみての感想はただひとつ、 「この焼き鳥屋さん、いい人」 だった。
ありがとう焼き鳥屋さん。ほんとはこの前にお菓子屋さんで撮影断られて凹んでたんだ。
記事を書き終えてみて、「はたして買い物に出かける必要があったのか」という疑問を感じたが、当時は必要だと思ったのだから仕方がない。とりあえず外にでたほうが記事が明るくなっていいのだ。そうじゃないとこんな写真ばかりになってしまうのだから。