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ロマンの木曜日
 
新宿「ケチャまつり」の練習に参加した


日本のケチャは、東中野で練習をしています。

ケチャって知ってますか。
男が上半身裸で「チャッチャッチャッチャッ!」と叫ぶ、インドネシアの伝統芸能だ。

これを日本で上演する「ケチャまつり」に知り合いが出演するというので、僕もその練習に参加させてもらった。

加藤まさゆき



本当に飛び入りで練習に参加

昨日のこと。
友人の結婚パーティーに呼ばれた僕は、そこで再会した先輩に、ふざけ半分でデイリーポータルZ用の名刺を渡した。
そしたら意外なことに先輩はデイリーを知っていて「あ、セミとか食べるサイトでしょ」と話が盛り上がり、気がつけばケチャの練習に参加することになっていたのだ。

先輩はアライさんといい、4年前から「ケチャまつり」に参加しているという。「ケチャまつり」は例年7月に新宿で開催され、誰でも無料でケチャを見物することができる。
僕は翌日、二日酔いの頭を抱えながら、アライさんの待つ東中野の「芸能山城組」の練習所へと向かった。


細い路地の奥に、練習所はあります。

 

ここからはイラストでお届けします

この日の練習で主に教えて下さったのは、ホソダさん(仮)という、年配の男性。ホソダさんはかなりケチャ歴の長い方のようで、この日はリーダーとして練習全体を総括されていた。


ホソダさん。唐突ですが、僕の兄にものすごく似ていて驚きました。

さて、何でイラストなのかと言うと、練習についていくのが必死で、写真を撮る余裕が全然無かったからだ。
練習はかなり本気のペースで、僕のような初体験者が混ざっていいのだろうか、と思わされる内容だった。

それでもホソダさんは僕にケチャのことを丁寧に説明してくださった。

 

そもそもケチャとは何か

ケチャはごく簡単に言えば、インドネシアのバリ島における、男声合唱をベースとした群集芸能だ。男たちが車座になって座り、一定のリズムを大合唱する。
1930年代に完成した芸能で、意外と歴史は新しく、もともとあった伝統儀式をアレンジして、ヒンドゥー神話の内容を劇としてミックスさせて現在の形に至っているらしい。


実際には「ケチャ」とは言ってない。「チャッ」って言っている。

このとき、チャッ!と言う人は4パートに分かれている。それぞれが違うリズムでチャッ!と言うのだが、そのリズムが微妙にズレつつも、流れるように折り重なっていき、音全体が「リズムの編み物」のように組み合わさっていく。


こんなイメージ。みんながズレながらチャッ!と言う。

この休符に当たるところで小さく「ク」を入れる感じになるので、全体のリズムが揃うとその音とつながって「ケチャケチャケチャケチャ」と聞こえるようだ。

そして声で奏でられる16ビートの音がとても気持ちいい。ホソダさんの表現を借りるなら、「機関車のように」リズムが進行していく。

 

今日は発声練習&動きの練習。

まずは「チャッ!」の練習。
日常で、まず発することのない音である「チャッ!」を大声言うこととなって一抹の恥ずかしさをなかなか拭いきれない。
しかしそうすると、のどの奥に詰まるような「チャ」になってしまう。そうではなく、思い切って、上に突き抜けるように「チャッ!」と叫ぶのがポイントらしい。
何度か練習するうちに意外といい「チャッ!」が言えるようになり、ホソダさんに「いいねえ!ケチャ向きだねえ!」とほめられた。ぐっとテンションが上がる。人はほめられて育つ。
そして、「チャッ!」はときおり、「ジョッ!」や「タッ!」になるので、リーダーの合図で「ジョッ!」と「タッ!」になる練習をする。

あとは、僕は一番習得がたやすい8ビートのパートを全体の16ビートに合わせて「チャッ!チャッ!チャッ!チャッ!」と言っていればいいとのこと。
ケチャは元々農村の儀式なので、初心者でも簡単に参加できる役割がちゃんと作られているらしい。

 

ケチャの男は舞台装置にもなる

ケチャは、合唱をバックにしてヒンドゥー神話「ラーマヤナ」の物語が上演される。ケチャを歌う男たちは、体全体の動きで時には演劇の舞台装置となる。


手をぐっと伸ばして左右に動く。もちろん口では「チャッ!チャッ!チャッ!チャッ!」と言っている。

正直、ケチャのリズムを体に染み込ませるだけで精一杯の僕に、動きは難しかった。この日、いきなり最初から最後まで通し稽古をしたので、初めて覚えることで頭が飽和状態になる。が、それでも必死に喰らいついていく。


なんか途中でこういう動きをするらしい。もう必死すぎて覚えていない。

演劇全体の中で、猿の軍勢になったり、城壁になったり、とにかくケチャの男たちは、様々な動きで演劇の一部となって、登場人物の表現を補助するのだ。
この日の練習は2時間半程度で終了。
ぼくはアライさんと飯を食いに行った。

 

アライさんがケチャを始めたわけ

秋葉原の日高屋でから揚げとキムチをつつきながら、アライさんにちょっと話を聞いた。

「何でアライさんはケチャをやろうと思ったんですか」

そうだねー、俺はもともとジェゴグっていうバリ島の竹の打楽器をやりたくて、山城組さんに興味を持ったんだ。そしてケチャもやるようになった感じかな。ジェゴグもすごくいい音だよ。ケチャまつりでやるから聞いてみなよ。

 

「ところでこの山城組さんってのは、どういう経緯でケチャをやってるんですか」

もともと、山城先生っていう、この集まりのリーダーの方が30年以上前に、バリ島に自ら渡ってケチャの上演方法を学んできたのが始まりらしいね。当時バリ島以外では上演は難しいといわれていたケチャを、海外で初めて上演したらしいよ。

なるほど。
わけもわからず、「ケチャができる!」だけで練習に参加した僕だったが、その背後にはまだまだ知らない長い歴史があるようだった。

このあと終電が差し迫っていた僕らは、すごい勢いで野菜炒めと、ギョウザと、から揚げと、つけ麺を食べつくし、帰途に就いた。
帰りの電車の中、僕の頭の中では「チャッ!チャッ!チャッ!チャッ!」のリズムが流れ続けていた。

 

というわけで7月29日〜8月1日の「ケチャまつり」に出ます。

以上、勢いと好奇心だけで参加した練習だったが、どうにか本番のケチャまつりにも出られる流れとなった。本番当日は上半身裸で、腰布を巻き、全編40分のケチャを上演するらしい。緊張で一杯だ。

まだまだ経験少ないながら、ケチャを精一杯頑張るつもりなので、ぜひ見に来て下さい。アライさんのジェゴグ演奏も聴けます。

芸能山城組「第35回ケチャまつり」HP

場所:新宿三井ビルディング 55HIROBA

まだ、どう着るのか知らない衣装の腰布。

 
 

 

 
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