一日目：月見たぬきうどん

料理をすると言っておきながら、初っ端から茹でるだけのパックうどんとは何事だ。

そんな声が聞こえてきそうだが、まぁ、そう焦らずに。最初は低難易度の料理にしておいて、徐々にレベルを上げていこうと考えているのだ。初日は肩慣らし、軽いジャブと言ったところ。

関東にいた頃、私はうどんよりも蕎麦の方が好きだった。犬と猫なら猫、うどんと蕎麦なら蕎麦、というような人間であった。

しかしながら、大阪に来て以来、うどんを食べる機会が格段に増加した。大阪には（少なくとも私の家の近所には）、蕎麦屋が無いのである。うどん屋はしっかり揃っているのにも関わらず、蕎麦屋はチェーン店すら存在しない。そんな環境にあって、私は必然的にうどんを食べるようになり、そしてそのうまさに目覚めたのだ。

だから、まずはうどんなのだ。いいじゃない、だって、うどん、食べたいんだもの。

いやいや、お前がうどんを食べたいなんてどうでも良い。だから、ハサミはどこへ行った。この企画は、ハサミで料理をする事が主題じゃないのか。とにかく、ハサミを出せ。ハサミを使って料理をしろ。

はい、ごもっとも。しかし、うどんにも、ハサミを使う余地があるではないですか。そう、アレを刻むのに使うのですよ。

薬味のネギを刻むには、包丁よりもむしろキッチンバサミの方が適していると思う。

ハサミだと、その場でネギを、自分の好きな量だけ刻むことができるからだ。うどんを少し食べて、あ、もう少しネギが欲しいかなと思ったら、座ったままチョキチョキやるだけで、新鮮なネギを追加する事ができる。

これが、なかなか便利なのだ。切りすぎて、食べ切れずに捨ててしまうような事も無い。キッチンバサミは、薬味の性質にマッチしていると言えるだろう。

二日目：オクラ丼

二日目は、もう少しちゃんとした、自炊料理らしいものを作りたいと思う。

さすがに、薬味のネギを刻むだけでは簡単すぎた。あれを料理とか言ってしまったら、各方面の方々に、料理をナメているのかと怒られる事請け合いだ（特に、当サイトのライター陣には、料理が得意な方も多い事だし）。

では、一体全体何を作ろうか。そう考えて、まず始めに私の頭に浮かんだのは、オクラ丼であった。うん、オクラ丼が良い。オクラ丼が、食べたい。オクラ丼にしよう、そうしよう。

私の言うオクラ丼とは、インドの首都、デリーの安宿街であるメインバザール、その複雑に入り組んだ、路地奥のレストランで出される日本料理の事である（その辺の詳細については、このあたりのサイトを参照あれ）。

このオクラ丼は、ご飯の上に刻んだオクラを盛り、その上に半熟の目玉焼きを乗せたものだ。オクラは醤油で味が付けられており、卵の黄身を崩しながら食べると物凄くうまい。

メインバザールでオクラ丼を食べてからと言うもの、時々私はその味が無性に恋しくなり、自分で作って食べていた。大阪に来てからはとんとご無沙汰だったので、久々にオクラ丼を作ってみたくなったのだ。

さて、早速食してみると――

うん、やはり、凄くうまい。とろりとした半熟の卵黄が、刻んだオクラと絡まって良い味出てる。オクラをやや濃い目に味付けしたのが良かったみたいだ。

ネバネバ繋がりで納豆を少し乗せてみたが、これもまた正解だった。最近、暑くなってきてバテ気味だったのに、食がどんどん進むのだ。そろそろ夏本番、これは精が付きそうだ。