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はっけんの水曜日
 
「変ったチャーハン」という名のチャーハン


いまからもう10年ほどまえになるだろうか、伊豆をドライブしていた時、道沿いに「変ったチャーハン」と書かれた看板に気づいた。
どんなチャーハンなのか具体的な説明はなく、ただ「変ったチャーハン」という文字ばかりが印象的な看板が、いくつもあるのだ。
その時からずっと気になっていたお店に行って、「変ったチャーハン」を食べてきた。
10年越しの望みが叶ったのだが、そのチャーハンがまたとてもうまかった。

工藤 考浩



片瀬白田駅前

その「変ったチャーハン」を出すお店は伊豆急行片瀬白田駅の近くにあるらしい。
東京から行くと、熱川の少し先になる。


片瀬温泉と白田温泉の最寄り駅

僕が看板を見たのは自動車の運転中だ。
10年くらい前に国道135号線をドライブしていたときに見つけ、その後ここを通る度に気になっていたのだが、伊豆に来るときは他にご飯の予定があることが多く、10年来ずっと気になったままで、食べる機会がなかった。

国道135号

やっぱり看板だらけ

今回は電車に乗ってやってきたのだが、駅前にもその周辺にも「変ったチャーハン」の看板があり、“一度食べたら二度、三度!!”というキャッチコピーが踊っていた。
この看板自体が変わっている。


駅前のロータリーにも看板
すぐそのとなりにも
ここにも
そこにも
とてもよく目立つ

片瀬白田駅前 中華ふるさと

きっとこのあたりをドライブした人は「その看板、見たことある!」と思っておられるだろう。
でも、道路沿いからお店の姿は見えない。
国道から少し市街地に入ったところにお店はあった。
駅からは徒歩数分だ。
いままで看板だけを目にしていたので、お店を見つけたときはいまだ見ぬ姫君にお会いしたような、ちょっとした喜びを感じた。

お店はこちらです

お店ののれんそのものにも「変ったチャーハン」と大きく書かれている。
これを作ったのれん屋さんもびっくりしたことだろう。


変ったのれんだ

ごめんください

変ったのれんをくぐると、平日の夕方前ということで、お店にはお客さんがいなかった。
カウンターの上のメニューには「変ったチャーハン」という文字はない。
おかみさんに「変ったチャーハン」というのはどれですか?と聞いたところ、オススメは肉チャーハンだという。


お店はごく普通の中華屋さんで「変った」ところはない
「肉チャーハンがよくでますよ」


店内には有名人のサインがいくつも並んでいた。
テレビでもよく取り上げられているようで、その取材時の様子をおさめた写真も飾られている。

サイン色紙も並ぶ

厨房に入って写真どうぞ

おかみさんに、僕もホームページの取材をさせて欲しいとお願いしたら、快く応じてくれた。
「こっち来て写真撮っていいですよ」
と厨房の中に入れてくれた。
すごく気さくなおかみさんだ。

それから余談になるけれども、厨房がとてもきれいだった。
こんなに清潔な厨房のお店、そうはないと思う。


どうぞどうぞ、こっちで撮してください

あんかけチャーハン

さて、この「変ったチャーハン」のいったいどこが変わっているのか。
簡潔に説明すると、あんかけチャーハンなのだが、かといって普通のあんかけチャーハンでもなくて、やっぱり「変ったチャーハン」という表現がぴったりなのだ。


まずはご飯と卵を炒める
ご飯の部、できあがり

作り方を見ていたところ

・ご飯と卵、炒める
・それ皿に盛る
・細切り肉炒める
・キャベツ炒める
・あんかけにする
・ご飯にかける

という事のようだ。


お肉と
キャベツを炒める

マスター登場

お店を始めて30年ほどで、変ったチャーハンも開店当初からメニューにあったことや、ご夫婦と息子さん二人の四人でお店を切り盛りしていること、この地域ではお店ができるもっと昔から肉チャーハンが食べられていることなどを、料理中のおかみさんに伺っていたら、お店の奥からマスターが出てきた。


スープの準備をしてくれた
夫婦の共同作業

話しを聞きながらもカンカンと中華鍋が鳴り、香ばしい炒め油の香りが漂ってきて、さすがこのみち30年のベテラン、流れるように「変ったチャーハン」ができあがった。


おまちどうさま

完成「変ったチャーハン」


卵と炒めたご飯の上にたっぷりキャベツと肉を炒めた餡がのっている。
そしてその脇には福神漬け。
キャベツがほんのりと色づいていて、いかにもうまそうな気配になっている。


紅しょうがではなく福神漬け
どう見てもうまそうな食べ物です

こりゃうまそうですわ

個人的な話しをくりだして恐縮だが、僕の母はキャベツの炒め物をよく作ってくれた。
日常の食卓に頻繁にのぼっていたので、今でもときどき食べたくなって、自分で作っている。いわゆるおふくろの味というやつなのだろう。
ご飯によく合うキャベツの炒め物がご飯の上にたっぷりのっているのだから、おいしいにちがいない。
僕の好みのタイプの食べ物だ。

食べる前から感激気味だが、ともかくいただいてみよう。
むふ。


どれどれ
あっはーん!

うまいうまい

あんかけといってもあんかけじゃない。
どろっとしておらず、あっさりなのにぐわっとコクがあって、キャベツのほんのり甘さが唾液分泌指令を僕の脳に送ったぞ。
ご飯はふわふわでパラパラで、ご飯自体には塩味がほとんどないのに、卵と炒め油の風味がきいていて、これだけで食べてみたいくらい。
普通のチャーハンだと野菜はそんなに採れないけど、変ったチャーハンだったらたっぷりとキャベツが食べられるのも精神的な満足度が高い。
福神漬けのパリパリとした食感もアクセントになっている。

要するに、全体的にうまい。

写真の撮影時間から判断すると、いただきますからごちそうさままで6分だった。
いろいろと質問しながら食べていたのに、一瞬で、といっていいほどの素早さでたいらげてしまっていたようだ。


ごちそうさんでした


B級じゃないっすよ

近頃のブームで、静岡B級グルメのイベントに出たことがあるそうだけれど「うちのは手間がかかるからああいう(外でのイベント)には向かないみたいだね」とマスター。
最近ではご当地B級グルメの定義が「観光協会が新しく考えた変な食べ物」みたいになっているので、だとしたら、30年作り続けたふるさとの変ったチャーハンはB級なんかじゃないグルメだと思う。

二度、三度 来ます!!

中華 ふるさと

静岡県東伊豆町白田313-6
営業時間:10時30分から19時30分
定休日:不定休



 
 

 

 
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