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はっけんの水曜日
 
防波堤の穴で魚釣りをする


コンタクトレンズでも探しているのかと思った。

二年前にほや養殖所の取材で宮城県女川町にいったら、観光協会がつくった穴釣り体験のチラシをみつけた。

私の知っている穴釣りというと、海辺で岩やテトラポットの隙間を狙う釣り、あるいは凍った湖に穴をあけてのワカサギ釣りだが、このチラシをみると、海沿いのコンクリートに空いた穴から魚が釣れるようだ。

よくわからないけれど、よくわからないことのほうがおもしろい。その時は時間がなくてやれなかったのだが、ほや祭りの取材でまた女川町にいくことになったので、女川流の穴釣りに挑戦してみた。

玉置 豊



釣り具屋で話を聞いてみる

さっそく地元の釣り具屋で穴釣りの聞き込み調査をしたところ、女川港の防波堤は「一階が駐車場の家」みたいなの構造で、コンクリートの下が海になっているそうだ。

そして防波堤には空気を抜く穴が空いていて、そこから仕掛けを落とすと、そこにいる魚が釣れるらしい。専用の仕掛けはエサ付きで500円。


図にすると、こういうことらしい。
シンプルな専用仕掛け。エサはアオイソメがついてくる。

コンクリートの穴から魚が釣れるなんて、話を聞くだけでおもしろいとわかる釣り、というか遊びである。

だが、この取材をしたのは五月中旬。例年ならそろそろ釣れる時期らしいのだが、今年は海水温の上昇が遅く、まだ穴釣りをやるには早いんじゃないかといわれてしまった。でもまあ、来ちゃったので、とりあえずやるだけやってみましょうか。

 

女川流穴釣りにチャレンジ

さっそく港にいってみると、なるほど防波堤に排水溝みたいな穴がいくつもあいている。釣り人も数人いるが、みんな穴には見向きもせずに、海に向かっての投げ釣りだ。普通だ。

ひとりだけエビアンフォルダーをしているような疎外感。

穴釣りって、昔からこの地の釣り師に伝わる伝統的なものではなくて、もしかしたら浅草の人力車みたいに観光客向けのレクリエーションなのだろうか。


穴はいっぱい開いているが、穴釣りをしている人はゼロ。
イメージよりも穴が小さい。トイレットペーパーの芯くらいか。波に合わせて風が穴から吹いてくる。

確かに広い海を前にして、この小さな穴で釣りをするっていうのも、なんだか素直じゃないような気もする。いや違う、この下は魚の隠れ家になっていて、きっとエサをたらせばウハウハなのだ。


これを海底まで落とすと魚が釣れるらしい。
アリ塚に棒を突っ込むチンパンジーの気分。

それにしてもこの穴、釣りをするには小さすぎやしないだろうか。

釣れるのがハゼみたいな細長い魚ならいいけれど、カレイとかクロダイとか、この穴の直径よりも大きい魚が掛ったらどうするんだろう。地元民がやらない理由はその辺なのかな。

通り過ぎる人がみんな不思議そうにこっちを見ている。

 

ヒトデが入れ食い

穴に仕掛けを入れてしばらく待ったがアタリはない。しかし、エサがもうないかなと思って糸をたぐると、明らかになにものかの重さを感じる。

まさかまさかと期待いっぱいだったのだが、穴の中から窮屈そうに出てきたのは、魚ではなくヒトデだった。


この穴からこの大きさのヒトデを抜き上げた腕を褒めてほしい。
釣りをしているとよく猫が寄ってくるが、これはウミネコ。魚が釣れたらあげるからちょっと待っていてね。

その後も、仕掛けを入れても入れても釣れるのはヒトデばかり。ちょっと大きいヒトデだとどうやっても穴から抜けないので、引っ張るとプツリと糸が切れてしまう。やっぱり大きい魚が釣れても同じように切れてしまうのかなと、捕らぬ狸の皮算用って言葉の使い方あっていますか。

一応釣竿も持ってきたので、同じような仕掛けを作ってやってみたのだが、やっぱりヒトデしか釣れなかった。


コンクリートの上で釣り。なにかをだまそうとしている人か、なにかにだまされた人だな。
天気は晴れだが表情は晴れない。

記事の主題を「ホヤが食べられるならヒトデだって食べられる」という内容にしようかなとも思ったが、ヒトデの裏側にある触手が恐ろしいヴィジュアルなのでパス。画像は掲載しません。

結局、二時間やって諦めた。やっぱりまだ季節が早すぎたようだ。

 

また女川にやってきた

時は過ぎて季節は夏。そろそろ穴の下の海も水温があがっただろうということで、「ウニ祭り」というイベントにあわせて、7月にまた女川にやってきた。親戚がいる訳でもないのに、早くも人生三度目の女川である。

前回の釣りで女川流の穴釣りがどういうものかがわかったので、今度こそは穴から魚を釣ってやろうと、以前ウナギを釣った「ペットボトル釣法」の仕掛けをたくさんつくってきた。


どんよりとした天気がきっと穴釣りに最適。でもやっぱり誰も穴釣りをしていないぞ。
この仕掛けが入った袋を玄関前に置いておいたのだが、自分でゴミと間違えてゴミ捨て場に捨ててしまった。

   

このペットボトルはくびれ部分があって糸が巻きやすい。ペットボトル釣法公式ボトルにどうだろう。
これだけ用意すれば一匹くらいは釣れるはず。もしこれで釣れなかったら、さんま祭りのときにまたこよう。

釣りをする時間は詰め込みすぎたスケジュールの関係で夕方五時から六時までの一時間一本勝負。釣れなかったら釣れなかったで、また女川に来る理由ができるからいいんだけどね。

 

穴の中からアイナメ登場!

ペットボトルの仕掛けを一つ二つと穴にいれて、三つ目を準備しているときに、最初にセッティングしたペットボトルがパタリと倒れた。

風かなとも思ったが、糸を持ち上げるとヤクルト一本分くらいの重量感と、ビンビンと来る魚の引き。

すごい、本当に魚が掛かった!


この穴で釣れるというのが半信半疑だったので、初めてウナギが釣れた時くらい興奮している。

掛かった魚は穴の直径より少し大きいらしく、中でちょっと引っかかってしまったが、糸が切れないように、魚が外れないように、念を送りながらゆっくりと引き上げると、見覚えのある魚が穴の中から飛び出してきた。アイナメだ。


穴の直径より一回り大きい魚が釣れた!穴から抜けるギリギリサイズ!

コンクリートの穴からこんにちは。魚の体高よりも狭いところからでてきたアイナメを見て、エスパー伊藤を思い出した。

すごい、釣り初めて五分とかからずに目標達成。当たり前なんだけれど、釣れる時は釣れるもんなんだね。

楽しい。私が地元の小学生だったら、学校帰りに毎日やっていると思う。

その後も同じサイズをもう一匹、さらにリリースサイズを一匹追加。幸か不幸か、穴から抜けないほどの大物の魚は釣れなかった。


これはリリースサイズ。それにしても魚影が濃い。田舎暮らしの引越し先候補に女川を追加だな。
同行者は普通に海側へ投げて同じ魚をポンポンと釣っていたが、穴から釣ることにロマンを感じてほしい。

魚が釣れる時はだいたい穴に仕掛けをいれてすぐ釣れる。放置するとヒトデがほぼ100%釣れてしまうので、仕掛けは一つか二つにして、滞在時間を短くして穴から穴へと探るのがいいようだ。

あ、夜釣りをやったら穴のサイズピッタリのアナゴとか釣れないかな。また女川にいこう。

単純に穴から魚が釣れるということがおもしろかった

女川流の穴釣り、釣れたのは小型のアイナメ3匹だったけれど、遠くまでいった甲斐のある釣りだった。

釣れる魚は物理的に穴の制約があるので、どんなに頑張っても大物は無理だけれど、コンクリートの穴から魚が釣れるという違和感が楽しいのだ。ジャンルはぜんぜん違うけれど、ピンフォールカメラとか竹馬で富士登山みたいな楽しさがある。

この釣りをひろめようとした女川観光協会の人と酒が飲みたい。やったことないけれど、南国の水上コテージからの釣りと同じくらい楽しかったですと伝えたい。

穴釣りで釣れたアイナメ、磯臭くておいしかったです。

 
 

 

 
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