毎日のように食べている、おなじみの食パン。食べて「おいしい!」とテンションが上がるほどではないが、決して飽きることのない味がそこにはある。
年中無休で変わらないテンションで愛される味なのが食パンのいいところなのだが、言い換えると季節感がない。そこでどうにか季節感みたいなものが欲しいと思った。
というわけで、夏とパンを結びつけるべく夏っぽいパンを追い求めてみた。夏のパンまつりの始まりである。
(藤原 浩一)
食パンうまい
食パンはおいしい。それも感動するようなおいしさとか、味を想像すると頭から離れたくなるような中毒的なおいしさではない、ふつうのおいしさだ。
朝ごはんに何食べようなんて考えたりせず、セオリー通りトーストを食べる。そんな生活が何年続いてもそんなに苦にならないのは、食パンがふつうだからである。ふつう故にたくさん食べても気にならない。あるいは僕がふつう中毒になっているかのどちらかだ。
そんな最高にふつうな食べ物、食パンであるが、ふつう故に表舞台に立ってこなかった。朝食や夜食。食べるのはいつだって家の中なのだ。
そんな食パンに外の世界を見せてあげたい。二度と来ない2010年の夏を食パンとすごしたい。
夏の公園
まずは食パンを連れて、近所の公園の様子を見に来た。
夏とはいえ朝の時間帯で日もあまり高くなく、木陰を通り抜ける風が涼しくて心地よい。
あまり広くはない公園だが、池や小川、林、草むら、小さな滝などがあって、要素がコンパクトに詰まっている。小さな夏の自然がここにはある。
写真を撮っていると、公園で散歩をしていたおじさんが「あっちの方にカワセミがいたよ、撮ってきなよ」とか、「隣町にもこういう小さな滝とかオブジェがあってね」とか親切に教えてくれた。
「ここで写真を撮っていった人は、他にもこんな写真を撮っています」ということだろう。amazonのレコメンド機能のような新設さである。
親切なおじさんはさておき、僕は三脚を立てながら自分撮りをしていたのだが、すごい勢いで蚊が襲ってくる。
手で払ってもブンブンとやってきて切りがない。たとえ一匹倒したところで、第二第三の蚊がやってくる。ぼくなんて蚊に血を吸われることでしか役にたたない人間なので、それはいいのだが、あまり長居はしたくない。
一方子供たちは元気だ。楽しそうに小川の周りをぐるぐると走り回っている。夏休みを満喫しているようだ。
この公園に来るたびに違う子どもが同じようなことをしているので、もしかしたらそういう持ち回りの役割分担があるのかもしれない。
そういう様子を見ながら、食パンと過ごした。蚊にはさされまくった。
夏パンその1 〜 スイカパン 〜
さて、小さな夏を堪能したところで食パンを頂きたい。夏らしい食パンを食べたかったので、家から切ったスイカを持ってきた。
夏パン一号はスイカパンだ。
食パンにスイカを乗せ、塩をかけてスイカパンは完成した。工程は少ない。味はどうだろうか。まずは一口。
だめだった。オールマイティな食パンだが、スイカは受け止められなかった。
まずスイカの水分が食パンに移って食感が悪くなった。それに加え、スイカの甘さと食パンの仄かな甘さが互いに歩調を狂わせる。
夏パン一号は失敗に終わった。だが、夏はまだ長い。次の夏パンを目指して食パンよ共に行こう。