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はっけんの水曜日
 
登山素人三人と富士山頂を目指した


待合室で合流。腰は大丈夫か。

8/7の朝、新宿に5人が揃った

ギックリ腰の報告を受けて三日後、整体と針治療でなんとか回復したと連絡があったので予定通り富士登山を決行することにした。ホントかよ、とちょっと思ったが。

8/7の朝、新宿の高速バスターミナルに全員が集合した。練習1回目の絶望から考えると格段の進歩だ。

遅刻してない!みんなちゃんと揃ってる!


この日の5合目行きバスは満席でした。

バスに乗ったらあとは勝手に河口湖五合目まで連れて行ってくれる。

徹夜での登山になるので出来るだけバスの中では寝るように、と言ったのだが、おおむね起きていたらしい。僕は隣が大きな外国人で、狭いシートにぎゅうぎゅうで辛かったがちょっと寝た。

徹夜登山は眠気との戦いになるので、移動中は出来るだけ寝た方が良い。


バスは一時間遅れで河口湖5合目に到着。天気も良く、最高の登山日和だった。

相変わらず元気そうな金子くん。バスで腰が痛くなった河合くん。

5合目でしばらく時間を潰してから登ります

新宿から約4時間。河口湖5合目に着いた。そこはすでにちょっと寒かった。長時間のバス移動で河合くんのギックリ腰がちょっとぶり返したらしく、「まっちゃん、腰いてぇ・・・」とうめいていた。大丈夫か。

聞いてみるとなんとか登れそうではあるので、このまま登ってもらう事になり、まずはお昼ご飯。着いたのは13時半だが、登り始めるのは15時半なので2時間は暇を潰さなくてはならない。

土産物屋の2階にある食堂へ。


河合くんは富士山カレーを注文。

福神漬けをのせて乳首カレーとか言っていた。ぎっくり腰への同情は無かった事にした。

保冷剤で冷やされたスニッカーズ。

余分な物ばかり持ってきている

ご飯を食べて時間を潰している時に持ち物の話になった。斎藤さんは行動食としてスニッカーズがお気に入りなのだが、温度が高いと溶けてしまうのでわざわざ保冷剤で冷やして持ってきていた。

登山では荷物を出来るだけ軽くしたいものだが、保冷剤だ。どこまでスニッカーズにこだわりがあるのだ。もし僕なら、ペットボトルの水を凍らせて保冷剤にする。これなら溶ければ飲めるから。

しかしスニッカーズという選択は良いと思う。高エネルギー体であり、バーになっていて食べやすいので行動食としてはピッタリだ。


酸素缶は意味がないと言っておいたのだが。

酸素缶は役に立たないって言ったよね?

でもって酸素缶。斎藤さん以外全員持ってきていた。高山病対策として酸素缶がよく売られている。5合目でも売られているし、山道具屋でも売られているし、山小屋にも置いてある。

でも実は酸素缶なんて気休めにもならないしかさばるばかりで酸素もろくに入っていない。富士山山頂の気圧は地上の2/3なので、地上での呼吸2回分と同じ空気を吸うには3回呼吸をする必要があるという事なのだ。だから、空気が薄くても、深呼吸を繰り返せば酸欠にはならない。

という説明をして、酸素缶は意味ないから買うな、持ってくるなと言ったのだが持ってきていた。多分不安なのでお守り代わりに持ってきたのだろうと思って、そんなキツクは言わなかった。


あともうひとついらないもの


1本1000円〜1200円。

富士山名物の金剛杖。山小屋で焼印を押してもらうあれだが、個人的には重くて長くて持ちにくいし、焼印を入れてもらったからなんだって気もするし、帰り道に電車で邪魔だし、家に持って帰れば長くて邪魔だし、他の山を登るときに使えるわけでもないし、あまりお勧めしない。

記念なら写真でいいじゃん。


どすこい金子。気合いが入って参りました。

15時半、出発

15時半になった。出発だ。山頂到着予定時刻は、翌日の朝4時。12時間以上を掛けて登る。なぜそんな長時間掛けて登るのかというと、理由は3つある。

一つ。早く登ると高山病になりやすい。急激に高度を上げると気圧の変化に耐えられなくなって高山病になりやすくなる。だから時間を掛けてゆっくり登る事にしている。特に8合目まで時間を掛けて登る。呼吸が乱れたら止まって整えるくらいのペース。

二つ。出来るだけ渋滞に巻き込まれたくない。富士山はご来光登山をする人がすごく多くて、時には9合目から山頂まで2時間かかる事もあるという。そんな渋滞に巻き込まれない様なペースを計算したらこんなスケジュールになった。

三つ。山頂に早く着きすぎると寒い。渋滞に巻き込まれたくないならちゃっちゃと登って山頂で日の出を待てばいいのだが、そうすると寒い。日の出前の富士山山頂は地獄の寒さなので、日が出るちょっと前に山頂に着くのがベストなのだ。渋滞に巻き込まれずに早く着きすぎない、というのが難しい。

これら三つを踏まえてスケジュールを計算すると、15時半出発朝4時到着という計画になった。

出発前に調子を聞いてみたので動画でご覧ください。僕は調子を聞いて大いに不安になったよ。



ゆっくり牛歩の歩みで登山道を進む。ガンガン抜かれていくけど気にしない。気にしちゃいけない。

無理にでもゆっくり歩くのが大事

さて、5合目を出発。6合目まで1時間かけて登る。登る、と言っても6合目との標高差は100mも無いので楽なもんだ。でも1時間かけてゆっくり歩いた。

ここで速く歩いてしまうと、この後のペースが速くなってしまうので、ゆっくりペースをたたき込むために何度も「早い!もっとゆっくり!」と注意した。

男だけのグループだとどうしても速く歩けてしまうのでペースが速くなりがちだけど、ゆっくり歩かないと早く山頂に着いてしまう。2回目の富士登山は男3人で登ったのだけど、サクサク登りすぎて深夜1時に山頂に着いてしまい、夜が明けるまで4時間、男3人で押しくらまんじゅうしたり寄り添ったりして震えながら過ごした。

今回は同じ轍を踏むわけにはいかない。寒いのは嫌だ。


5合目の時点で既に見晴らしが良い。

見晴らしが良い

富士山は独立峰なのでとにかく見晴らしはいい。眼科に広がる雄大な景色。曲玉のような山中湖が大きく見えた。

すると河合くんと斎藤さんは、「あー、釣りしてぇ」と言いだした。目の前に絶好の釣りスポットがあるのに行けないのが悔しいらしい。ホントにこの人たちは富士山に登る気があるんだろうか。

特に河合くんと斎藤さんは、隙あらばタバコを吸っていた(携帯灰皿持ってます)。で、息切れしただすと酸素缶で酸素を吸ったりしている。おまけに、

「まっちゃん、あんま意味ないわ、これ」

だから前からそう言ってるだろ!


いくら高山病になるぞ、って言ってもタバコを吸う。
タバコを吸って酸素を吸う。なにをしてるんだ、なにを。

斎藤さんもタバコを吸う。大変に美味いそうだ。

富士山で吸うタバコは美味いらしい

高度が上がると見晴らしも良くなっていく。6合目を過ぎて7合目に向かっている時もまた斎藤さんはタバコを吸っていた。

後にグロッキーになるのだが、この時点ではまだ元気だった。そんな、元気だった頃の斎藤さんを動画で撮ったので見てみてください。

本当に美味しそうにタバコを吸うから。



タバコって恐ろしい。


そろそろ行列が出来はじめる。7合目のちょい下から撮影。

山で食べるおにぎの美味しさといったら。

18時半、夕飯

18時半に7合目に着いた。予定通りのペースだ。広めのスペースを見つけて夕食にした。下界の景色、雲海、綺麗にたなびく雲と青い空を見ながら食べるご飯は美味しい。

まだ本格的に体調を崩してる人はいなかったけど、後で聞いたら露崎くんはこの辺で頭痛を感じていたらしい。経験者なのでてっきり平気なんだと思っていたら、高山病には弱かったらしい。思わぬ弱点だ。

夕飯を食べ終わるころ薄暗くなってきたのでヘッドライト(通称ヘッデン)を装着、夜に備えた。


本格的に日が暮れる前に装備をととのえる。

バッチリです。金子くんはこの後すぐ、暑いって言って半袖に戻った。

斎藤さんはいよいよヤバイ感じになっていく。

聞いてみると、斎藤さんは仕事のために前日の18時に起きてそのまま来たのだという。つまり、この時点で24時間以上起きているわけだ。そりゃ眠いわけだ。この辺から、休憩時間さえあればうつむいて眠るようになった。大丈夫か。

寝る斎藤さん。

少し登ると息が切れる斎藤さん。

それでもタバコは吸う。

そしてまた死にそうになる。スモーキー斎藤さんと名付けよう。

今のところ一番ヤバイのは斎藤さん。でも、ギックリ腰河合も密かに腰が痛かったらしい。露崎くんも頭痛がひどくなったのでこの辺でバファリンを飲んだと後で言っていた。

元気なのは、金子くんだ。


妙に元気な金子くん。

体力はあるのでとにかく元気。周りが厚着なのになんか薄着だし。全然寒くないっすよー、ダウンジャケットあるけど多分着ないから、河合さん貸しますよー、なんて言ってた。


山小屋前のスペースも人で溢れる。

そして、そろそろこの辺から本格的な混雑が始まる。上を見ても人だらけ、周りを見てる人だらけ、下を見ても人だらけ。

特に下を見たときのビジュアルショックは強烈だ。延々続くつづら折りの登山道に無数の明かりが見える。まるで、満月の夜に一斉に産卵するために集まるホタルイカの様に、明かりがたくさん見えた。


明かり一つ一つが全部人間。こんなに多くの人が夜間登山する山は他にない。

綺麗な夜景が見えました。花火大会も4カ所同時に見えたよ。

8合目を過ぎて、空気の薄さと寒さが本格化する中、5人中3人の調子が崩れ始めてきた松本隊。果たしてどうなる?!

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