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はっけんの水曜日
 
登山素人三人と富士山頂を目指した

維持するのにお金が掛るそうなので200円払う。どういう費用になるかは、なぞ。

23時、標高3200メートル

23時、予定通り8合目を過ぎて登り続けていた。標高3200メートル。海抜0mのとこよりも気温は19℃低い。下界が25℃だと3200mでは6℃だ。寒い。

寒いとトイレに行きたくなってしまうが、富士山のトイレは全て有料で200円かかる。以前は100円だったのだが、いつの間にか倍に値上がったらしい。

休憩やトイレを求めて山小屋周辺はもう、ありえないくらいの人でごったがえしていた。


高いけど色々売られてます。

富士山は大変に山小屋が多い山で、そこで色々売られている。だからお金があるなら食べ物なんかは担いでいかなくても大丈夫だ。ただし、8合目ともなるとペットボトル500mlで500円、バナナ1本150円、スニッカーズが300円、2本入りのカロリーメイトが200円と、下界の2倍から3倍、バナナは5倍程度の価格になる。

僕はお金が無いので水も食料も全て担いでいった。テント泊の装備なんかと比べればそれでも軽い。


「うん、全然効かないわ」って言ってた。だからそう言ってるだろう!

さて、松本隊はどうなったか?

日が変わって0時半、本八合目に着いた。標高3400m。

このくらいの時間になると僕も写真を撮るのが面倒になってきて、あまり写真は残っていないが、すっかり僕以外の4人は消耗していた。

左の写真では元気に酸素を吸っている金子くんだが、弱点である睡魔に襲われていた。休憩のたびに岩に横になって寝ていた。スリーパー金子と名付けよう。

9合目を過ぎたのは8/8の午前2時半。この辺りの事をみんなに聞いても、意識がもうろうとしていてよく覚えてないらしい。もう少しで山頂の鳥居をくぐれる、という時4人とも休憩中に寝てしまった。野垂れ死に寸前だ。

その様子を見て、こりゃ大丈夫かいな、と心配したのだが、心配してもしょうがないので「時間だ、起きろクソども」と蹴り起こして山頂を目指した。ここまで来たらもう登るしかない。

登山道では子供が動けなくなっていたり、深刻な顔で撤退するグループがいたり、戦場の様相を呈していた。なんて山だ、ここは。

そんな戦場に、下から押し寄せるようにヘッドランプが登ってくる。軽い恐怖を覚えた。


この光全てがヘッドラップの明かり。光の川が出来るほどの大混雑。富士山、恐すぎる。

明るいとこに写ってるつぶつぶはみんな人の頭。

午前4時、吉田口の山頂に着いた

午前4時、予定通りに山頂に着いた。山頂には山小屋が数軒建っていて、そこは人で溢れていた。大晦日のアメ横よりも、休日の渋谷よりも、隅田川の花火大会よりも、朝の通勤ラッシュよりも人口密度が高かった。とにかく人だらけだ。初めて登った5年前よりも、いや、3回目に登った3年前と比べても桁違いの大混雑だった。

そして、河合くんと斎藤さんとはぐれた。

ここにきて衝撃の展開だ。人が少ないポイントまで歩いて後ろを見ると二人がいなかった。


山頂にて、無数の目玉とカメラが東の空を見つめる。

まさかのはぐれエンディング

もう夜が明ける。でも全員そろっていない。山頂に着いて気がゆるんでしまい、パーティーがばらけてしまったのは僕の失敗だ。ここまで一緒に登ってきたのに、最後の最後ではぐれてしまった。

携帯に掛けてもつながらないし(後で聞いたら電池切れてたそうだ)、メールを送っても返信がない。困った。困ったけど、とりあえず日の出は向こうでも勝手に見てるだろう、と思って探すのは後にした。

はぐれちゃったものは仕方ない。これも後で聞いたんだけど、同じような事を考えてて、タバコ吸って時間を潰して日の出はちゃんと見たそうだ。


太陽が昇ると暖かくなるので嬉しい。
太陽に携帯やカメラをかざすという謎の風習を持った民族。

二人を探そう

太陽が完全にのぼって明るくなったので、河合くんと斉藤さんを探すことにした。電話はつながらないが、一応留守電やメールにメッセージを入れた。

とりあえず、混雑している部分を上から見て探すことにして改めて大混雑の山小屋前に行ってみると、そこには常軌を逸した人込みがあった。なんだこれは。核融合とか起こっちゃわないか。


尋常ならざる混雑。

こんな中から人間二人を探すのなんて無理だ、そう思って絶望していると、混雑の中から手を振る男が見えた。

あ、いた。


河合くんのミラクル発生率は高い。ミラクルを呼ぶ男だ。

あっさり再会できた

ウソみたいだがあの混雑の中、再会できた。僕は上下黄色のカッパという非常に目立つ格好をしていたのだが、それで見つけられたらしい。山ではやはり、ダサくても目立つ格好がいい。

再会も出来たし、混雑にもうんざりしたし、体力的にもみんな限界が近かったのでとっとと下山することにした。


下山は須走口へ4時間の道のり

よくあるツアーでは河口湖5合目から登って、下りも河口湖5合目に帰る。でもそのルートだとまた大混雑だし、僕は同じルートを歩くのが嫌いなので須走口へ下りることにしている。

砂走りという、軽く走って下れる場所があるのもいい。

とにかく延々下り続けた。


明るくなってもすごい行列が登山道を埋めていた。この人たちはいつ山頂に立てるのだろうか。

空気が濃くなって徐々に元気を取り戻し始めたメンバー。

睡魔に襲われている二人は、空気や高度関係なくつらそう。

金子くんは休憩したらすぐに寝た。

みんな限界っぽい

8/8の朝7時。標高3000mまで下りてきた。新宿を出てから20時間以上経っているし、起きてからは全員24時間以上経っているし、斉藤さんは36時間を越えている。

みんな限界なのか、座るとすぐに寝てしまう。でもまだ5合目までは標高差で1000m以上ある。

もうちょっとだけ頑張ってください。


横を見たら露崎くんも寝てた。
斉藤さんはカロリーメイト食べながら寝てた。子供か。

ようやく須走5合目の終点に着いた。終わった!

無事に終わりました

須走口下山道名物の砂走りを延々下りて、9時頃5合目に到着した。くだりは高山病の心配が無いので思う存分飛ばすことが出来、男だけ5人パーティーなのでやたら早く着いた。

御殿場駅までバスで1時間、そこから温泉まで無料送迎バスで30分。温泉に入ってご飯を食べて、さっぱりしてお腹いっぱいになったみんなは休憩所で寝てしまった。

そんな寝顔と富士登山の感想を紹介します。


女の子の霊は果たして昇天したのか。

斉藤さんの感想

七合目で吸った煙草の美味さは忘れられない!!でも美味しく吸えるのはここまでだね・・・。それより高い所では吸った後に地獄の苦しみが待っていたよ。反町隆史風に言うと「ポイズン!」(古〜!)。

愛煙家の富士登山はくれぐれも気を付けないとね。

そういえば何故俺が富士山に登ろうと思ったかって言うと、昔ある人に俺には女の子の霊が取り憑いていると言われたのがきっかけでして。その霊を祓いたいがどうしたらいいものかと素人が考えた結果が富士山。

天下のパワースポット様なら何とかその霊を成仏してくれるはず、北斗の拳のラオウよろしくその女の子の霊も天に還ってくれるはずだ!!と、バカバカしくも半分本気で思ったが故に皆を巻き込んでの富士登山になっちゃって、今更ながら本当ごめんなさい。

しかも結果としては、霊が成仏したかなんて俺に解るわけが無かった・・・残念。ただひとつ確実に言えるのは、一歩間違えたら俺が天に還っちゃうところだったということ。富士登山は本当に過酷なものでした。

これから富士山に登って霊を祓おうかなって思っている人はくれぐれも体力と装備は気を付けて下さい。


一番つらかったか、スマン。

露崎くんの感想

一番辛かったのは、みんなで野たれ死んでいた所かな(松本注:僕が起きろクソども、って起こしたとこ)。0時すぎたあたりで胃の調子が悪くなって、行動食も戻しそうだったのでやめてたら、体温上がらなくて寒いわ、眠すぎて意識も途切れ途切れだった。左手で壁を触りながら前の人の足元を見ながら足を進めるのがやっと。実はしばらく休んでいると起こる吐き気が一番きつかった。

なぜか歩いている間は大丈夫なようでその後は安定してたかな。山頂で豚汁飲んでだいぶ復活して、日が昇って暖かくなったのでかなり楽になった。

富士山は3度目だけど、その中で一番辛い山行だった。去年は麓の浅間神社から登っているのだけど、間に1泊入れた日中の山行に比べて、5合目からの夜間山行は疲労だけでなく睡魔と寒さが難敵だった。山頂での御来光は初めてで素晴らしかったのだけど、その時の登山客の多さにも驚いた。

それと、途中で見えた4カ所同時花火大会は感動した。離れた場所の花火大会を4カ所同時に、遥か眼下に見おろせたというその事実が富士山の凄さ、偉大さを実感させてくれるよね。あと天の川の星空や流れ星がすげーよかった。大学生の時みたそれと同じで安心したw。

でも、色々楽しかったけどもう富士山夜間山行だけは勘弁な。


いい顔で寝てますな。全員で寝たら寝過ごすと思って僕は起きてた。

金子くんの感想

景色は最高。経験として一度は登っておくべきだと思った。ただ、一度で十分とも思った。人生観も別に変わらない。眠いのが辛かったので富士登山はもういいんだけど、9月に会社の人と登る予定が・・・。

 

河合くんの感想

いや〜。やっと富士山企画終わったね。道具の買い出しから始まって、登山練習を経て長かったよ・・ホントに。軽い気持ちで行くなんて言ってしまったばっかりにとんでもない目にあったよ(涙)。

なにはともあれ無事帰還できて良かったです。軽く死にそうだったけど・・(笑)。なかでも一番きつかったのは最初の練習登山で綿シャツ着てって、皆にボコボコに攻められた事かな。山なめるな!とかね。精神的にきたよ(笑)。

肝心の富士山のときですがあまりの寒さと眠さで記憶がほとんどありませんw(°0°)wあはは。とまぁ長くなりましたが、最後になぞかけ!夏の登山とかけまして剣道の試合とときます。その心は!

「綿(面)には気を付けなはれや〜!」ではまた来年。


最後に感想の動画をどんぞ

山登りは下山して落ち着いて、回想するときが一番楽しい。下山して回想するために山に登るといっても過言ではない。

そんな回想の様子を動画で撮ったので見てみてください。


日の出目当ての富士登山は混んでて寒くて眠い

まだ元気な出発時の写真。

最初の全員遅刻や装備の問題、意識の問題があった頃と比べると格段の進歩というか、別人じゃないかと思うほど見事に富士山に登れた。無事に登って帰ってこられて本当によかった。

山登りはこうして友達と登って、思い出を共有できるのがいい。あの山はこうだった、こんなことがあった、というのがいいのだ。その思い出の価値と比べたら、実は山頂に立てたかどうかというのは些細な問題でしかない。

彼らが今後も山登りを続けてくれるかわからないけど、今度は富士山じゃなくてもっと登って楽しい山に誘おうかなと思います。じゃないと装備と経験がもったいない。


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