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ロマンの木曜日
 
河口から源流へ、四万十川を遡る

四万十川の源流まで、8kmを徒歩で行く

翌日、私は再び船戸集落へとやってきた。ここから四万十川の源流点である不入山(いらずやま)までの距離は8km。当然ながら、ここからは公共交通機関など無いので、己の足のみで行かねばならない。

この日も空模様は芳しくなく、いつ天気が崩れてもおかしくない状況であった。よし、雨が降り出してしまう前に、ちゃっちゃとゴールしてしまおう。


国道197号線沿いに、どでかく案内板がある
徒歩の私にとって、決して短く無い道のりだ

板を渡しただけの橋なんてのもあった。沈下橋の原型か

船戸集落は比較的規模が大きく、ちょっとした住宅街になっている。国道197号線が通って利便性が高い為だろうか、少なくとも大野見以北では最も大きな集落だ。

それにしても、ここまで来るともはや四万十川にかつての面影は感じられない。何も知らずに国道を走っていたら、この川が四万十川だと気づく事は絶対無いだろう。せいぜい「あ、沢があるな」程度で仕舞いであろう。


結構歩いたが、意外に結構奥まで集落がある
四万十川の水量は、既に申し訳程度

ここは棚田の眺めが非常に良かった

この棚田の集落を後にすると、道路は谷底を流れる四万十川から離れ、山の中腹を這うように進んで行った。川の水面は木々によって隠され、わずかに聞こえるせせらぎの音によって、下に川があると判断できる程度である。

道は益々山深くなり、既に人里の気配は感じられない。ただ時折、私と同じように源流点を目指す車が通り過ぎて行く為、これが正しい道なのだと認識できる。


この正面が源流店の不入山……だと思う
いよいよ残り2km。あと少し!

船戸集落から2時間程度歩いた頃、ようやく、残り2kmと書かれた標識にまでたどり着いた。

窪川で乗ったタクシーの運転手は、源流への道はとんでもない悪路のように言っていたが、道はそれほどまでに悪く無く、思ったよりも歩きやすかった。特に、この残り2kmの標識以降は、相当な険路と覚悟していたが、意外に普通で拍子抜け。

道路を良く見ると、路面の舗装は比較的新しいようである。割と最近になって、舗装された道なのかもしれない。


2kmの標識からさらに40分ほど歩くと、源流の碑があった

さらに急傾斜になった道をのろのろ歩いて行くと、「四万十川源流」と書かれた碑があった。やっとゴール……と思いきや、どうやらこれはまだ源流点ではなく、ここからさらに沢沿いの山道を15分程度登る必要があるという。

山道へ一歩足を踏み入れると、途端にひんやりとした空気に包まれた。滝のように流れていた汗が一気に冷え、涼しいというよりむしろ寒い。山内の石や木には苔がむし、地面も濡れていて滑りやすい。気を付けながら、進む。


ちょっと見ないうちに随分ワイルドになったな、四万十川
この標識が無かったら、道がまったく分からない

そうして……ようやく源流点に到着

源流点を示すポールが立っていた
河口から196km。長かった、いやぁ、長かった

四万十川源流の水はうまかった

いやはや、何とも感無量。ついに源流点までたどり着いた。

ここに立つ為に、河口から自転車をこいで、電車に揺られて、タクシーとバスを乗り継いで、そして徒歩で、遥々四万十川を遡ってきたのだ。久方ぶりに、何かを成し遂げたという充実感を味わった。

このせせらぎが、下流に行くにつれ無数の支流の水を集め、誰もが知る川幅の広い四万十川になるのだ。河口からここまで地続きで遡り、実感できたその事実。これは、ちょっとした感動だ。

ところで、源流点を良く見ると、水は上方から流れてきており、まだ先がありそうな気がする。岩の間から水が染み出てくるような、本当の源流点へ……いや、これ以上は道が無いし、岩も濡れて危険なので、深追いはやめておくとしよう。源流点のポールが立っている、ここが源流点なのだ。

帰り際、突然雨が降り出し、ずぶ濡れになった
縮尺とか、そういうのはテキトウです

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