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ひらめきの月曜日
 
おりがみ以外で折り鶴づくり


 

子供の頃、よく折り紙を折って遊んだ。母が折り方を教えてくれたのだ。

それだけだと普通のいい話だろうが、そのことをよく覚えているのは、妙な違和感の記憶とセットだからだと思う。折っている紙が正規のおりがみではなく、チラシを正方形に切ったものだったのだ。

特売の肉や牛乳が載っている紙で作る折り紙。折り上がった作品も、なんとなくせつなさ漂うものだった。

しかし考えてみれば、おりがみ以外の紙で折り紙をつくると、妙な雰囲気が出たり、意外とかっこよくなったりすることもあるのではないだろうか。幼少時の違和感を逆手に取って、やってみました。

小野法師丸



むしろおりがみじゃない方が楽しいかも

子供の頃によくした遊びのひとつ、折り紙。丁寧に紙を折っていく経験を通して、子供は手先の器用さを身につけたり、幾何学的な面白さを味わったりするのだろう。

それはそれでいい。ただ、個人的にそれが微妙にひもじい記憶となっているのは、折っていた紙が新聞の折り込み広告だったからだ。


ただのチラシでも正方形に切れば…
折り紙に……見えないな

家に正規のおりがみがなかったわけではない。ただそれは、気合いを入れて折るときの本番用ということで、特別なときだけ作るかしこまった紙だった。普段はあくまでチラシで練習。

そういう母の方針はわからないではない。ただ、できあがったものにどうしてもせつなさが漂うのは否めない。


よみがえるあの頃の記憶

当時を思い出し、チラシを正方形に切って折り鶴を折り始めてみた。ああ、こういう感じだった。なんとなく釈然としないまま手を進めていたのを思い出す。


あれ、意外と悪くない?
背中部分はタコ

思い出に浸りながら折り進め、しばらくして折り鶴が完成。漂うのはせつないムード…と思っていたのだが、なんだか結構悪くないではないか。

たまたま白・赤・黒が入った紙だったからか、なんとなく正月仕様の寿デザインに見えないこともない。そこに水色や黄色がランダムに混じって、模様として見ればトータルで面白くも見える。

思い出に反して意外な結果に。ならば、他にもいろんな紙で折ってみれば、変わった雰囲気や意外なかっこよさが出てくるのではないだろうか。

 

そういうわけで、いろんな紙で折ってみよう、まず手に取って見たのは、東京の地下鉄路線図。


これまでの人生で合計何時間見たことか

路線ごとにいろんな色の線が走っているのがきれいで、乗り継ぎを調べたりする以外にもなんとなく眺めているだけで楽しい路線図。これで鶴を折ったらどんな風になるだろう。


さわやかテイスト
顔の部分は北千住

白地にカラフルな線が流れる折り鶴ができた。羽根の片側は有楽町線、もう片側の半分から先が東京湾になっていて、なんとも涼やか。

背中の部分は日本の中枢、永田町。そして顔の部分は北千住など、何駅がどこに来ているのかを見るのも楽しい。

 

続いては家電量販店比べとしてみよう。ヨドバシカメラとビックカメラの対決だ。


モノトーンのヨドバシカメラ
カラフルなビックカメラ(この記事のズボンを再利用)

文字列が横にひたすら並んでいるというデザインそのものは、改めて見ると共通だ。ただ、色合いがずいぶん違うので、折り鶴にしても違いが出てくるのではないか。


大人ムードのヨドバシカメラ
鶴になってもビックカメラ

両方ともなかなかかっこいい鶴になった気がする。ただ、漂ってくる雰囲気はちょっと違う。

黒と白で、英字と楽譜が並ぶヨドバシカメラは大人っぽくてシックなムード。それに対してビックカメラは、鶴になって形を変えても、あくまでビックカメラだ。それぞれに持ち味があるではないか。


改めて感じる折り鶴のかっこよさ

 

続いては、過去の記事と関連させたテクスチャで作ってみよう。

ネジびっしり(こちらの記事より)
リアルな木目(関連記事)

ネジ工場の見学の際に撮ってきたネジの写真と、フリー素材集から拾ってきた木目の写真だ。折り鶴は紙でできているという感覚を揺るがすことにつながりはしないだろうか。

すごく変

ネジの写真は折っているときから表現しがたい違和感に襲われた。そこにあるように見えるのは金属製のネジなのに、サクサク折っていけるという現実が、頭の中に不思議なズレを引き起こす。

あっ、こうなってるのか!

一方、木目の方を折っていて発見したのは、折っている途中での紙の向き。なんとなくずっと木目の向きが揃ったまま折り進んでいくかと思っていたのだが、途中で垂直になる場面があった。木目があることで発見した折り紙の面白さだ。

変なのが生まれた
こっちはあり得るかも

しばらく折ってできあがる。ネジの方は見るほどに変なものができたなと思わせるたたずまい。金属の感じと折り鶴とが、頭の中でなかなか混ざってくれない。そこだけちょっとした異次元が浮かび上がったようにも感じられる。

それに対して木目の方はなんだかしっくり来る。木の皮をもし折ることができたなら、こんな折り鶴ができるんじゃないか、という感じだろうか。


変だなー

唐草模様は意外とかわいい

子供の頃のせつない経験を思い出してやってみた今回の折り紙。実際に折ってみると、それぞれ日常の中にちょっとした違和感が急に出現したようにも見えて楽しかった。

泥棒っぽくなるかと思って作ってみた唐草模様版は、予想に反して結構かわいい感じに。できあがってみるまでどんな印象になるのかわからないのも面白いところでした。


 
 

 

 
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