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ロマンの木曜日
 
号外を配りたい


結果的には会場を大混乱に陥れてしまった

大きな事件が起きたときやスポーツで大記録が出たとき、都会のターミナル駅前などで配布される号外。テレビのニュースで見たことのある人も多いと思う。

「号外でーす!」の声とともに掲げられる新聞に殺到して手を伸ばす群衆。数分で全てが配布され、周辺には紙面を見入る人々。配る人はさぞかし爽快だろう。あれをやってみたい!

しかし一般人が号外を配っても広告と変わりなく、街中では受け取ってもらえないだろう。そこで、完全ホームであるデイリーポータルのイベント、DPZエキスポの会場で配布することにした。

萩原 雅紀



号外出すには記事が要る

「エキスポで号外を配ろう」と思いついたまでは良かったけど、その後は内容をどうするかでずっと悩んだ。なにしろ、何も事件は起きていないのだ。


このまま作業が数日進まなかった
(ちなみにモニタ下のプレートは以前ダムで不要になったものをもらったものです)

数日悩んだ末、小説や漫画やドラマの名場面を、さも実際に起こったニュースのように書くことにした。

そう言えばダムの写真を撮ってホームページを作るずっと前、こんな感じの嘘ニュースを当時細々とやっていた自分のホームページに書いていたのを思い出した。もう跡形もないけど。

今回は嘘ではなく、誰もが知っていて、紙面を読めば元ネタが分かるものでなければならない。あ、これ意外と難しいかも。

そして、ようやく方向性が決まったところで最初に決めた見出しがこれ。


い、意味分かりますよね?

「徳川幕府、倒れる」とか歴史上の出来事をいろいろ考えたけど、ノンフィクションだとどうしても現実の時間軸上にあるので、いま号外を出すと意味が分からなくなってしまう。

フィクションならその点あいまいでもOK。ということに気づいて、一気に道筋が見えた。そしてその上を走るメロスが見えた!



メロスって妹の結婚式への行き帰りに走ってたんだ
コメントを小見出しに使うと新聞っぽさアップ

まったく前後の脈略なしに「メロス、間に合う」という見出しが気に入ったので、急いで太宰治の「走れメロス」を復習。内容をかいつまんで、新聞記事風の原稿に仕上げた。

なにしろ王宮の前で身代わりのセリヌンティウスさんが磔にされていたのだ。メロスが帰ってこなければ何の罪もない若者が処刑されてしまうのだ。帰ってきたところで自分が処刑されることが決まっているのだからそのまま逃げたに違いない。...きっと全国民大注目の話題だろう。もちろんメロスが戻ったというニュースは号外級だ。

しかしこれ、もしもいま「走れメロス」を読んでいるか、これから読もうと思っている人がいたら完全にネタバレだ。ごめんなさい。

これで何だか勢いがついたので、第二、第三の号外も作ってしまった。エキスポは6時間もあるので、およそ2時間おきに号外を配れる計算だ。



行方不明になった少女を無事発見、という号外
巨人が有望な新人投手を獲得、で号外

――4歳の女の子が「お母さんの入院している病院に行く」と言い残して姿を消した。姉(12)を中心に捜索するが見つからない。事故か、事件か。しかし、やがて自宅近くの森から出てきたところを無事に保護された――。ここだけ書き出すと、そのあたりで発生する日常的な事件のようだけど、この2枚目の号外は超有名アニメ映画のハイライトとなるシーンをニュースにしたもの。

子供たちから目撃例が相次いでいる「木の上で笛を吹く大柄な男」が事件の鍵を握っていそうだ。

3枚目の号外は、幼い頃から父親に強烈なスパルタで野球の特訓を受けた少年が紆余曲折の末に巨人に入団した、というニュース。僕はこの漫画をちゃんと見たことなかったけど、調べたらこの選手は高校中退して巨人入りしていることを知った。すごい。

というわけで「デイリータイムス」という名の号外記事が3つ完成。隙間には広告も入れて、あらかじめ用意していたわら半紙をセットした印刷機にかけた。


質感は本物っぽい!
自分の本の広告も入れた

よく考えたら号外に広告は入らないよな、と思ったけど、本物の号外を見たことないから新聞としてのリアリティーを追求。

印刷から上がった号外は予想以上に新聞っぽい!

俄然テンションが上がって当日を迎えた。


号外が出るまでヒマ

いよいよエキスポ当日。集合時間に会場の東京カルチャーカルチャーに到着すると、出店するライターの皆さんがいろいろ準備している真っ最中だった。



会場の東京カルチャーカルチャー
皆さん準備に大忙し

しかし僕はブースもないし、荷物は配布する号外だけ。楽屋に運び込むと、とたんにやることがなくなってしまった。仕方がないので、配布する記事の順番を時間をかけて考えてみたり、配布する練習をしたりしてみた。

みんなが守備につく間、ベンチ裏で素振りに励む指名打者の気分だ。



食材や調理器具など荷物いっぱいの玉置さんブース
僕の荷物はこれだけ(左のゴミ箱は違います!)

どういう順番にしようか...と考えるの5度目くらい
配布のイメージトレーニング

しかし、配布の練習はまったく役に立たないことをあとで知る。

そしていよいよ開場、デイリーポータルZエキスポがはじまった。するとあっという間に、会場内は来場のお客さんでいっぱいになった。

最初の号外配布は開始から約1時間半後なので、ここでも暇を持て余して会場内をふらついていた。当日のUstream中継を見ていた友人が「居場所なさそうにうろうろしていた」と教えてくれたほど。ブースがある皆さんが羨ましい。

そして、このお客さんの波を見ていたら、なんだかすごく緊張してきた。「号外でーす!」なんて派手に出て行っても誰も相手にしてくれなかったらどうしよう。この人波の中で孤立するのはつらい。

いてもたってもいられなくなり、まだ時間はあるけど楽屋に逃げ込んだ。


会場は大盛況
うーしゃ緊張してきたぞー

いよいよ号外配布!

楽屋で躁と鬱を繰り返していると、「号外行きましょうか」と声がかかった。いよいよ配布!

「メロス、間に合う」の記事を持って、楽屋を出ると同時に「号外でーす!」と叫んだ。そこまでは覚えてる。でも、そのあとの記憶がまったくない。

気がついたら楽屋から5mくらいの場所で、60部くらい刷ってあった号外がすべてなくなっていた。一瞬の出来事だったと思う。


ちょうどZくんの顔の下にいます
たくさんの人が集まってくれた

あっという間に最初の号外は配布終了。予想以上の反応だった。

緊張してたのと一瞬だったのとでほとんど覚えていないけど、なんだかすごかった。

ふらふらになって楽屋に戻った。


号外病みつき

その後、2回目に巨人入団、3回目に少女を保護の号外を配布した。

やや少なめに刷ったせいもあるかも知れないけど、号外を持って会場に出るごとに人垣に囲まれ、みんなが手を伸ばしてくる。

正直、これは気持ちよかった。爽快。サイン攻めに合うスターと似たような気分を少しだけ味わえた。


2回目は正面の入口から入ってみた
写真はすごいけど奪い合いもなく皆さん紳士的でした

テレビのニュースと同じように、背後から追いかける動画も撮ってもらったので迫力の映像をどうぞ。


どうしてカメラが落ちたのか知らない

木人拳状態(殴られたりはしてないけど)の3回目、「束で持ってかないでー」と連呼してた

こうして、無事にすべての号外を配布することができた。

配り終わってから周りを見ると、みんな紙面に見入ってくれていて、それがとても嬉しかった。普段自分の記事が読まれているのが数字上では分かるけど、実際に読んでくれているところを見ることはないから。



みんなが紙面に目を落としている
自分の記事が読まれているのを直接見られて嬉しい


実際に号外を配ってみて、ものすごい充実感と爽快感が残った。

記事が面白いかどうかは別として(そもそも号外に面白さはないし)、大勢の人が自分に殺到してくるのと、自分の記事を手渡しで読んでもらえるのとで、普段経験できない感覚を味わった。

来年ももしエキスポがあれば号外を配ろうかなと思った。今度はデイリーポータルの新作記事を号外にしたらどうだろう。

今回配布した記事は、ここでも公開しようとも思ったけど、やっぱり号外だから会場で配布した分でおしまいにします。

ご迷惑をおかけしました

会場で号外をもらってくれた皆さん、どうもありがとうございました。そのへんに捨てずにちゃんと家まで持って帰ってくれましたか?

それから、エキスポでこんなイレギュラーな企画をやらせてくれた編集部の皆さん、ありがとうございました。

あと、ブースを出していたライターの皆さん、会場が大騒ぎになってご迷惑をおかけしました。でも来年もやったらすみません。

小野さんとジャミラにもなれたし、個人的に大満足なエキスポでした

 
 

 

 
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