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クマゼミの最前線を見に行こう


勢力拡大中。

クマゼミというセミがいる。

かつては関東よりも南の地域に分布していたというこのセミ、今では勢力を伸ばしてずんずん北上しているのだとか。そしてその最前線が小田原から藤沢にかけてと聞いた。

クマゼミの前線基地を見に行こう。

安藤 昌教



とにかくでかいセミ、それがクマゼミ

まず、クマゼミとはどんなセミなのか。見たことのない人もいるかと思うので簡単に説明しておきたい。

特徴としてはまずでかいことがあげられる。5〜7センチくらいある。初めて見るとそのでかさに軽く引くかもしれない。

体は黒くて透明の羽根を持ち、シャアシャアシャアと信じられないくらいでかい声で鳴く。オスは捕まえるとものすごい大きな声を出すので注意だ(いまwikipediaでクマゼミの項を見たら捕まると「ゲー」と叫ぶって書いてあったがそれは本当)。

僕は愛知県出身なのだけれど、子供の頃セミといえばアブラゼミで、クマゼミはかなり価値が高かった。クマゼミを見つけると死んでいてもとりあえず持ってかえったほどだ。


アブラゼミは珍しくない。

そんな東海地方の子供たちに大人気のクマゼミだが、本来は西日本を中心に分布するセミで、これまで小田原市あたりが太平洋側の北限とされてきたという。

ところが近年、クマゼミはその勢力を徐々にのばし、今では先の平塚市、茅ヶ崎市、藤沢市あたりでも目撃されているらしいのだ。

クマゼミの前線基地は現在どこにあるのだろうか。まずはこれまで最北端とされていた小田原市から見に行ってきた。


というわけで小田原城へやってきました。
クマゼミ、いるかな。

小田原は、駅を下りるとセミの声

小田原のすごいところは駅に下りた瞬間からセミの鳴き声が聞こえるところだ。過ぎゆく夏を惜しむかのように電車の音に負けない強さで鳴いている。

さすがかつての最前線とでもいうべきだろうか。ここを拠点としてクマゼミは北へ北へと攻め上がったのかと思うと感慨深い。


セミって全身使って鳴きますよね。

しかしこの日小田原で見かけたのはほとんどがアブラゼミかミンミンゼミだった。すさまじいまでの大音響はほとんどがミーンミーンの大合唱で、クマゼミ特有の「シャアシャアシャア」は聞こえてこない。

しばらく森を探してみたのだが、結局クマゼミは一匹も見つけられなかった。時期的な問題なのか、それとも全軍で別の土地に攻め入っているのか。


ミンミンゼミはクマゼミににているけれど、体が小さいです。

はたしてクマゼミはどこへ行ったのか。

余談だけどいま記事を書きながらクマゼミについていろいろ調べていたところ、近年では光インターネットのケーブルをクマゼミが切ったりしているらしい。木と間違えて産卵管を突き刺すのだとか。インターネットがクマゼミによって遮断させられようとしているのだ。ますます放っておけない。

セミは川を渡れない

もぬけの殻だった小田原を後にし、ひとつ隣の平塚市へとやってきた。ここもやはり少し木のあるところへ行くとうるさいくらいにセミが鳴いている。


町には緑が多いです。
ということはセミも多いということ。

しかしここでもメインはミンミンゼミのようだった。ミーンミーンの大合唱に混じってツクツクボウシの声も聞こえる。ツクツクボウシの声が聞こえると夏も終わりなんだ、って思いますよね。

クマゼミは平塚市でも見つけられなかった。勢力拡大中じゃなかったのか。いったいどこへいったのか。

平塚市から隣の茅ヶ崎市へ渡るには相模川という大きな川を越えなくてはならない。クマゼミは長い間、この川を渡りきれずに茅ヶ崎市に攻めあぐねていたのだという。


そりゃそうだ、海みたいな川だもの。飛んで渡れないよな。
橋を渡ると茅ヶ崎市です。

相模川は橋ですら歩いて渡るのがたいへんなくらい広いので、クマゼミの軍勢がここを渡りきれなかったという話も頷ける。

ということはやはり茅ヶ崎市にもクマゼミはいないのだろうか。

僕は茅ヶ崎市に住んでいるのだけれど、近所でクマゼミの鳴き声を聞いたことはないと思う。どこにいるのだ、クマゼミ。勢力拡大の噂はまやかしで、本当は一斉に地下にでも潜っているのだろうか。


茅ヶ崎市の中心部にある中央公園。

木々の生い茂る茅ヶ崎市中央公園にやってきた。

かなり離れたところからでも公園全体が浮き立って見えるほどのセミの大合唱が聞こえてくるが、果たしてクマゼミはいるのだろうか。


ええっと、クマクマ。

いた。
いたいた。

いた。

この日初めてクマゼミを発見したのに、若干テンションが上がりきらないのは戸惑っているからだ。

なにせこの公園、クマゼミだらけなのだ。

独特の「シャアシャアシャア」という超音波みたいな鳴き声が会話も出来ないくらいに響いている。これまで見てきた他の公園とは明らかに様子が違うのだ。


どんどこ土から出てきているようでした。

小田原から兵を挙げたクマゼミは現在茅ヶ崎市に前線基地を置いていたのだ。しかも特にここ中央公園は全軍が集結しているかのような賑わいだった。

この公園にはアブラゼミももちろんいるのだが、鳴き声的には完全にクマゼミに制圧されていた。

この調子だとすでにこの先、藤沢市にもクマゼミは入っているのかもしれない。


藤沢市は陸続きだから攻め込みやすいだろう。

藤沢市にある県立辻堂海浜公園では今年の夏、大量のクマゼミの抜け殻が見つかったと報道されていた。つまりここまでクマゼミ網がやってきたという証拠だ。そしてそんなことがニュースになるくらい、クマゼミの侵攻はこの地域では話題なのだ。


とても立派な公園です。
海が近いのでサーファーがたくさん。でっかいプールもあります。

しかしこの公園、なんだか静かだ。

「…(しーん)」

そんなはずはないと森の中を歩き回ってみたのだけれど、見つかったのは控えめに鳴くアブラゼミとミンミンゼミだけだった。

クマゼミ、いない。


アブラゼミ。セミの写真がいちいちでかいのは撮ってて楽しくなってしまったからです。

クマゼミの侵攻に怯えるように寄り添うアブラゼミ。
こちらはミンミンゼミ。

こちらはカメ。
でかいカボチャ。この公園は見どころが多いです。

というわけで今回見て回った結果をマップにしてみた。


セミマップ。結局クマゼミは茅ヶ崎にしかいなかったので地図にするまでもないかもしれませんが、一応位置関係の確認のため。

クマゼミはいま茅ヶ崎にいます

他の場所ではほとんど見つからなかったクマゼミが茅ヶ崎の中央公園に集結していたのはなぜか。これまで攻めあぐねていた相模川を突破したにもかかわらず茅ヶ崎にとどまっているのはなぜか。

謎は深まるばかりだ。自分の家の近くだからよけいに気になる。

来年の夏はクマゼミはどこに現れるのだろうか。注目していきたい。


地面に落ちてるのもクマゼミだった。子供の頃の僕に見せてやりたい。

クマゼミの今後に注目です

前線基地かどうかはよくわからないが、クマゼミは茅ヶ崎の中央公園に大量に発生していることは確かだ。もちろん時期的な条件などによって、同じ地域でもセミの分布は変るのかもしれないけれど。

これからクマゼミはどこまで攻め上がっていくのか。ちょっと本気で見ていた方がいい気がしてきました。

すでに千葉や茨城での目撃情報もあるのだとか。

 
 

 

 
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