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フェティッシュの火曜日
 
「写真提供:アフロ」とは何か?


 

ここ数年でニュースや情報番組、雑誌などで「写真:アフロ」という文字を急に見るようになった。昔はあんまり出てなかった気するんだけどなあ…。髪型がアフロのファンキーな新進気鋭のカメラマンが世界中をかけずり回っているのか?それとも謎の黒人カメラマン集団か…。完全に文字からだけのイメージですが。ええい、ではアフロさん本人に尋ねてみよう!

大坪ケムタ



アフロの正体、それは意外とあっさりと

と、知らないようなフリしてますが、その正体はだいたいメドはついている。写真にキャプションがついているということは写真をレンタルする会社、いわゆる「フォトエージェンシー」の会社名がアフロに違いない。自分は前に広告代理店にいて、そうした会社の写真も扱ってたので何となく想像がつく。実際「アフロ」で検索すると最上位に出た。wikipediaの「アフロ」「上京アフロ田中」より上ですよ!


写真素材なら!まさにこのアフロに違いない。


そのくらいアフロ界ではトップクラスにメジャーなのだなあ。しかし前は「アフロ」って表記はテレビなどで見なかったような気がするのだけど…。なんで急に?ということでアフロさん(さん付けすると一気に親しみやすさが)におうかがいしてみることにした。


アフロさんの本社に来てみました!


しかも今回お話をうかがうのは青木紘二代表取締役。こんな取材にコンデジしか持ってないようなライターに対して代表自らとは申し訳ないです…。青木代表は同社の社長でありながら、現役カメラマンとしても活躍中。アフロさんから出版されているバンクーバー五輪の公式写真集などでも数多くのページにその名前が伺えます。

青木代表、わざわざ申し訳ありません!
現役カメラマンとしてこうした写真も。


さてまずは気になるテレビでよく見るようになった不思議を青木代表に聞いてみました。


「名前は昔から出てたんですよ、テレビも雑誌でも」

−−え、そうなんですか?おかしいなあ…。

「ただ、数年前から表記を『AFLO』から『アフロ』に変えたんです。そしたら目につくようになったみたいで」

−−文字を変えたんですね。

「日本人って目に入ってもローマ字だとついついスルーするところあるみたいなんですよね。私は昔から海外にいることが多かったので、最近まで気付かなかったし、こういうクレジットはローマ字表記が通例だったんです」

−−どうも脳が英語慣れしてないのか、パッと見ても海外の会社かな?て思ってそれで終わっちゃうんですよね。

「田舎の友達からも、表記をカタカナに変えた直後に電話かかってきましたから。『お前のところの会社、最近テレビに名前よく出てるね』って(笑)」



実際は前から出ていた!たしかに英語でAFLOだとオーガニゼーションナンタラ…みたいな略だと思ってしまいそう。一方、カタカナの「アフロ」だとあの髪型をイメージしてしまい、どこかモヤっと心に残る。それまで意識してなかった長い友人ですら気づかさせられるくらいの変化だもんなあ。

と、あっさりと理由はわかったのだけど、せっかくなのでアフロさんについて青木代表にいろいろおうかがいしてみました。詳しくは公式サイトにゆずりますが、設立は1980年。イメージ写真からニュース・スポーツ・エンターテイメントまでその取り扱いジャンルは多岐に渡ります。


「もともとフォトエージェンシーという分野は広告が主体で長年やってきたんです。うちの会社も最初は広告系だけでしたね」

−−企業のポスターやパンフで使えそうなイメージ写真ぽいものですね。

「ニュース系はAP通信やロイターといった世界の大手がいますからね。でも、自分でもニュースやスポーツも扱いたいと思ってたんです。それで91年からそういったジャンルも始めて、海外で撮影しては出版社に売り込むようになりました」

−−自社で撮影したものを売り込んでいくと。

「会社のカメラマンもいれば、世界中に契約カメラマンもいます。多い時は年に10ヶ月近く海外にいて、いろんな所撮影してたんで、そこでいろんなカメラマンと知りあうんですよ。それで自分で集めていったんです。そこでオリジナリティあるカメラマンと知りあえたのもあって、他にないタイプの写真が集まったんです。それがウチが伸びたきっかけですね」

−−今アフロさんの契約カメラマンって全世界で何人くらいいらっしゃるんですか?

「単なる契約なら1000人以上はいますね。たくさん送る人もいれば、たまに送ってくる人もいます。」

−−それに加えて、契約エージェンシーもあるんですよね。だいたい毎日何枚くらい写真が送られてくるんですか?

「平均して毎日2、3000枚は来ますね。時事ネタが入ると倍以上。それをエンタメやスポーツ、ニュースってジャンル別に選別する担当がいるので、そこでベストセレクションを選んで売り込む形です」



実際に我々が目にするのはたった1点でも、実際はひとつの事件でも何十何百という写真が送られ、そこから厳選されたものが候補として残される。それが毎日!撮るのも大変ですが、セレクトするのもかなり大変な仕事です。

また、事件やスポーツを切り取る写真のインパクトというのは今も昔も変わらないけれど、ジャンルには時代によって人気の差もある。そんなところも聞いてみました。


−−やっぱり扱う写真にも流行り廃りってのもありますよね。

「ありますね!会社を始めたころ熱かったスポーツはスキーとゴルフなんです。というのもわたしが元スキー講師で、ゴルフも一時シングルにいったくらい凝ってたんで力入れてたんです(笑)。でも実際に売り上げも良かったんですよ。特にスキーは冬の健全なスポーツの代名詞で、おしゃれなイメージもある」

−−ちょっとお金持ち感もあるし、イメージがいいですよね。

「TVから会社のイメージ写真とかまで、昔は10月くらいから街に溢れてましたね。95年まではスキーは伸び続けたんですよ。うちの写真の売り上げだけで豪邸建てたアメリカのカメラマンがいるくらいですから」

−−すごい!では最近で強いスポーツは?

「野球はなんだかんだ言って強いですよね。ただスポーツは全体的に落ち目です。日本で1位とっても誰も興味持たなくなってるじゃないですか。世界で活躍しないと」

−−たしかに…。ではアフロさんで撮影した写真で海外から引き合いが多かったものは?

「正直あまり多くはないんですよ。阪神の金本の連続出場記録みたいな、世界記録級の出来事じゃないと向こうから注文は来ないですね。イチローなんかは今でもコンスタントに売れますけど。石川遼も日本では勢いあるけど、世界的にはちょぼちょぼですよね」

−−政治関連はどうですか?

「小泉首相の時代は多かったですよ。やっぱり見た目に勢いがあるから引き合いがあるんです。あと鳩山首相に代わった時も少し。菅さんはあんまり(笑)」

−−なかなか日本発のもので世界に通用する人物や写真ってないもんですね…。

「日本から世界に発信できるコンテンツって意外と少ないんですよ。それだけ国際人が日本には少ないということですよね」


うーん、日本にいると世界で活躍するあの人やこの人!なんてニュースが流れてると「日本すげ〜」なんて単純に思ったりするもんですが、現実はそんな簡単なもんじゃない。対世界で仕事している人に聞くと分かりますねえ。

そういえばアフロさんの公式HPをよく見ると、こんな一文が。青ラインで囲んだ部分をご覧ください。


作品募集?自分の写真がアフロさんで売れるってこと?


ここにもあるようにアフロさんは現在抱えている契約カメラマンの写真だけでなく、広く一般からも写真を求めてるのだそう。写真展に通って新しい才能を見つけるのも仕事のひとつだとか。もちろんこうした応募も。

ならば、もしかしたらデイリーの写真も使えるのでは?世界に発信できるコンテンツあるんじゃないの?ということで勝手に7月の記事からセレクトして、いくつかの写真を青木代表に見ていただきました!


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