さくら餅茶漬け
日本人は食事を目でも楽しむ。そういう点から、ピンクの色彩が美しい「さくら餅」でお茶漬けにチャレンジしようと思う。
マホちゃんが「舌がおかしいんじゃないですか?」と、先ほどからしきりに、農作物を食い荒らすイノシシに怒る農家のおじさんのようなテンションで言い放つ。
だけれど試食会は続く。
煎茶をかけた後は、恨みでもあるのかと思うほどにぐちゃぐちゃに混ぜる。すると、このお茶漬けの場合はサクラフレーバーが弾け、早く食べたいと心が躍るお茶漬けになった。その横には、いっそ殺してという表情のマホちゃんがいる。
サクラフレーバーも相まって最高に美味しい。いままで食べた中でも一番と言っていい。甘いだけでなく、匂いもいい。もしこれが女性ならばモデル級だ。アヒル口で表紙を飾ること間違いなしだ。CDを出したならば僕は購入特典欲しさに10枚は買うだろう。
それにもともとさくら餅は御飯の中にアンコがあり、お茶と一緒に頂くと美味しい。それがお茶漬けになることにより、お茶もいっぺんに口の中に入れることができるわけだ。タイムイズマネーの現代社会に適した食べ物といえるだろう。
もう饅頭が恐怖のようでマホちゃんはお茶漬けに手をつけない。「饅頭恐い」という落語があるが、今回のマホちゃんの「饅頭恐い」は落語のようなとんちが効いた物ではなく、そのまんまの意味の饅頭恐いである。これはとても美味しいのに。
シベリア茶漬け
次は甘いものが好きな人にとっては夢の食べ物である「シベリア」でお茶漬けをしてみようと思う。シベリアとは、カステラとカステラの間に羊羹を挟むという常人ではなかなか思いつかない食べ物である。海外の甘さと日本の甘さが混ぜ合わされたとにかく甘い食べ物だ。
マホちゃんも弟もこの食べ物を知らないらしく、そのまま食べて「甘い!」と叫んでいる。確かに、大学時代の僕(オレのアートで世界を変える)のような大変な甘さがある。
煎茶を注いだ茶碗を見るとカステラから出た油が浮いている。歳を取るとこのお茶漬けはキツいかもしれないが、まだ25歳の僕が食べる分にはパワフルで甘く、とても美味しい。ビーチに立てたパラソルの下でピニャ・コラーダを頂いているかのようなお茶漬けだ。
僕は美味しいと思い、大変満足していたが、パティシエはマズい! としゃっくりも一発で止まるだろうという驚きを見せていた。いや、美味しいだろと僕が言うと、お前の舌はおかしい、と言う。それを聞いたマホちゃんは、さっきからユウ(弟の名前)の舌も十分おかしい! と怒っている。よし、このまま別れちゃえ! と期待した。