魔女だよ

食品メーカーに勤める傍ら、会社の休日には魔女として宅配の仕事もこなすこの方に密着しました。

ちょっとイメージと違う雰囲気だなと感じた方も多いのでは？
そう、ホウキがプラスチック製なんです！

扱いやすさや耐久性の問題に加えて、従来のホウキは先が抜け落ちやすく、異物混入の原因にもなるとして大口の顧客から使用禁止を求められる場合が多いそうです。

さっそくご依頼があった様子。なんでもミートパイだとか。

フワリと浮かんだ魔女。
時間の厳守は当然。物珍しさだけでは同業他社との競争に勝てません。
取材班も慌ててあとを追います。

魔女も暮らしづらい

慌てて追いかけたんですが、低いし遅いし、そんな必死になることもなかったようです。
もっと速く飛べないのか訊ねたところ、魔女の衝突や墜落事故が相次ぎ、近年いろいろな制限が設けられたとのこと。

「現在の魔女法では、公道で2mを越える高さで飛行することは禁止されてるんです。そもそも宅配中といった事情がなければ、勝手に飛行することも禁じられてるんですよ！」

なるほどそういった事情が。
魔女も暮らしにくい世の中なんですね。

寄り道だってしちゃうの！

先ほど話があったように、仕事中以外は自由な飛行さえ制限されてしまう昨今の魔女事情。なので時間が許せば、宅配中というのを理由に、ちょっと遠回りしてリフレッシュ飛行することも。

秘密の話だけど、人通りの少ない道ではスピード違反しちゃうことも！

休憩中に話をきいてみました

川をみながら休憩中のキキさんにお話をうかがってみました。

中華まんは、よく食べるんですか。

「そうですね」

中身はなんですか？

「トカゲの肉です。魔女はトカゲの肉しか食べませんから」

え、コンビニで買ってましたよね？

「魔女が暮らしやすいように、特別に仕入れてくれてるんです」

でも他の中華まんと一緒に並んでましたけど……

「いいかげんにしてください。これ以上そういうこと言うならべつに撮ってもらわなくたっていいんですよ。
アタシはトカゲの肉しか食べないし、RIKIは竹内力の双子の弟だし、それでいいじゃないですか！」

すみませんでした。
ところでキキさん、ここで少し踏み込んだ話をうかがいたいんですが、いいですか？

「どうぞ」

ちょっと根本的な問いかけになるんですが、その……キキさんは魔女ということでしたけど……

おっさん、ですよね？

「アタシにとって魔女っていうのはジェンダーを意味するものじゃなくて、言ってみれば生き方のジャンルですから。芸人とか歌手とか竹内力とか、そういうものと一緒なんです」

これ以上ない真顔でまくしたててきたキキさん。
「さてと」と立ち上がり、また仕事に戻ってしまいました。

すると大事件が発生！

ホウキが……！ 

「きゃあ！」

キキさんの悲鳴に駆けつけた取材班。なにかと思ったら、

なんとキキさんのホウキは牛が大の苦手。

驚きのあまり、キキさんの説明も聞こえない様子。

叩きつけられやっと静かになったホウキ。しかし、これで事態は収まりませんでした。

なんと、キキさんが飛べなくなってしまったのです。
動揺を隠せないキキさん。荷物はまだ残っています。キキ、ピンチ！

そのとき……

飛べ！　キキ！

傘です。
なにを思ったのでしょう、無言で傘にまたがるキキさん。

まさか！？　そんなことが可能なのでしょうか。

静かに傘に話しかけるキキさん。
果たして……

ひ、開いたっ！　やりましたキキ！！

キキさんに戻った笑顔。これで配達ができます。
よかったね、キキ！