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土曜ワイド工場
 
丸ノ内線に走り勝つ


おい、そこの赤いの、首洗って待っとけ!

地下鉄路線図は楽しい。眺めているだけで鼻息が荒くなってくる。

特に東京メトロで配布している「メトロネットワーク(簡易版)」はたまらない。適度にデフォルメされた路線のライン、カラフルな色使い。しばらく眺めているだけでトリップできる。

そんな路線図を眺めていてふと思った。「丸ノ内線になら勝てるかも」と。 勝てるかも。と思っちゃったので、競争してみました。

西村まさゆき



ショートカットすれば勝てるかも

まずは丸ノ内線の池袋・新宿間の路線の形を見ていただきたいと思う。


副都心線の上をトレースするようにショートカットします

丸ノ内線は池袋を出発したのち、東に向かって茗荷谷、お茶の水を経由して、その名の由来となった丸ノ内地区、大手町、東京、そして銀座を通って大きく西に旋回し、赤坂見附、四谷を抜けて新宿に至るのだけど、よく見ると大きく迂回している。

そこで、丸ノ内線の電車と同時に池袋を出発し、副都心線をトレースするように明治通りをショートカットして南下し、新宿まで全力疾走すれば、もしかしたら走って電車に勝てるのではないか?

いや、全力疾走しなくてもジョギング程度の早さで走れば電車より先に新宿に着くかもしれない。


ジョギングで35分
電車でも35分

地図上で距離が測れる「キョリ測」というサイトで池袋・新宿間の距離と走った場合の時間を測ってみたところ、明治通りを南下するコースだとジョギングで35分。 路線検索で、丸ノ内線の池袋から新宿までの時間を調べたところこれもなんと35分。いい勝負なのだ。

 

この脳天気さは一体どこからひねり出されるのか


写真を撮られ慣れていないことがよくわかるポーズ
電車を担当してくれる高多くん。はしゃぎすぎ

丸ノ内線と競争するにあたって、競争はなるべく乗客の少ない日曜日の早朝に決行することにした。平日の朝のラッシュ時を狙って、電車の遅延でタイムを稼ごうというよこしまな思いも一瞬脳裏をよぎったのだけど、やはりここは正々堂々と対決したいと思う。 そして、丸ノ内線の電車に乗って撮影を担当するのは友人の高多くんにご協力頂いた。

 

8:09 池袋をスタート!


階段を駆け上がるぼく
新宿で会おう

電車のドアが閉まる。高多くんは電車の発車とともに駆け出すぼくを撮ってくれていた。 丸ノ内線電車の新宿到着予定時刻は8時44分。 35分もあれば十分間に合うんじゃないか?と、この時はまだそう思っていた……。

 

8:11 まだまだ余裕


8:11 ぼく・池袋 電車・新大塚

がんばるぞ〜
電車は既に次の駅へ

階段を駆け上がり地下道を走るぼく。まだ余裕のよっちゃんである。その頃、電車は既に新大塚に到着。 ところで、書き忘れましたが、ぼくが白鉢巻をしているのは丸ノ内線の赤いラインカラーに対抗しての白鉢巻です。けっして病気の殿様ではないです。

 

8:15 しかし、運動不足のツケはすぐに出た


8:15 ぼく・南池袋 電車・後楽園

はい、もうバテた
電車は既に後楽園まで到達

たった6分。6分走っただけでこのザマ。ここ十数年来、運動らしい運動を何一つしてこなかったことの総決算が今ここに顕現しているわけです。

しかし、なんでショートカットで競争とか思いついちゃったんだろ……。数日前の自分を叱り飛ばしたい気分で胸が一杯。という顔です。

 

8:18 ジョギングする人たちの気持ちをちょっとだけ思い知る


8:18 ぼく・雑司が谷 電車・本郷三丁目

下り坂だ!やった!と思ったのだが…
電車は本郷三丁目を出発

千登世橋の陸橋が見えてきた。やった、下り坂だ!と思ったものの、実際下ってみると、なんか走りづらい……。スピードが出すぎてこけそうになるのを抑えて走るので、余計な負担が足にかかる。下り坂で喜ぶなんてのは、素人のあさはかで愚かな考えなのだ。

 

8:21 赤信号っていいよね


8:21 ぼく・高戸橋交差点 電車・東京

赤信号がうれしくなる
電車は折り返し地点の東京に到着

実際に走ってみるまで「いやー、歩道を走ると、途中の赤信号なんかがもどかしいんじゃないかなぁアハハ」などと能天気に考えていたことを、今、猛省することに。バテてくると、強制的に小休止できる赤信号がとてもありがたいもののように見えてくる……。このへんから思考がどんどん後ろ向きに……。

 

8:27 副都心線に誘惑されるが……。


8:27 ぼく・諏訪町交差点 電車・国会議事堂前

電車は既に国会議事堂前を出発

諏訪町交差点・新宿がはるか遠くに見える
邪悪な誘惑の口をあんぐりと開ける西早稲田駅の入り口

すでに疲労困憊のぼくは、ほぼ気力のみで走り続けていた。

そこに、副都心線の西早稲田駅の入口が目に入る……。ここで、副都心線に乗っちゃえば、新宿なんてあっという間……。 いや、駄目だ、そんな事をしても記事がしょぼくなるだけだ……変な誘惑に打ち勝ちながら、やっと諏訪町交差点まで来た。ちょうど真ん中へんだ。 しかし、その先の直線道路をみてちょっと心が折れそうになった。 実際の距離としてはそんなにないとは思うのだけど、交差点から新宿方面の消失点を見ると、とても遠くに思えるのだ。

ランニングは適度にカーブがあったり、景色がコロコロと切り替わるほうが走ってて気持ちがいいのだろう。皇居の周りをランニングする人の気持ちが少しわかったような気がする。

 

新宿駅まであと少し!ラストスパートを駆ける!

8:35


大久保二丁目交差点・「半死半生」という言葉を体現する男
電車は四ツ谷駅の屋外ホームに到着

8:42


花園神社前・この看板のおかげでいくらか息を吹き返した……(
その頃電車はすでに新宿三丁目を出発

「靖国通りまであと100メートル」……この時点で8時42分。電車の新宿駅到着は8時44分……。 これは!急げば本当に間に合うかもしれないっ!

 

ついに新宿駅到着!果たして結果は?


いつでも真剣です
新宿地下街の入口! あともう少し!

改札みえた!

この下に電車がきてるのか!?

電車は!いない……。

茫然自失

結局、間に合わなかった……。 電車は既に新宿を出発してしまっていた。 ホームに先に到着していた高多くんによると、2分ほど前に到着したのだという。あと2分、2分かっ!!

もうちょっと頑張れば勝てる、かもしれない

8:46 はい、チーズ。眼の焦点があってない。

最終的な電車のタイム差が2分ならば、途中歩いたりせず、もうちょっと頑張って走れば、あるいは赤信号のタイミングが合えば、間に合ってたかもしれない……。

実はこのネタ、打ち合わせのさいに企画案として持って行ったところ、すでにデイリーライターの吉成さんが過去にやらなかったネタとして出していた事が判明していた。 「やらなかったのならば、ぜひぼくにやらしてください」(性的な意味ではなく)と、ウェブマスターの林さんにお願いしたところ、吉成さんには快諾をいただいたようなので、今回ぼくが挑戦してみた。

正直、西早稲田あたりを走ってるときは、「これは吉成さんにやってもらったほうが、最終的に電車に打ち勝ち、読者のカタルシスを満たすことができるもっと面白い記事になったのかもしれない」とも思った。

しかしながら、走り切ってみると、最近全く運動しなかったぼくが、池袋新宿間を37分程度で走破できたというのはちょっとした驚きだったし、走ったあとの疲労感と、胸に去来するやりとげた感じは、なんだか気持ちいい。ということを知ることができたのは大きな収穫だった。

次は新橋・豊洲間でゆりかもめに……誰かやってください。


 
 

 

 
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