10月1日たばこが値上げになったので、15年くらい吸っていたたばこをやめることにした。そういう人も多いだろう。
でも禁煙なんてしたことないので、きっとやめられないにちがいない。そういう人も多いだろう。
いや、みんな本当のところどうなんだろう?
街の喫煙所には、10月1日から禁煙で人が少なくなり、きっと一週間もすれば人が戻ってくるのではないだろうか。
そんな「おれはそうなりそうだな」仮説を立てて、一週間喫煙所の様子を見てきた。
(大北 栄人)
ノーガード戦法でいく
やめるといっても、何か策があってやめるわけじゃない。
ただ値上げの午前0時が来たらやめる。ただやめる。はい、やめた。
これ、多分やめられないんだろうなあ、とひしひし感じるやめ方だった。
第一今まで禁煙なんてしたことない。何時間も吸えないなんて状況も海外への飛行機くらいしか思いつかない。
うわさに聞く禁煙はとてもつらそうだ。耐えられないにちがいないからもう今のうちに吸っておこうか。
こんにちは地獄
あ〜、もう吸えないのか。ええ!?ほんとにもう、吸えないの!?落胆と失望と驚きを繰り返している。
吸いたいときに吸えないのはまあ決めたことだからいいんだけど、え、でもこれから一生ってほんとに!?となぜか驚いてしまう。
つまり、禁煙をするとなんとなくバカになる。
その後は歯みがき後とか自分のお気に入りの一服タイムをやりすごすのがきつかった。
翌朝起きたら、猛烈にだるかった。さあ、体の異変もやってきました。足りてませんよ!さあ、ニコチンが足りてませんよ!
喫煙所を見に行こう
ひぃー、禁煙つらい。体がだるいし、足もふらつく。
ほんとにつづくのかこんなの。他の人はどうなってんだろう?と、いよいよ喫煙所を見に行く。
雨もあるだろうから、屋根があって人もたくさんいて…もろもろ考慮して「午後0時30分の新宿高島屋前の喫煙所に何人いるか?」を一週間チェックすることにした。
普通?
10月1日といっても買っておいたタバコが家にあったりして、あまり変わらなかったりするんだろうか?
この喫煙スペースは50人もいれば満員御礼の札が出そうなものだった。午後0時30分にいた人数は31人。
えーと、これはどうなんだ?今回の大ミスは値上げ前の様子を見に行ってなかったこと。値上げのタイミングに気をとられすぎて、比較ができない。
まー、大体こんなもの、くらいでいいんじゃないか。
喫煙所では当然たばこの煙を吸い込む。いい匂いだ、うらやましい。
土日はおやすみ
土日は人も増えるだろうし、カウントしてもしょうがないかなと思ったので行ってない。
禁煙二日目と三日目をたたかっていた。
三日が終わると少し楽
三日が終わると体のだるさもなくなってきた。その代わり、眠気がちょくちょく来る。でもそれは二時間おきくらいに起きてしまう浅い眠りでつらい。
禁煙の変化で最も大きかったのが、この睡眠の変化だった。
たばこやめたら、パニックになった
この土日色々あった。睡眠時のねぼけがひどくて、パニックになっては妻にいさめられていた。
昼寝をしていて、突然ガバッと起きては「やばいやばいやばいやばい…」とか「うわうわうわうわ…」と叫びながら部屋の中をうろうろしだすのだ。
その時のやばさは何とも説明しづらいのだが、現実ってやばい、みたいなことを言ってたのだと思う。
妻は「大丈夫だから、大丈夫だから」と何とか僕を止めていたが、これって「夕ごはんまだかい?」おじいちゃんとあんまり変わらない。
というか、禁煙ってこういうものなの!?
禁煙=妻を見間違えるもの
禁煙の副作用の一つに睡眠障害がある。眠い、よく寝られない、など様々あるが、僕はなぜか寝起きに横にいる妻の顔を見間違えるという症状にハマってしまっていたので、そこメインで脱ニコチンを説明していく。
妻の後頭部にブラックホールを発見
禁煙後5日目。寝ぼけはいまだつづく。
朝6時、徐々に明けていく視界には隣で寝ている妻の後頭部。ああ、後頭部だな、と思ってここまでは普通だったのだが、その後、「アッ!」と声が出た。
こんなところにブラックホールがあるぞ!の「アッ!」だった。
その時の僕は真剣で、なんでこんなところにブラックホールが?(※ブラックホールの知識も少年漫画程度しかありません)と困ったし、悩んだ。
悩んだ結果、ああ、ブラックホールじゃない、寝ぼけか、と分かったが、何が「アッ!」だ。たかが禁煙でこれはひどいじゃないか。
妻をお猿と間違える
禁煙後6日目。今日は、妻の顔を見て「こんなところにおさるさんがいるぞ」と不思議に思った。
妻はどちらかというと猿顔なので、合ってることは合ってるのだが、それでも猿ではない。
そうか。これは猿ではないのか。猿顔の妻なのか。と気づいてからはまた寝た。こういうのは決まって朝の6時くらいだということもわかってきた。
妻を山地と間違える
禁煙7日目。今朝は妻の顔を見て「山地だな」と思って寝た。
詳しく言うと、肌の部分が地図で言うところの山の部分に見えたということだが、説明するだけ無駄だ。とにかく山地だと思った。
さすがにこう毎日だと寝ぼけにも慣れてきたのか「まあ、山地だな」と思って寝た。別に妻でも山地でもいいじゃん、平地じゃないんだから。
いや、平地でもいい。地形と妻を混同させる禁煙ってやつはすごい。ああ、たばこを吸いたい。
妻を何かと間違えることに慣れる、飽きる
禁煙して一週間経って8日目。相変わらず、起き抜けに妻を何かと間違えている。しかしそれも慣れる。
今日も何かと間違えたと思うのだが、まあそれでいっか、でまた寝てしまった。そういう問題にも飽きてきたのだ。
たばこを吸わないことに慣れてきたら、今度は飽きてきた。禁煙に飽きたら、また喫煙か、そりゃ元の木阿弥だしどうしようか。
と思ってたら喫煙所にも人が増えてた。やっぱりみんな一週間くらいで禁煙にも飽きるんじゃないだろうか。
禁煙えらいですね、たいへんですね。そんな風に思ってたけど、実際にやってみるとやっぱりえらいし、やっぱりたいへん。
でもそのえらいは「奥さんの後頭部にブラックホールを発見するのってやっぱりえらいですね」だし、たいへんは「突然起き出してアワワワワワ!とか叫びながらうろつきまわって大変ですね」ってことなんだろう。えらい、とか、たいへん、なんて簡単な一言の真実はとっても意外だった。