デイリーポータルZロゴ
このサイトについて


土曜ワイド工場
 
夢に出てきそうな貝殻をふんだんに使った公園


全部貝殻です!

浜辺を歩いていると、貝殻が落ちている。
それらは美しい形をしていたり、キラキラと輝いていたりする。貝によっては耳に当てたくなるものもある。「あ〜海の音がする〜」なんて、僕は男なのだけれど、ひとりロマンチックなことをやってみたりもする。

貝殻のネックレスなんて物が売られていたりもするので、多くの人が貝殻を美しいと思っているのだろう。僕も美しいと思う。

そんな貝殻を、ふんだんに使った公園が愛知県にあるそうだ。高級料理と違い、ふんだんに使うのは貝の「身」の部分ではなく、殻の部分。

気になる、と言うことで行ってみることにした。

地主 恵亮



東京から内海へ

貝殻をふんだんに使った公園は愛知県の南知多町にある。ふんだんな温泉と、ふんだんな海の幸がふんだんに楽しめる町だ。これだけふんだんを使えば、かなり深みのあるスープでも出来そうな気がする。


金山駅から名鉄知多新線に乗り「内海駅」を目指す(僕の場合、実際のスタートは新横浜だけど)

目的の公園は「貝がら公園」と言い、名鉄知多新線の終点である「内海駅」からバスで15分くらい行って、さらに15分歩いた場所にある。僕は東京から行くので、ふんだんに時間がかかる。これもふんだんな貝殻を見るためだ。


名古屋にはふんだんにきしめんがあった!

僕は新幹線、JRと乗り継いで、金山駅から名鉄知多新線に乗った。金山駅からは1時間くらいの旅だ。乗客は最初こそ多かったが、窓の外の流れる景色に緑が増えるに連れ、だんだんと乗客は少なくなった。誰も行かないのだ、内海に。


そして、誰もいなくなった

やがてチラチラと、窓の向こうの街の向こうに海が見えはじめ、僕のテンションが高まった。僕は海が好きなのだ。

地元では「海=地主」くらいの勢いだ。
僕は海のような人間なのだ。ただし、いろいろな人から「地主は何か浅い」と言われるので、正しくは海の浅瀬のような人間なのだ、僕は。


内海駅は人が少ない

内海駅は「名鉄知多新線」の終点である。
ここからはバスに乗る。しかし、そのバスも2時間に1本とかしかない。ここでこそ、ふんだんに本数があってほしいのだけれど、ふんだんにあるのは待ち時間の方だった。周りにコンビニなども無いので暇だ。


ひ〜ま〜(南国みたいな木が植えられているけど、そこそこ寒い)

キラキラの海とキラキラしていた青春

しばらく待っていたら「海っ子バス」というコミュニティバスがやって来た。これで「半月」というバス停まで行く。もともとは半月に行く路線バスがあったそうだが、廃止され今はコミュニティバスが走っている。誰も行かないのだ、半月に。


海っぽいバス

バスは海沿いを走る。
秋の名残の日の光を反射して海がキラキラと輝いていた。冬までもう少しといったところだ。乗客は最初こそ数人いたが、やっぱりだんだんと減っていた。窓の外は平和な景色で、「こんなところに住みたい」と思わず口走ってしまう程だった。


平和な景色

僕のその言葉を聞いて、運転手さんが「いいところでしょ」と話しかけてくれた。いい人だ。

運転手さんは、昔からこの辺に住んでいて、子供の頃、夏は朝起きたらそのまま海に飛び込んでいたらしい。なんて田舎らしい青春だ、と思う。シティーボーイの僕には体験できない青春だ。


イルカだ!

「貝がら公園」に行ったことがあるかを聞いたら、中学生の頃に行ったな〜と運転手は言う。50代の運転手さんだからもう数十年も前のことだ。

「デートで行ったな〜」と運転手さんは続けた。
それを聞いて、急に「君は明日から地球を救うためにパンツのゴムを糸コンニャクに変えていく運動をするんだ」と言われたような気した。もう意味が分からない次元の話に聞こえたのだ。


半月に着きました

運転手さんは貝がら公園で、ダブルデートをしたらしい。
僕の中学時代はデートの「デ」の字も無かったと暗い気持ちになった。僕は帰宅部で、家に早々に帰ってはドラマの再放送を見ていた。ふんだんにドラマの再放送を見ていたのだ。思わぬところで「ふんだん」がまたやって来た。


バス停からは雰囲気がある道を歩く

公園の入り口へ到着(看板の字が薄い)


貝がら公園へ

入り口からは急な坂道を登る。
亀ならひっくり返り、ポパイならほうれん草を食べて超人的なパワーを必要とする坂だ。そんなアイテムがない僕はテクテクと歩くしかない。


写真では分かりにくいですが、かなり急です!

途中に児童公園があり、そこには草が親の敵くらいにふんだんに生えていた。もしこれが人間なら「剛毛」と呼ぶにふさわしいだろう。もう児童はもちろん大人も遊べなくなっていた。ほうれん草を食べたポパイなら遊べるかもしれない。


遊べない

児童公園を無視して山頂にある貝殻パラダイスを目指す。
ここを教えてくれた知人の話によれば、夢に出て来るくらいにふんだんに貝殻が使われているらしい。貝殻が出てくる、その夢はいい夢なのだろうか、それとも悪夢なのだろうか、悩ましいところだ。


灯篭が貝殻!

いい夢か、悪夢かを考えながら山頂に着くと、貝殻がビッシリとあしらわれた灯篭がまず目に入った。想像していた以上にビッシリだ。悪夢な気がしてきた。さらに進むと悪夢と決定づける鳥居があった。


はい、ド〜ン、悪夢!


あれも貝殻、これも貝殻

嫌な音を聞いた時に立つ、鳥肌のように鳥居が貝殻でデコレーションされたいた。貝殻が鳥居の鳥肌のように見えるのだ。

この後に分かるのだけれど、ここにあるおおよそ全てが、そんな貝殻の鳥肌を立てていた。すごい迫力だ。


ぞわぞわする!

神社の脇の細い道を進めば更なる貝殻ワールドが待っている。単体では綺麗な貝殻も、鳥肌のようにすごい数デコレーションされていては、こちらの鳥肌が立ちそうだ。

でも、面白い。怖いもの見たさだ。不味いと聞かされていても食べたくなるその心理に似ている。


大砲も貝殻

びっしり

景色はいい!

運転手さんは中学生の時にデートで来たと言っていたが、見晴らしは文句なしなので、デート向きなのかもしれない。貝殻もどちらかと言えばロマンチックな部類に入るはずだし。
ふんだん過ぎるのが玉に瑕だ。


休憩場も貝殻

ビッシリ!


芸が細かい!

一生分の貝殻に囲まれて時間を過ごしているが、どこか心が躍り始めた。竜宮城ってこんな感じなんだろうなぁ〜としみじみ思うのだ。何でも20年以上をかけて、この公園を完成させたそうだ。そのかいあって、芸が細かい(ダジャレです)。石に書かれた人の名前も貝殻で出来ている。


人の名前も

貝殻!

いい感じのお言葉が書かれている石で出来た看板みたいなものもあるのだが、それも貝殻がふんだんに使われている。メインの表より、裏の方が貝殻成分が多かったりと芸が細かい。5分遅刻しても怒られるなら、2時間くらいゆっくり遅刻して怒られよう、みたいな振り切れっぷりだ。


この文字も貝殻で出来ている

裏も貝殻で出来ている

貝殻の船に乗る

貝殻鳥居に貝殻大砲、貝殻休憩所など貝殻をふんだんに堪能してきたので、最後の貝殻に向かおうと思う。

最後の貝殻は展望台だ。
その展望台は船に乗っているのだ。船も貝殻で出来ているし、もちろん展望台も貝殻で出来ている。貝殻尽くしだ。


ド〜ン

ふんだんに貝殻成分が配合されている。もしこれがレバーならば当分貧血になることは無いだろう。ただし、ここが完成してからの月日を感じずにはいられない。燃えた船みたいだ。それはそれで味がある。


意外と楽しくて1時間以上滞在中!

階段を登り、展望台の上へと歩みを進めた。
展望台も貝殻尽くしで、自分のどこかの感覚が麻痺してきそうだ。ただ、そのおかげで笑えてくる。本当に来て良かったと思う。度が過ぎていて面白いのだ。お酒と同じで適度に酔ってもいいが、記憶を失くすくらい飲んでも、それはそれで楽しいのと同じだ。観光客等も全くいなくてゆっくりと満喫できた。


貝殻でいっぱい(もう景色とかどうでもいい)

足元も貝殻(台風の後みたいだけれど、そういうわけではない)

貝がら公園
住所:愛知県南知多町豊浜半月
アクセス:内海駅から海っ子バス「西海岸線」に乗り半月で下車
そこから歩いて15分程度
見学自由、無休、無料!

一度は見ておくべきだ

こんなにも貝殻を見ることはもうないだろうと思う。
今までだって、こんなにふんだんな貝殻を見たことが無い。もう圧倒的だ。もし貝殻に眠気を誘う効果があったなら、かなり深い眠りにつくはずだ。王子様のキスくらいでは起きれそうに無い。

とりあえず、人生で一度は行っておくべき場所な気がした。
キラキラと秋の名残の光を浴びて光る貝殻はとても綺麗で、まるで夢のような一場面だった。最初こそ、ふんだんな貝殻に悪夢な気もしたが、だんだん良い夢のような気がしてきた。

一生分の貝殻を見た

 
 

 

 
Ad by DailyPortalZ
 

▲デイリーポータルZトップへ バックナンバーいちらんへ
個人情報保護ポリシー
© DailyPortalZ Inc. All Rights Reserved.