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ちしきの金曜日
 
皿うどん概論


 

皿うどんと言えば、長崎で2番目に人気のある麺類だが(1番目はちゃんぽん)、そんな皿うどんに関して、ネット上で時折熱く論議が交わされているのを目にすることがある。

もっと多い例は、
「皿うどんに酢をかけるのはおかしい」
という議論で、酢ではなくソースをかけるべきというのが多くの長崎人の意見である。

次に多いのは、
「皿うどんはあんかけ焼きそばではない!」
という話。

いや、それよりも
「皿うどんはうどんじゃない」
ということの方が先ず突っ込まれるべきでは、という気もするが…

そんな皿うどんに纏わる幾つかの話題をお伝えします。

T・斎藤



皿うどんにはソースをかける

長崎人は皿うどんにソースをかけて食べる。
一方、関東では酢やからしをつけて食べることが多い。

「関東では」と書いたのは、私が関東出身で関東についてはわかるものの、それ以外の「皿うどんには酢文化」のエリアの範囲がわからなかったのでとりあえずそう書いた。

そして皿うどんの本場・長崎においては酢をかけない。

かけないが、リンガーハットの調味料置き場に酢が置いてあるのだから議論が巻き起こる。


長崎のリンガーハットにて。

長崎では皿うどんに酢をかける文化は無いが、そこにはちゃんと酢が用意されている。

コレ、私の解釈ではギョウザにかけるための酢ではないかと思うが、「皿うどんに酢をかける文化圏」の人たちがこれを皿うどんにかけても不思議ではない。そして、それを見た長崎人が
「ええ〜〜!酢ばかけると〜?」
と驚き、しばしばネット上の議論が巻き起こる、というわけだ。

なぜ、長崎で発祥した長崎名物である皿うどんが、他県に渡ると酢をかけられることになるのか?…と。

 

かけたものすべてが長崎味になる魔法のソース

その前に、長崎での皿うどんの食べ方について説明しておこう。

長崎ではソースをかけると言っても、トンカツソースみたいなドロリとしたものではなく、「金蝶ソース」という醤油のようなさらさらとしたソースをかける。


金蝶ソース

長崎で「ソース」といえば通常これを指す。

「かけたものがすべて長崎味になる」という魔法のソース。

皿うどんは甘めの味付けがされているので(というか長崎はすべて甘い味付けなので)、最初はその甘さを楽しみ、中盤以降ソースをかけ味の変化を楽しむ、というのが長崎での一般的な皿うどんの食べ方だ。

一方、関東では酢とからしを付けて食べるわけだが、これはこれでサッパリ感が出て私は好きだった。(「味の民芸」の皿うどんはよく食べた)

が、試しにリンガーハットの皿うどんに酢をかけてみると、これはちょっと違和感。。

思うに、デフォルトの味付けが長崎と関東とでは違うのではないだろうか?関東では酢や辛子に合うテイストに作られていたのではないかと…。

 

ややこしさに拍車

ちなみに、こういうのもある。


どっちなんだ?!


こちらは江山楼という長崎でもトップクラスに有名なお店で出てくる「ソー酢」。

長崎人からは 賛否両論で、特に酢否定派の人々からは批判の的となっているようだが、私は大好き。
色を見てもわかるように、ちょうど金蝶ソースと酢の中間のような味わいがある。

次に、皿うどんの麺について。

皿うどんはうどんじゃない

全国にうどんの名物は数多くあれど、
「麺がうどんではない」のは皿うどんくらいなものだろう。

皿うどんの麺は、大きく分けて
・太麺
・細麺
の2種類がある。

そのどちらとも「うどん」ではない。


宝来軒別館の皿うどん細麺。

こちらはマイ・フェイバリット皿うどんのひとつである、
宝来軒別館というお店の皿うどん・細麺。

細麺は、ベビースターラーメンのようなパリパリとした油で揚げた麺が特徴で、そこに野菜や肉、魚介類などが入ったあんかけ状の具が乗っている。


蕎麦よりも細い。

個人的に細麺はこの、麺がなるべく細いやつが好み。
「パリパリ」というより「シャリシャリ」するくらい細いのが好きだ。


リンガーハットの皿うどん太麺。

こちらはリンガーハットの皿うどん太麺。
具が上に乗った状態だと細麺と見分けがつかないが、具の下はこうなっている。

太麺はいわゆるやわらかいタイプの麺。

さらにこういうのもある。


江山楼の皿うどん太麺。

これは皿うどん発祥のルーツに迫るスタイルで、元々皿うどんというのは、ちゃんぽんの汁が少なめなやつを炒めて汁気を飛ばしてできた食べ物らしい。味もまさにそういう味がする。ちゃんぽんと同じ味付けで、麺に濃厚に汁の味が付いている。

ビジュアル的にも味的にも、同じ名前の料理とは思えないほど別物だ。(そして私はこのタイプの皿うどんが一番好き)

 

レアケース・中麺

ちなみに非常にレアだが、「中麺」というのを出すお店もある。


慶華園の特製皿うどん“中麺”。

こちらもまた私の大好きなマイ・フェイバリット皿うどんのひとつ、慶華園の特製皿うどん。これは幾つかグレードがある中でも最上級の“特製”だけあって、うまそうな具がふんだんに入っており、最高にうまい。


珍しい中麺。

ここは中麺というのが選べる。
中麺と言っても太さは細めで、店によってはこれを細麺と言って出してるところもあるだろう細さだ。

 

議論を呼ぶケース

長崎人の間で
「これは皿うどんじゃなーい!」
と議論になるのは、
・かた焼きそばの上に中華丼の具が乗ってるもの
に、皿うどんという名称が付いてるケースだ。

これは「皿うどん」というものの解釈の問題だろう。

皿うどんは、「うどん」と名乗っておきながら麺がうどんではなかったり、スタイルだって大きく3パターンほどあったりして一見フリースタイルっぽくも見えるのだが、長崎ではわりと厳密に皿うどんの定義があるように思う。

一方、長崎外(もう少しエリアを広げて九州外)では、もう少し広く解釈されているように思う。

 

スーパーで皿うどんに必要なものが揃うのは当たり前

最後に、家庭における皿うどんの位置付けについて触れておきたい。

皿うどんは、毎日の食事としてもごく普通に食べる。
必要なものはスーパーですべて手に入る。
私もよく家で作ってる。

作り方は非常にシンプルだ。


先ず、ベビースター・ラーメンそっくりのパリパリ麺をほぐして皿に盛る。

次に鍋で具材を炒める。

皿うどんの汁を混ぜ、あんかけを作る。これを先ほどのパリパリ麺にかけると…

皿うどん(細麺)のできあがり。

他におかずを作る必要も無いし、これだけで野菜もたっぷり食べられるという、なんとも都合のいいメニューだ。


子供ウケもいい。


余ったら冷蔵庫へ。
翌日のしなっとした皿うどんが好きだという人も多い。

また、お客さんが来た時に出前で取るという家も多い。
(出前については過去のこちらの記事参照)

太麺と細麺、どっちが好きか?という議論も長崎人の間でしばし繰り広げられる話題だ。

私は外で食べる時は太麺を頼むことが多い。
理由は家で作るのがいつもパリパリの細麺だから。

以上、長崎から皿うどん事情でした。


 
 

 

 
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