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土曜ワイド工場
 
日本一小さなネズミを探し出せ


 

「カヤネズミ」というネズミがいる。
日本で一番小さなネズミだ。その重さは「500円玉」と同じ。なんて小さいのだろうと思う。お財布に500円玉が2枚入っているとしたら、財布の中にそのネズミが2匹入っているということだ。財布を開ける度に癒されてしまう。

「カヤネズミ」は小さいだけではなく可愛くもある。
もしも「カヤネズミ」が女子高生ならば、クラスのマドンナ的な存在だろう。小さく可憐でか弱いのだ。男子からの人気は間違いない。

そんな日本一小さなネズミをぜひ見てみたいと思う。
調べてみると、東京にも生息しているそうだ。早速探しに出かけることにした。

地主 恵亮



日本一小さなネズミを探し出す

日本一小さなネズミ「カヤネズミ」は、地域によっては絶滅寸前にまで追い込まれている貴重なネズミだ。そんなネズミを探し出すのが今回の使命。東京では、あきる野というところに生息しているらしいので、早速出かけた。


ということで、あきる野にある秋川駅にやってきました

秋川駅の近くを流れている「平井川」の河川敷にカヤネズミはいるらしい。東京と言ってもこの辺りはのどかで、電車のドアも駅に着いたら勝手に開くのではなく、自分でボタンを押して開けるシステムになっている。旅行に来た気分になる。

もちろん、こんなにのどかな場所に来たのは、先に書いたように当てずっぽうではない。調査した結果なのだ。


「平井川に出かけよう!」という冊子にバッチリと、

「カヤネズミ」がいると書かれている(写真は載ってないけれど)

冊子に「いる」と書かれているのだ。
いることが分かれば後は楽勝のはずだ。「ウォーリーをさがせ!」みたいなものだ。いるのだから探せば見つかるのだ。

さらに図書館で「ウォーリーをさがせ!」を借りれば大抵はウォーリーにペンで丸がついている。カヤネズミにもしるしがついているかもしれない。楽勝モードだ。


平井川に到着

絶滅寸前のカヤネズミ

カヤネズミは、ススキやオギなどのイネ科の植物を使い巣を作り生活している。巣は直径10センチほどと決して大きくないが、カヤネズミ自身が小さいのだから仕方が無い。

しかし、注意深く探せば見つからないことも無いだろう。
推理小説のようにアリバイ工作などがあるわけではない。犯人はもう分かっているのだ。だから簡単なはずなのだ。


こういうところにいるはず

探す

とにかく探す

期待通りに見つからなかった。
カヤネズミの「カ」の字も感じないのだ。もしもこれがファッション誌ならば、モデル全員が裸みたいな感じだ。ファッション誌なのに服が一切ないのだ。

まぁ、それが女性向けのファッション誌ならば、男性からは楽しめるが、これはカヤネズミ探しだ。いない、では誰も楽しめないのだ。


ちなみにこの日は験を担いで、アンダーシャツ、ロンT、パーカーと全部ねずみ色で揃えてみました

モグラじゃダメか?

実はパンツもねずみ色なのだけれど、いくら験を担いだところで、全然カヤネズミは見つからない。ねずみ色に親近感が沸いてカヤネズミが出てくるのではと、バカとも言える淡い期待を抱いていたのだけれど、やっぱり単なるバカだった。それに、カヤネズミは茶色だった。


カヤネズミがいる平井川と近距離の畑で仕事をしている人に話を聞いた

河川敷の畑で仕事をしているおじさんに「カヤネズミいないですかね?」と「今オレの胸ポケットにいるぜ!」くらいの回答を期待する勢いで聞いた。答えは「知らんな〜」だった。

普通のネズミならいるけどな、と続け、さらに「モグラじゃだめか? そこらにいるよ」とお願いまでされてしまった。モグラでもいい気がする。カヤネズミと似たような色だし。


知らんな〜と言われてガックシ

他の人にも話を聞いたけれど、全員が「知らんな〜」という回答だった。困った。

「昔は見たけどな〜、最近は見ないな〜」なら分かるのだけれど、「知らんな〜」という回答だ。茶色くて小さくて、と説明したけれど「知らんな〜」だった。やっぱり珍しいネズミなのだろう。

この際、そこら辺にいる犬に個人的に「カヤネズミ」と名づけて、「カヤネズミ発見しました!」と言い切ろうかと考えたりもしたが、無理があるだろうとあきらめて帰ることにした。


デカいイオンはあった

日を改めてカヤネズミ探し


またまたやってきました秋川駅(変なポーズになっていた)

前回のカヤネズミ探しは見つからずに終わったが、あきらめられずに再度、あきる野を訪ねた。前回は闇雲に歩いて探したが、今回は待ち伏せ作戦で行こうと考えた。刑事の張り込みのようにじっくりとカヤネズミが現れるのを待つのだ。


と言いつつも、探してもみました

でも、全然いないのよ

ということで待ち伏せ作戦

イネ科が茂っているところに、チーズを置いた。
ネズミと言えばチーズだ。参考資料として、「トムとジェリー」を見たのだが、その結果、間違いなくネズミはチーズが好きだと言うことが分かった。えげつないほどにネズミはチーズが好きなのだ。「トムとジェリー」を見る限り。


チーズの盛り合わせだよ、さぁ、来いカヤネズミ

3種類チーズを用意して、なんとく箸も置いてみた。
ジェリーは手でチーズを食べていたが、あれはアメリカのネズミで、カヤネズミは日本のネズミなので、そういう文化を重んじるかもしれないと考えたのだ。自動車の運転と同じく、カヤネズミ探しも「かもしれない」を重要視する必要があるのだ。


寒い!(まったくカヤネズミよってこない)

今年のボジョレーも美味いらしい

1時間ほど経つがカヤネズミは現れない。
ただただ、チーズを見つめていると、何だか飲みたくなってくる。幸い暇だし、チーズは余分に買っておいたのでいっそ飲んでしまおうとワイングラスを取り出した。


美味しい

今年のミニッツメイドも相変わらず美味しい。
チーズとの相性も抜群だ。オシャレな味がするのだ。無印良品を好む女性が食べる朝食はこんな味だろうと思う。


毎年美味い!

食べ終えた後、何ひとりでミニッツメイドパーティーしてたんだろう…、と思ったけれど暇だからだった。ただ待つというのも退屈なのだ。全然、現れないんだもん、カヤネズミ。いないんじゃないのか、と思ってしまう。いや、きっといるはずだ。


やっぱりいないな…暇だな…寒いな…

日は傾き僕の影はどんどんと長くなった。
カヤネズミは現れない。カヤネズミの「カ」の字も感じないのだ。ただ寒いだけで、手ごたえと言うものをまるで感じない。

こういうテストを過去に何度も受けた気がした。英語のテストで14点を取った時もこんな感じだった。100点満点でですか? と逆に教師に聞いたくらいだ。

もちろん100点満点で14点だった。それと一緒だ。カヤネズミは見つからないのだ。


日も暮れたので帰る

見れればいいじゃん!

カヤネズミは見つからなかった。
さて、どうしたものかと落ち込んでいたら、動物園にいるらしい。ゾウ、キリン、ライオンに並んでカヤネズミもキチンと動物園にはいるのだ。

「じゃ、そっち見た方が早いじゃん!」と、僕はいつも通りの薄情で迅速な切り返しを見せた。カヤネズミを探しにあきる野に行った自分を全否定する切り返しだ。


動物園に来ました!

入場すると、サルやクマを無視して、カヤネズミのいる場所へと一直線に走った。象も無視した。動物園のアイドルである象もまさか無視されるとは思わなかっただろう。僕の視界には「日本一小さいネズミ」しか入らないのだ。


サルも無視して「カヤネズミ」へ!

いた〜! 日本一小さなネズミ!

日本一小さなネズミを見てテンションが上がった。
そのテンションの上がり様といえば、昇り龍を連想させるほどだ。小さな子供がその僕の様子を見て「龍だ…」と腰をぬかしていた、ということは全くなかったけれど、とりあえず僕のテンションは上がっていた。


しかし、日本一小さなネズミ「カヤネズミ」の隣が人気だ!

世界一と日本一

日本一小さなネズミの隣のブースが人気を集めていた。
何だろうと見てみると、世界一小さなネズミが展示されていた。日本一もすごいけれど、世界一はもっとすごい。宇宙一まで言われると、B級臭が漂うけれど、世界一だとすごく感じる。

実際に世界一小さなネズミはとても小さかった。
日本一のカヤネズミよりも2サイズくらい小さかった。そりゃ勝てないよ。


日本一の隣に世界一小さいコビトハツカネズミ

コビトハツカネズミかわいい〜!

日本一も十分かわいい!

世界一小さなネズミで満足しかけたのだが、これは天然では日本にはいない種だ。やはり日本にいるカヤネズミが見たい。ということで、さらに展示スペースの奥に足を進めた。するとそこには、大きくカヤネズミが展示されていた。


カヤネズミ天国!(一見どこにいるか分からない)

やはり日本一小さいネズミだけあって、限られたスペースで絶対に「いる」という状態でも、ちょっと注意しなければ見つけることが出来なかった。

そりゃ、あきる野では見つからないはずだ。
成人男性の親指くらいしかないのだ。親指を握ればカヤネズミを持っている感じが楽しめる。あくまでサイズ的なことだけだけど。


カヤネズミのアップ! 可愛い、とにかく可愛い! そのつぶらな瞳がたまらない

近くによって見たカヤネズミはとても可愛かった。やっと逢えたのだ。「会う」ではなくドラマチックに感じる「逢う」を使いたくなる感じだ。なかなか止まらないしゃっくりがやっと止まったような爽快感があった。そして、その可愛さにメロメロだ。記憶を失くすぐらい飲んだみたいにメロメロだ。


しっかり日本で一番小さなネズミと書いてありますよ!

 探し出すシリーズ1勝1敗1分

珍しい生き物を探すシリーズは今回で3回目だ。
一番最初は僕が個人的に自腹で北海道まで出かけた「ニホンザリガニ」だった。3泊4日で北海道に出かけ、ひたすら熊の恐怖に怯えながら山を歩いた。しかし結局、見つけることは出来なかった。

2回目は「マスクラット」。これは見つけることが出来た。僕の勝ちだ。
そして、3回目の今回が「カヤネズミ」だ。見つけることは出来なかったけれど、結局は見れたのだから、引き分けと言うことでいいのではないだろうか。

次は何を探そうか考え中だ。
その際には、最悪でもどうにか引き分けにまでは持ち込みたい。勝たなくてもいいから、せめて引き分けに…。

キュート!

 
 

 

 
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