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ロマンの木曜日
 
山崎蒸留所は酒飲みの天国だった


ウイスキー造りが見れる、ウイスキーが飲める

大阪と京都の境に、山崎という町がある。

山崎は長い歴史を持つ土地で、古くは平安時代より油の産地として栄え、戦国時代には豊臣秀吉が明智光秀を追い詰めた「山崎の戦い」の舞台にもなった。

そのような山崎には、ウイスキーの蒸留所がある。1923年に創設された日本最古の蒸留所、サントリー山崎蒸留所だ。何気なく目に留まり、ぶらりと立ち寄ってみたそこは、何とも愉快な酒飲みにとっての天国であった。

木村 岳人



目当ては千利休の茶室だった

そもそも私が山崎を訪れたのは、山崎蒸留所の為ではなかった。待庵(たいあん)という茶室を見学しに行ったのだ。

待庵は山崎の戦いの際に秀吉が千利休に命じて作らせた茶室で、その後に妙喜庵(みょうきあん)という山崎駅前のお寺に移築された(なお、待庵を含む妙喜庵の拝観には往復はがきによる一ヶ月以上前からの予約が必要なので、ご注意を)。


JR東海道本線の山崎駅
駅前のバスターミナル脇に妙喜庵はある

そして、これが千利休が作った待庵

待庵は千利休が完成させた侘び茶の粋とも言える茶室で、その広さはわずか二畳。装飾もほとんど無いに等しい質素かつ狭隘な茶室で、一説によると利休が秀吉の贅沢趣味をたしなめる為に作ったともいう。

じっくり待庵を見学することができ、私は非常に満足して妙喜庵を後にした。しかし時間はまだ正午過ぎ。日が落ちるまでに随分と時間がある。せっかく山崎にまで来たのだから、もう少し、何か見てから帰りたいものだ。

そう思った矢先、山崎に到着する寸前に電車の車窓から見た一つの光景が私の脳裏をよぎった。


たしかアレは、山崎蒸留所

山崎の戦いにおいて、重要な拠点であったとされる天王山(今でも、重要な局面などを「天王山」といいますな)。その麓にそびえる四角形の巨大な建造物。そういえば、山崎にはサントリーの蒸留所があったなぁ、と思い至った。

イギリスのスコットランドでは、スコッチの蒸留所巡りを目的に旅行している人も多いという。私もまたウイスキーが好物で、その製造にも大変興味がある。山崎蒸留所は見学を受け付けていたりするのだろうか。

陽気の中、爆音を立てて突っ走る貨物列車を横目に線路沿いを歩く。久方ぶりに太陽に干され、体がぼちぼち温まったなと感じた頃、茶褐色の建物がその堂々たる姿を表した。おぉ、電車内から見たあの建物だ。その入口には「見学受付」とある。


どうやら見学できるっぽい!

「予約とかしていないんですが」と受付の方に声をかけると、「それではこちらにご記入下さい」と紙を一枚渡された。到着したのは12時15分ぐらい。受付のお姉さんは「12時30分になりますので」と丁寧かつ愛想の良い声で言った。

なるほど、工場見学ツアーは30分に一度という頻度で実施されているようだ。予約無しの飛び込み参加もOK。見学の最後にはウイスキーの試飲もあるらしい。しかも、これがなんと無料だという。凄いな、至れり尽くせりだ。



あちらの建物でお待ち下さい、との事
まさに洋館という感じの玄関ホール

受付の手続きを済ませた後は、ビジターセンター的な建物へと案内された。「時間になりましたら館内放送でご案内がありますので、あちらの建物内でお待ち下さい」との事だ。

その内部にはサントリーの商品に関する様々な展示物が陳列されており、中には大正時代の古いボトルなどもあって、なかなか興味深い。



展示物の筆頭は赤玉ワイン。良いよね、赤玉(→参考記事
ラベルがカッコ良い大正時代の赤玉ワイン

こちらはウイスキーのボトル
古いものは見ているだけで楽しいものだ

ちなみにこの山崎蒸留所は、その名も「山崎」というシングルモルトウイスキーを造っている。モルトウイスキーというのは、大麦麦芽100%で作られるウイスキーの事。シングルモルトとは、一つの蒸留所で作られた原酒から作られるウイスキーの事だ。この蒸留所では、その製造工程を見学できるという。

程なくして、館内に「12時30分発のお客様は出発カウンターまでお越し下さい」と放送が流れた。見学を切り上げてカウンターに向かうと、10人位だろうか、結構な人数がそろっていた。



そうして始まる案内係のお姉さんの挨拶
工場に向けてぞろぞろと出発

赤茶色ではあるけれど、まぁ、割と工場然とした雰囲気ですな

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