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ロマンの木曜日
 
ダムの形式を解説します(人体で)

身体でダムを表現

組体操のように何人かでダムを造って、構造を表現することにした。

材料の強度とか重力とか水圧とか、いろいろ言われてもピンと来ないけど、身体にかかる力なら想像がつく。実際に、どういう理由でどういう力がはたらいて、そのダムが水をせき止めているかが直感的に分かるのではないかと思う。


「今日はダムになっていただきます」

というわけで、年末進行で超多忙の編集部から石川さん、工藤さん、安藤さん、橋田さんの4人に協力してもらった。僕を含めた5人で、今までダムを造ってきた役人や技術者をあっと言わせる説明をしたい。


「もっと腰を落として!脇締めて!」


重力式コンクリートダム

まずは日本でもっともポピュラーなダム形式、重力式コンクリートダムから挑戦。

前ページでも書いたように、重力式コンクリートダムの特徴は、

  • 主な材料はコンクリート
  • ダムの重さで水圧に耐える

という2点。さらに補足すると、「重さ」で水圧に耐えるのだから、ダムの下の岩盤もある程度強くなければならない。そして、水圧がかかっても倒れないように、ダムはどっしり安定していなければならない。


こういう、いかにもダム、という感じのが 重力式コンクリートダムだ

というわけで、簡単に言えば重力式コンクリートダムは「重く、どっしりと安定したコンクリートの塊」を造ればよい。つまりこういうことだ。


まごうことなき重力式コンクリートダム!
巨大な水圧にもびくともしない!
いいねーいいダムよー!

ここでの役割は以下の通り。


石川
コンクリート
工藤
コンクリート
安藤
コンクリート
橋田
貯水池の水
萩原
ダムマニア

...たぶん意味分からないと思うから解説しよう。

並んでいる3人はコンクリート。ちょっとやそっとの力ではビクともしない、どっしりとしたコンクリートだ。実際はこんなスカスカじゃなく、川幅いっぱいにみっちり充填されていると想像してください。後ろから橋田さん扮する貯水池の水が押しているけど、左足を斜め前に出して支えているから倒れないで安定している。2枚目の写真を見て分かる通り、断面は直角三角形なのだ。

これぞ重力式コンクリートダム!正面から見た姿なんてまるで宮ヶ瀬ダムのような頼もしさ!


仲良し3人組も心の目で見れば 高さ150m級の超巨大ダム!

ダムに見えるかどうかはともかく、重力式コンクリートダムの仕組み、理解してもらえただろうか。

「誰にでも分かる方法」などと言いながら想像力に頼っていることには目をつぶってください。


中空重力式コンクリートダム

重力式は、ある重さになるまでコンクリートを詰め込んでいけばいいだけなので、構造的に簡単で数多く造られてきたのだけど、それが許されない時代があった。1950年代から60年代、日本で高さが100mを越えるような巨大ダムが造られはじめた時代。

ちょうど高度経済成長期に差しかかり、コンクリートの価格が高騰。その結果、重力式コンクリートダムのコストも跳ね上がってしまった。そこで、コンクリートの量を減らすダムが開発されるようになり、その結果造られたのが中空重力式コンクリートダムである。ちなみにアーチ式コンクリートダムが造られたのも同じ理由だけど、それはまた後ほど。


外観は重力式とほとんど同じだけど 実は大きな秘密がある中空重力式

中空重力式コンクリートダムは、基本的な見た目や構造は重力式コンクリートダムと同じ。でも、ダムの内部に空洞を造ってコンクリートの量を減らしている。空洞ができて軽くなったぶん、岩盤と接する底面積を大きくして、抵抗を増やすことで水圧に耐える力を相殺している。断面は重力式の直角三角形に対して二等辺三角形に近い。


内部に巨大な空洞がある 断面はほぼ二等辺三角形

つまり、

  • 見た目は重力式コンクリートダムと同じ
  • 内部に空洞がある
  • 重力式に比べて底面積が広い
  • 断面は二等辺三角形

という点が特徴だ。それを身体で表すとこうなる。


間違いなく中空重力式コンクリートダム
違いを見比べるために重力式コンクリートダム
韓国アイドル顔負けのヒップダンス
両脚で踏ん張ることで水圧にも安定
中空の内部も激写!

もちろん役割は重力式と同じ。


石川
コンクリート
工藤
コンクリート
安藤
コンクリート
橋田
貯水池の水
萩原
ダムマニア

撮影当日は、底面積を増やす、つまり足のスタンスを広くしてもらうのをすっかり忘れてしまった。しかし、両脚で踏ん張ることで上体(=ダム本体)が安定していることが見てとれた。ダムで使う理論は人体にも適用できるようだ(適当)。

あと、重力式のときはみっちり充填されているはずだったけど、今回は中空なのである程度充填しつつ、ところどころに空洞を想像してください。

ちなみに、中空重力式は50〜60年代に集中して13基造られたけど、その後コンクリートのコストが下がり、逆に設計や施工の人件費が高くなったため、それ以降は造られることがなくなった。言わばもう過去の形式である。


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