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ひらめきの月曜日
 
世界一辛いきんぴらごぼう


確か1個80円ぐらいだったか?これを育ててヒーヒー言わすような何かが作れればと思っていた。

昨年5月のこと。たまたま前を通った花屋の店先でハバネロの苗が売っていました。「ハバネロって、あの凄く辛い唐辛子だよな。これを育てれば生のハバネロが手に入ってあんなことやこんなことが・・・」と考えるが早いか、苗を持ってレジに向かっていました。

そして、昨年夏は家のベランダでハバネロを育てていたのです。

馬場 吉成



割と簡単に育った

さて、買ったはいいが栽培方法が分からない。とりあえず、使っていなかったプランターに植えて栽培を開始しました。


土は前年にゴーヤを育てていて放置していたもの。そこへ石灰と肥料を適当に混ぜて再生。

その後、細かい栽培方法などを調べる事もなく、毎日水をやっていただけで順調に成長。


特に虫がつくこともなく、葉も青々として病気らしきものにもかからなかったので水をやる以外はほったらかし。

そして、6月の終わり頃には花が咲き、8月に入る頃には実がなり始めました。


ハバネロの花がこんな白い小さな花とは知らなかった。
この時点で一個食べてみたところ全く辛く無かった。

そして、8月の終わり頃には実が綺麗に赤くなり、あのお菓子の袋などに描かれるハバネロとなりました。


これが暴君ハバネロの素か。

こうして2つの苗から全部で20個ほどのハバネロを収穫。手間もかからずこんなに収穫出来るとは思いませんでした。

そして、実をそのまま生でかじったところ、先端部分はほぼ辛さを感じない。むしろほんのり甘いぐらいでした。おかしい、品種が違ったか?それとも熟さないと辛くならないのか?と、少しづつ食べ進めたところ真ん中あたりから危険を感じる程激しく辛くなる。

どうやら上から辛さが降りてくるようです。一口に食べてしまうのは避けた方がいいですね。

 

さて、どう加工しよう。


赤が鮮やか過ぎて雑貨屋とかで売っているオモチャのように見える。この状態だと特に強い香りもしない。

収穫出来たハバネロはそのまま食べる事も考えたのですが、なにしろ辛い。数もそれほど無いので何かに加工することにしました。

当初、乾燥させて砕いて粉にして一味唐辛子でもつくろうかと思ったものの、よくある唐辛子にくらべて実が厚く、特別な機械など用意しないと乾燥は難しいとの情報を得る。さてどうしたものかと考えこちらを用意。


スピリタス。アルコール度数96%。飲む酒としては世界最高のアルコール度数。これで辛さ成分を抽出。

スピリタスです。アルコール度数96%の世界最強の酒。唐辛子の辛さ成分であるカプサイシンは水には溶けず、油やアルコールなどに溶けるとのこと。

ならば、アルコール漬けにすれば実のなかの辛さ成分が抽出されて辛い調味料が出来るはず。唐辛子を泡盛に漬けた沖縄のコーレーグスみたいな感じです。どうせならその激しい辛さに合った最強の酒をということで、ハバネロをスピリタス漬けにしてみました。

 

危険な物が出来上がっていた

そして漬け始めて5ヶ月。コーレーグスは漬け始めて3週間ほどで使えるようになるところを、ハバネロなので長期熟成させてみました。

いや、その存在を忘れて放置してあっただけなんですけどね。それに先日気づいたわけです。とにかく出来上がったものがこちら。


赤い・・・

絵の具で染めたような妙に赤い液体が出来上がっていました。単にハバネロの色素が抜けただけとは思うのですが、その赤さに相当な辛さを想像します。そして、試しに舐めてみました。


舐めて大丈夫かね?

フタをあけると強いアルコールの香りがするだけで、目が痛いとか辛さを感じる感覚はありません。そして、ティースプーン1杯ほどを舐めたところ、こんな結果に。動画でどうぞ。


流しへダッシュ!

辛さを表す単位に「スコビル値」というものがあります。ウィルバー・スコヴィルという化学者が考案した単位で、水で何倍まで薄めれば辛さを感じなくなるかという数値。今は測定機で計測したカプサイシン量を換算して求めています。

そのスコビル値でハバネロはおよそ30万スコビル。タバスコがおよそ2000スコビルなので、その辛さは相当なもの。出来上がったハバネロスピリタス漬けがその値まで達しているかは不明ですが、少なくともタバスコを直接舐めるよりも数十倍以上危険な代物であることは間違い無さそうです。直接舐めてはダメ!

 

料理に使ってみよう

という訳で、出来たはいいが、コーレーグスのように直接料理に入れて食べるのは厳しそうなハバネロスピリタス漬け。さてどうしたものか。


ラー油ではありません。ハバネロスピリタス漬けはこういう色をしている。ラー油より辛い。

とりあえず料理に使ってみました。ピリッと辛くて旨いきんぴらごぼうにしてみます。かなり辛いきんぴらごぼうになるのか。


醤油大サジ2、砂糖小サジ1、ミリン大サジ1。そこへハバネロスピリタス大サジ1入れたら茶色く変色。ちょっと嫌な予感。
ゴボウと人参を炒めたところへ混ぜ合わせた調味料を入れて更に炒める。なぜきんぴらごぼうかと言うと、家にゴボウが沢山あったから。ただそれだけ。

出来上がったハバネロスピリタスきんぴらごぼうがこちら。


見た目は普通にきんぴらごぼう。香りもよくあるきんぴらごぼうと大差無し。

出来上がったきんぴらごぼうは見た目も香りも普通のきんぴらごぼうと変化ありません。流し台までのルートの安全を確保して食べてみます。


そのままはアレだけ辛かったからねー。油断出来ない。

あれっ?大して辛くないし、逆にコクがあって旨い!

予想に反してハバネロスピリタスきんぴらごぼう。それほど辛くもないし、コクのある後味があって実に旨いです。確かに、一瞬強い辛さを感じます。しかし、直接舐めた時のような刺激のある辛さではなく、とてもマイルド。

アルコールに溶けているので、強い加熱でカプサイシンが飛んでしまったのか、元と比べて不思議なほど辛くありません。これなら調味料としてアリです!食えそうもなかったら、野菜を栽培した時などに虫除けに使おうかと思っていましたが、これなら是非色々なメニューに使って行きたい。もっと作っておけば良かった。

 

ところで、世界一辛い唐辛子はどのぐらい辛いのだ?

と、ここで一つやってみたい事がでてきました。かつてハバネロは世界一辛い唐辛子と言われていました。しかし、現在は別の唐辛子が世界一とされています。それがこちら。


ブート・ジョロキアの一味唐辛子。100万スコビルの凄い奴。

ブート・ジョロキアです。その粉末を入手してみました。スコビル値でいいますと、100万スコビルを越えるこの唐辛子。単純にハバネロよりも3倍以上辛いことになります。


子供に触らせちゃ駄目だし、体調崩しても責任とれないそうな。

これできんぴらごぼうを作ったらどうなるか。世界一辛いきんぴらごぼうになるのか。それともマイルドに仕上がるのか。やってみました。


醤油などの分量は同じ。そこへブート・ジョロキアを小サジ1杯ほど入れてみます。
普通の唐辛子の一味でもこんなに入れないのに、勢いでいってしまった。この時点で既に鼻がムズムズしていた。

ごぼうとニンジンを炒めてそこへ混ぜ合わせた調味料を入れる。作り方はハバネロスピリタスきんぴらごぼうと全く一緒です。ところが、調味料を入れて少し炒めた時のことでした・・・

 

大惨事発生!

実は、ここから完成品となるまで写真がありません。写真撮影が出来なかったのです。

炒め始めて湯気があがると、突然激しく咳き込み、涙や鼻水が出てくる。そして、その状況を見てキッチンに近づいてきた妻も同様の症状が発生。恐らく湯気に混ざったブート・ジョロキアのエキスが目や鼻に入ったのでしょう。

ウィキペディアによると、護身用に使われる一般的な唐辛子スプレーは200万スコビルほどの辛さがあるそうです。それを数十倍に薄めて使用するらしい。ブート・ジョロキアを混ぜて炒めることで、ちょうど唐辛子スプレーをかけられたような状態になったようです。ブート・ジョロキア恐るべし!

とにかく、出来上がったブート・ジョロキアきんぴらごぼうがこちら。


赤いですか?涙で潤んでよく見えずにシャッター押してましたよ。

咳きや涙が止まらないですが、せっかく作ったのだから食べてみましょう。結果は見えてますが。


もはや武器だな。先っちょぐらいならなんとかなるか。

ゲホッ!ゴボッ!グエッホ!無理、無理!

唐辛子はなめてかかっちゃいけない

ブート・ジョロキア、殺人的な辛さです。誰だこんなもの食おうとした奴は。この後、出来上がったブート・ジョロキアきんぴらごぼうは3回ほど水で洗い、ダシで煮込んでから卵でとじて食べてみました。食えるレベルの辛さにはなったものの、それでも相当辛かったです。

恐らく、ハバネロも粉末を使用すれば、加熱してもカプサイシンが飛ぶこともなくかなり辛いきんぴらごぼうとなったのではないかと思います。もう試すことはないですが。

ただ、いつかブート・ジョロキアの苗を見つけたら育ててみたいですね。実が収穫できたらブート・ジョロキアスピリタスにする。多分それなら使えるかもしれません。粉は私には無理!危険過ぎる!

口を閉じてから保存袋に入れて2重にして厳重に保管しています。このままじゃ料理に使う気にはならないし、誰か使う人いるかな?それともティーパックみたいなのに入れてスピリタス漬けか。

 
 

 

 
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