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フェティッシュの火曜日
 
狭すぎる柔術道場


「くぅー、狭い!」 (とは言ってませんが)

愛知県豊橋にある八光流柔術豊橋同好会。その道場が狭いらしい。

強いとか弱いとかじゃない、狭いのだ。ひどい、柔術関係ない。

狭いですねー!と茶化しに行った道場で繰り広げられていたのは、あのバタンバタン人が倒れていくyoutube動画みたいな世界。

え、こういうことになってんの!?と、初めてだらけの世界で仰天した顛末をごらんください。

大北 栄人



一体どれくらい狭いのか?

練習は水曜、土曜の夜9時から。大体12時くらいまでやってるらしい。場所は豊橋から何駅か行った住宅地。夜なので静かだった。


道場の看板がかかっているが、長屋だ
中も土壁で長屋風だが

ストーブ?
テレビ?

あ、家だ。

奥にメインの六畳、手前の四畳半にも混んでるときは一組練習する。押入れや台所もある。

二間の家だ

奥に六畳間、手前に四畳半の二間。ストーブがあって、テレビがある。何だか家っぽいな。

この二間の広さ、うちと同じくらいだ。今度から「僕は柔術教室くらいの広さに住んでる」って言おう。

それにしてもあの…このテレビは?

「ああ、普段は道場のDVDを流してるんですけど、寂しいかなと思って(バラエティ番組をつけている)」と道場生の篠原さん。

やっぱり家だ。テレビがないと寂しいのは、家の感覚だ。


基本は六畳間

生徒は大体6〜9人くらい来るので、メインの六畳間に3組6人、手前の部屋にプラス1組2人が最も狭い時。それがこんな感じ。


これが最高潮。乗車率で言うと「肩が触れ合う程度、新聞が楽に読める」の150%未満、大体130%くらいか。ニュースになる帰省ラッシュの新幹線自由席がそれくらいだ。

成立背景が物悲しい

聞きしに勝る狭さ。そもそもどうしてこういう場所でやっているのか?

元々は藤原先生という方の下に集ってやっていたらしいのだが、当時の道場が火事で焼失。しょうがないので、格安で長屋を見つけてきて現在の形になった。藤原先生はその後お亡くなりになられたが、大家さんのご好意でそのままやってていいよ、という話になったそうだ。

火事と先生の死、こんな悲しい理由の場所を「狭いらしいですね」と見に来たらだめだろう。

ところが道場の方々は「狭い狭い」と笑ってらっしゃるので、見に行きたいと言っても、どうぞどうぞと招いてくださった。すみません、本当にすみません。


途端に、この狭さの中に哀愁を感じる

「思いっきり転がれたらなあ…」

広い道場だったらいいのに…なんて思ったりしませんか?と聞いてみると、

「あー、技をかけられたときに思いっきり転がってみたいですよね。」
「思いっきり転がれるとしたらどういう感じになるんだろうなって思ったりします。」という答えが返ってきた。

今思いっきり転がると、他の取り組みの邪魔になってしまうので、主に真下に倒されるようにしてるそうだ。なんだそれは。どういうことだ?


狭いところで人を倒す
大体これくらいの倒れ方をする

倒れ方に物件の間取りが影響するとは

そうか、これが6畳間の倒れ方なのか。技を超えたところに物件の間取りがあるのだ。

不憫だ。なにも好き好んで狭い道場構えてるわけではないのだ。全部貧乏が悪いんや…。(お話を聞く限り、そんな感じでもなさそうでしたが)

そして思いっきり技をかけたい、でなく、技をかけられたいという受身の精神。このあたりもただならぬ不憫さが漂う。(なぜ「かけられたい」なのかは後に分かってきた)


奥の部屋。広角レンズで広く見えるが、もっときゅっと狭い。

大阪も狭いらしいぞ

柔術の道場ってみんなこんな狭いんですか?と聞いてみたら、多分ここくらい狭いのはない、とのことだった。

ただ、ここ八光流の豊橋同好会が六畳間でやっている、との話を聞きつけ、大阪でも同じくらいの広さの新道場ができたのだそうだ。

「あの道場買ったんですって!?すごいなー」という話をされていたが、そんなことよりすごいのは狭さですよ、と教えてあげたかった。


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