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フェティッシュの火曜日
 
カレーうどんの中にとろろご飯


新幹線降りてすぐのぼり。豊橋での猛プッシュ具合がわかる。

突然ですが、カレーうどんの汁についてちょっと考えてみませんか。

うどん部分を食べ終わると、そこに残るはカレーうどんの汁。ふつうのお出汁より辛いのであまり飲まず、だからこそ妙に多く残ってる汁。でも辛いからこそうまいし、捨てるのが何かもったいない。

でもここにごはんがあったらどうだろう?

ごはんさえあればカレー丼になる!そしてそのカレー丼をアフリカの子供たちに届けられたら…これはすばらしいアイデアだ。

愛知県豊橋のカレーうどんは中にとろろごはんが入っているらしい。「あなたたちは絶対に正しい!」そう言ってあげたい。

大北 栄人



流行りのB級グルメで町おこし

駅についてすぐカレーうどんのノボリが目につく。流行らせてやろうという気概をひしひし感じる。そう、豊橋のカレーうどんは一年くらい前にせ〜のでみんなで始めたB級グルメなのだ。


スタンプラリー候補は45店舗。多いなー。
とろろごはんとカレーうどんはこのように層になっている

カレーうどんはうまい、と繰り返すおばあちゃんに出会った

地元のお年寄りに聞け

豊橋駅前のおばあさんに「カレーうどんっておいしいですか?」と聞いてみると即答で「おいしい。」という答えをもらった。

ほんとですか?と聞いても「おいしい。」という。あれ?なんかへんだな?と思ったら「カレーうどんはね、安いしね、おいしい。」と言う。

くわしく聞くと、豊橋はもともとうどんが名物でおいしい、だからカレーうどんもおいしいと、そういうことなんだが、こう言ってはなんだが、ロボットのようなのである。

夢のようであった。良いとか悪いでなく、おいしいロボットと出会った文字通り夢のような体験だった。


この老舗っぷりには盛り上がる
中には列ができてて、来てる人も驚いてた

老舗っぽいお店に

町おこしのB級グルメに老舗もなにもないのだが、勢川本店といううどん店としての老舗を訪れた。すでに店構えからして渋い。だってもう「老舗の味」って書いてある。

中に入ると、ちょうどお昼時だったので列ができてた。行列が珍しいようで、入ってきたお客さんから「わー、並んでる!」「あれだよ、B級だよ、B級」という声が上がる。

そうだ、これはB級グルメレポートなんだった。B級の何が悪い、今やB級こそが流行りじゃないか、と言ってもむだだ。豊橋にはすでにB級でない名物が存在しているのだ。


カレーうどん登場以前の定番、大根の菜っ葉ごはんと豆腐に味噌塗って焼いたもの。渋すぎる組み合わせ。

豊橋のB級でない名物「なめし田楽」

豊橋の元々の名物「なめし田楽」は、大根の葉を混ぜたごはんに、豆腐に味噌塗って焼いたものがつく。どうだ若者よ、息していいぞ。その渋さ加減に呼吸は止めなくてもいいんだよ。

そうなのだ、今まではなめししかなかったのだ。

ビートルズがやってきて、若者がエレキに狂ったとしてもその側にはなめし、電子音楽が盛り上がりもみあげを斜めにカットしてもなめし、ヒップホップの登場で音楽がライフスタイルを染めてもなめし。豊橋に来てもなめししかなかった。

だが、そこにカレーうどん。圧倒的なうまみ、若者が熱狂する刺激、歯の悪いおじいちゃんでもかめるうどん、男でも満足する量のごはん、思いつかないけど女は山芋!

カレーうどんの名物化は活版印刷ほどのインパクトだったろう。ただこれらすべて出鱈目なのが残念でならない。


カレーうどんきたよ

ぐだぐだ言ってるのはカレーうどんを待つ間だったからで。隣には、カレーライスとうどんを頼んでいる親子がいた。惜しいなあ。それ何か惜しいよ。


やってきたぞ。うずらがのっているのは特徴的だが、あとは見た目にふつうか。

ズー!しょ、しょっぱい!

うわ、意外な味!

やってきた、見た目は普通のカレーうどんだ。試しに一口すすってみると、うわ、すごい意外!しょっぱい!

なんだこれは。名古屋の名物ってたまに不意打ちのようにしょっぱいもの出てくるよな、と思ってたけど一店目でこれか、しかも名古屋じゃなくて豊橋じゃないか。なんだこれ。もしかしたらこれ間違いなんじゃないか?

お店の人が行列に泡くって塩加減間違えたんじゃないだろうか。でも考えてる間に塩加減に慣れてしまった。うまくなってきた、

いや、うまいよ、特に豚を食うとふるえあがるほどうまい。金掘り当てた感覚に近い。カレーうどん食ってるつもりが、ゴールドラッシュみたいになってきた。ジーパン履いててよかった。


飯が出てきたぞ
紙の前掛けがついたり、大量に発汗したり、とわりとモテない感じにはなる

とろろごはんのやさしさと、怪鳥化する私

カレーうどんをひと通り食べると、ごはんが出てくる。なるほど、最初からごはんを仕込んでおくことでこちらのおかわり罪悪感もゼロだ。

食ってみると、カレーの辛さに疲れてきた舌にとろろがやさしい。カレーライスよりもカレーうどんの方がやさしい味だけど、これはもう一段階やさしい別の食べ物だ。

ああ、うまい。味も変わってレンゲが進む。クワッ、クワッ、クワッ、とカレーをかっこむ私は今、怪鳥だ。

ケツァルコアトルス、史上最大の翼竜の名は、アステカの神ケツァルコアトルからきている。両翼を広げると12メートルにもなる巨大な体躯で、実際に空を飛べたのか謎に包まれている。どうなのだろう?飛べたのか?

そんなことは知らん。カレーうどんを食べ終えた私は今、怪鳥でもなんでもないからだ。うむ、うまかった。


ごはん段階になると福神漬が投入される。うまい。もう一店行こう。

ココイチに行くには豊橋駅から路面電車に乗る

観光案内もおすすめしづらいチェーンカレーうどん

この勢川本店は観光案内所の人におすすめしてもらったものだが、逆におすすめされなかったものがある。それがココイチだ。

せっかく来たんだから老舗っぽいところ行こうよ、ということを婉曲した表現で教えてもらったのだが、やっぱりココイチにも行きたい。

実はこの豊橋カレーうどんには「自家製麺であること」という縛りがある。ココイチはカレー屋なのに、カレーうどんのためだけにわざわざ麺打ってるのだ。

カレー盛るだけの簡単なお仕事だと思ったのに…うどんを打ちながらバイトも悩んでるにちがいない。そりゃ行ってあげないとかわいそうだろう。


トッピング全部もりみたいなの頼んで1000円くらいした

土日はお昼で売り切れる人気メニュー

カレーうどんは一日限定20食なので、土日ならお昼で終わってしまうほどよく出るそうだ。訪れたのは土曜午後2時頃だったが「今日は珍しくまだあります」と運良くありつけた。

このカレーうどんのためだけに自家製麺を開発…そんな新聞記事が飾られていた。これだ。自家製麺なんですって?と聞くと、「ええ。」とほんとかと疑いたくなるほどほどあっさりした答えだった。

もうちょっと大事に扱おうよ、その自家製エピソード。親戚とか集まる場で話したら絶対受けると思うよ。


チーズ、コーン、半熟玉子…トッピングがものすごくココイチっぽいよ

BGMがカラオケみたいで驚いた。自社ソングだろうか?

カレーライスよりうまい

たしかに和風だしの柔らかさはあるかな、という印象はあるが非常にココイチ味。ココイチはやはりココイチ味。ものすごい安定感。

噂の自家製麺は食べてみると驚くほどふつうである。あ、わしらカレー屋なのにふつうのうどんを作ってしもた。そんな感じの麺。つまりはがんばりすぎちゃったのだろう。

だが飯部分になるとスパーク。はっきり言ってココイチのカレーライスよりうまい。チーズもコーンも甘い。カレーのうまみと辛味と、それらをとろろがうまく媒介しててボンッ。

ねるねるねるねのねればねるほど色が変わった後に煙が出るように、私の舌もスパークして満足。今のところ豊橋カレーうどんはココイチが一位。

このごはんタイムは「鍋のしめ」みたいなものか

唐突に柔術教室の記念写真を入れてみよう

「なめし田楽」の正体

この日豊橋の柔術道場にお邪魔したので道場生の方にもカレーうどん町おこしのことを聞いた。

「はいはい、やってますよね、でもね、まだ食べたことないんですよー。」と、存在はもちろん知っているがまだ未体験なんだそうだ。地元のものって大体そんな感じだろう。

なめし田楽が名物だったんですよね?あれはどうなんですか?
「あー、あれはね、はい。めちゃくちゃ旨いです。」

え?めちゃくちゃ旨い?豆腐焼いて味噌塗ったものですよね?
「はい、めちゃくちゃ旨いです。」

あれ定食で1500円とかするし高いですよねー
「高いですよねー。でもめちゃくちゃ旨いです。」


三店目、こちらもうどん屋さん。そろそろ違うものを食いたくなってきてる。

「母さん、若い人来たから翼の折れたエンジェル」

どういうことだこれは。アミノ酸含有率やスパイスの刺激、どう考えても食べ物の地力はカレーの圧勝だろうと思っていたが、どうやらちがうようだ。

なめし田楽のその渋すぎる佇まいにへらへらしていたが、どうやら「めちゃくちゃうまい」そうなんである。(ほんとか!?)

さあ、三店目。東京庵ときわ店は、うどん屋とはこうだ、という渋い店構え。だが私の後からも若い人たちが続々と入ってきている。B級グルメ、ほんとに流行ってる。

うどん屋に若者が来てるのはちょっと非常事態な感じはする。『翼の折れたエンジェル』が店内でかかっている。一店目のしょっぱさしかり、なんかてんてこまいな感じがするのだ。


豊橋カレーうどんはうずら以外の具が自由。ここは鳥と玉ねぎにんじんねぎ糸唐辛子…ポイントとして赤汁を使うらしい(赤醤油で作ったお出汁)

ここにきてエプロンが不織布になり高級感アップ

三店目にして降臨

やっぱり一店目の塩加減はまちがい!食べてすぐスタートのつまづきを思い出したのだが、まー、これがうまい。うどん屋のカレーうどんってうまいよなー。っていう真っ当なうまさ。

唐辛子は辛いけど、玉ねぎが甘い。あー、うまいよな。誰もいないのに、同意を求めてしまうときってないかい?ないかい?っていうのも自問自答なのだけども、ひとりメシはとにかく自問自答の連続だ。

そんでこの鳥もすばらしいんだよ。見てみぃ、皮のとこ最高だよ。これが映画だよ。パッチギいわしたるんだよ。

ひとりメシの自問自答時に誰かが憑依してくることってないだろうか?僕は調子いいときなぜか井筒監督がぶわっと降りてくる。


もうごはん部分が楽しみで仕方ない

あー。うまい。ちょっと、ごはん持ってきてー…って叫んでみたけれど、も、あるー♪ここにあるのだよー♪

慣れてきて、この辺りのごはんにとりかかる流れは心が躍りミュージカルになる。そしてこの後はお楽しみのケツァルコアトルスタイム、と思ったらとろろがうまい!

何か唐突にとろろのことが出てきたがとろろがちゃんとカレーを受け止めてて超マイルド。鼻から抜ける芋の香り。これはあれだ。店によってとろろの量にばらつきがあるのだ。ここにきて初めて「とろろ」の味がわかった。

どうやら豊橋カレーうどんは普通のうどん屋の地力勝負だ。ケレン味は要らない、ただ普通にちゃんと作ったものが勝ちなのである。


カレーうどんがうまいと、このメシ部分のテンションも上がる

四店目。
カレーうどん。(飽きてきている)

飽きてるのに、うまい

明けて二日目、雪が降っていた。豊橋に来てからカレーうどんしか食べてないのだが、せっかくなのでカレーうどんを食べて帰る。

4店目もうどん屋さん、玉川。口の中が食べる前からもうカレーうどんで、前の店を超える自信もないので、味の詳細は省く。

わかったことは不織布のエプロンが出てきたらとろろもちゃんと量を盛っててアタリの店。そういう店はうどん屋に多そう。

そして今日もうまいということもわかった。二日目でこっちの口が疲れてても、そんなことおかまいなしにうまい食べ物なんだよなーと思った。飽きてるのに、うまい。けど、飽きてる。そんな旅の疲れ方。


このマイルド部分、テイクアウトしたい

二日目の朝、ホテルから出て雪道に疲れスターバックスでコーヒーを飲んでいるとき、今日もカレーうどんを食うんだなと思った。多分二日目でもうまいんだろうなと思った。そして食った。やっぱりうまかった。

だが、何か心にもやもやしたものが残った。カレーうどんはうまい。想像通りうまい。非の付け所もなく、思い残すことは何も無い。思い残すことといえば。

そうだ、なめしである。

あれだけ力のあるカレーうどんを差し置いて居座り続けるなめし田楽。地元民をして「めちゃくちゃうまい」と言わしめる力はどこにあるのだろう。菜っ葉メシと味噌豆腐。定食で1500円とかして高いですよねー、と言っても「でもめちゃくちゃ旨いんです」と言っていた。ああ、気になる。

大根の葉と味噌と豆腐でそんなうまいわけがないや…と前フリ口調のまま家でおみやげセットを食べてみたのだが、やはりそこまでうまいわけでもなかった。やっぱりそんなわけないのだろう。また豊橋に行くまでこの前フリは続行する。

菜めし田楽おみやげセットを買って帰って家のごはんで食べたのだが、やはりよくわからなかった。

 
 

 

 
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