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はっけんの水曜日
 
伊那の人はローメンを食べる


これが勧められたローメン。店によって全部味が違うらしい。

長野県の伊那というところにいってきたのだが、案内をしてくれたIさんに「おいしいローメンの店にいこう」と誘われた。「ザザムシが平気なら大丈夫!」だそうだ。

ローメンといえば、ウェブマスターの林さんが「ローメンの真実」という記事で、「町おこしにひと役買わない味」と評した謎の料理である。何度か伊那にきている同行カメラマンも一度食べて懲りたらしく、「夕飯はローメン以外にしよう」といっていた。

それでも地元の人が強く勧めるローメン、一体どんなものなのだろう。

(text by 玉置 豊 photo by 坂 祐次



本家で修業した店、天壇へ

伊那は天竜川沿いに位置し、その山に挟まれた地形から伊那谷とも呼ばれている。ローメンを出す店はこの伊那谷という狭い範囲に固まっており、谷を出ると一気になくなるという、B級グルメという言葉が生まれる前から存在するローカルフードだ。

やってきたのは伊那の繁華街にある天壇という中華居酒屋。ここは林さんが食べたローメンの元祖である萬里で18年修行した方がやっている、伊那在住のIさんイチオシのお店だ。


元気なかあちゃんローメンあります。一見するとローメンの専門店。
ローメンで町おこしをしようと伊那商工会議所が「ローメンズクラブ」というのを作ってがんばっているみたいです。

店の入口にはローメンという単語がいくつも並んでいてローメン押しなのが伝わってくるが、一歩中に入るとローメンは数あるメニューの中のひとつでしかないことがよくわかる。

この店ではローメンは締めに食べるものらしいので、とりあえず伊那名物のおたぐりなどを食べながら、かあちゃんやお客さんに話を伺ってみることにした。


「無口で静かなかあちゃんです!」と元気にあいさつされた。
奥の方が案内をしてくれたIさん。手前は以前に別の店のローメンを食べてガッカリしたカメラマンの坂さん。

馬の腸を味噌で煮た郷土料理の「おたぐり」。クセがなくてうまい。馬もつ焼きの「馬ん馬ん」もあるよ。
萬里からローメンの味だけでなく、強精剤みたいな酒を出すというところも受け継いでいる。アラフォーカメラマンが頼んだが、「変化がなかった」と翌朝寂しそうにつぶやいた。

 

ローメンとはなんぞや

ローメンは伊那のご当地麺料理。かあちゃんの話によると、ローメンは昭和28年からあり、伊那の名物として認識されるようになったのはここ15年くらい。伊那では昔から普通の食堂でもだいたい出していて、いくつか専門店もあるようだ。

ローメンのややこしいところは店によって味も作り方もバラバラなこと。肉はマトンがオリジナルなのだが、臭みがあるので豚や牛、ラムなどを使う店があるし、スープ風と焼きそば風というお粥とチャーハンくらい違うものがどちらもローメンとなっている。伊那の人に言わせると、「ローメンはローメン」らしいのだが。


スープ風はラーメン、焼きそば風は焼きそばじゃんと思うのだが、ローメンはローメンらしい。こちらでパンフレットのPDFがみられます。
最近ではクセのあるマトンを使う店の方が少ないらしい。

起源についてはいろいろな説があるようで、屋台で安くてお腹いっぱいになるものを考えたところ、蒸し麺とマトンを使った料理ができあがったとか、製麺屋が消費拡大のために考えたとか、聞く人によって違う答えが返ってきた。

商工会議所などがパンフレットを作ったりして地元を盛り上げようと頑張っているが、常連さん曰く「盛り上がっているとかじゃなくて、定着している」そうだ。

 

作り方が意外過ぎるローメン

一通り飲んだり食べたりしたところで、締めのローメンを頼み、作り方をみせてもらうことにしたのだが、これが実に意外な作り方だった。ちなみにこの店はスープタイプ。

まず油をひいたフライパンにマトン、焼きそば用の麺、キャベツ、キクラゲ、特製のタレ、豚の頭などでとったスープを入れる。ようするに材料全部である。


冷たいフライパンに肉を入れるというのが斬新。麺は伊那でしか売っていないという焼きそば用の太麺を使う。
麺もキャベツも火をつける前に入れていく。店によって作り方が違うらしいので、あくまでこの店のローメンの作り方です。

醤油にリンゴ、ニンジン、タマネギなどが入ったかあちゃん特製のタレが味の決め手。
タレをお湯で薄める店も多いらしいが、ここでは豚の頭や昆布でじっくりととったスープを加える。

そして全部を入れてから、初めてコンロに火をつけるのだ。そして蓋をして煮えたら完成。盛るのはどんぶりではなくて平皿。

なんだかすごいでしょう。どこの国かはさっぱりわからないけれど、なんとなく異国情緒たっぷり。

蕎麦屋でいう「抜き」みたいな、麺抜きで作る「ローサイ」というメニューもあるのだが、それはもはや肉野菜炒めだ。炒めてないけど。


麺というのは熱いフライパンで炒めるか、お湯で茹でるかするものだと思っていたが、冷たいスープから煮込むという方法もあるんですね。
本当にこれで完成。材料を入れて火にかけただけ。見た目は食べたことないけど長崎の皿うどんみたいだ。

ローメンはもともとチャーローメン(炒肉麺)という名前だったのだが、いつのまにかチャーがとれてローメンとなったらしい。しかし、かあちゃんが修行した元祖の店と基本的に同じ作り方ということは、最初からまったく炒めていないということか。

あとから誰かが焼きそば風ローメンをつくって炒めるバージョンが誕生したらしいのだが、そのころにはチャーローメンではなくローメンという名前が定着しているというミステリー。

ああモヤモヤする。

 

マトンが臭くてうまい

できたてのローメンを食べてみると、マトンが大丈夫かどうかで評価が分かれそうな味がした。私はとっても好きな味。ジンギスカンからあふれ出した汁で麺を煮込んだような感じといえば伝わるだろうか。北海道で売れそうだ。

特製のタレとスープ、そしてマトンの臭みを吸いこみまくった麺が抜群にうまい。このなんだか元気が出そうな味はマトンだからこそ。案内してくれたIさんが、風邪を引いたときにここのローメンが食べたくなるというのがわかる気がする。


ニンニクやゴマ油などを入れて、ひつまぶしのように味を変えながら食べるそうです。

実際に食べてみると、確かにローメンは焼きそばでもラーメンでもなくローメンだ。クセの少ない豚肉を使う店が多いというのもわかるのだが、マトンを使ってこそローメンというかあちゃんの意見もよくわかる。

昨日大阪の人がきたけれど、一口しか食べられなかったと悲しい顔をするかあちゃん。名古屋から大阪の人には受けが悪いらしい。


私は羊の肉が好きなので、このローメンは口に合う。締めに最高。
スープをとるために煮た豚の頭の肉に、特製のタレをかけたものがうまい。

長崎のちゃんぽんが海の味だとするなら、伊那のローメンは山の味。

海産物が乾物の昆布くらいしか使われていないこのローメンは、山に囲まれた伊那谷らしい味といえるのかもしれない。

 

お客さんに聞いてみた

せっかくなので、地元のお客さんにローメンとはどんなものかを聞いてみた。ちなみに伊那の人は全員が当然のようにローメンを頼んでいた。


 

ローメン最高ですよ!生まれたころから食べているんじゃないかな。私は必ず上がりラーメンならぬ上がりローメン。締めに食べるとね、「伊那」っていう感じ。

どうしても女性はやっぱりマトンが嫌いますから、豚肉が人気ですね。じゃあ焼きそばとかラーメンでいいじゃないって思うでしょ。でもローメンがいいっていうのが伊那なんです。

店によって全部味が違うのが最高。各お店を食べて、自分の好みを探してみてください。


 

ローメンは好きですよ。伊那の人でも家では作らないけれど、店でみんなはよく食べます。
※Iさんはジンギスカンのタレで作るそうです。

味を自分で変えられるのがいいんだけど、僕はバターを入れたバターローメンが好き。マヨネーズを入れたのもいいよ。

羊は体にいいから、伊那の人は長生きしますよ。同じ材料と同じ作り方でも、作った人によって味が違うのがローメンなんです。


 

ニンニクをいれるの好きなんですよ。明日会社にマスクしていかないといけないけど。

ローメンは昔から食べていました。でもラーメンはラーメンで食べます。これはスープローメンなんですよね?ならスープローメンと焼きローメンではスープが好き。

友達とかもローメンはみんな好きですよ。男はみんな好きじゃないかな。 入っている肉に好みがあるみたいですけど、僕はマトンが好きですね。でも豚肉も好きです。


伊那の人は、みんなローメンが当たり前に好きなようだ。まあローメンを頼んでいる人に聞いたのだがから、好きなのは当たり前なのだが。ちなみに長野でも県南から来た人に聞いた感想はこちら。

「ローメンきらい!おれ、アメリカンだから。伊那に来て25年だけど、はじめて食べたのがまずかった。人間が食うものではないと思った。肉がマトンでしょ、とにかくニンニク入れてもダメ。時間が経つと肉が冷えてロウみたいで、ああロウメンかと。おれは県南の人間だから、中華そばであっさりいきたいね。」

どうやらカメラマンの坂さん同様、最初に食べた印象が悪かったために嫌いになった人も多いようだ。でもこの店のローサイはうまいうまいと食べていた。

 

おみやげに焼きそば風ローメンを買ってみた

ローメンは店によって味が全然違うそうなので、食べ比べてみようかとも思ったのだが、好みをはずしてローメン嫌いになるのも悲しいので、とりあえずお土産用の焼きそば風と思われるローメンを買ってみるに留めておいた。


このように完成度が高そうなお土産用ローメンもあったけれど、
買ったのはこっちのチープな方。

沸騰したお湯で麺を茹でて、具と炒めて作るローメンは、天壇で食べたかあちゃんのローメンとまったく作り方は違うのだけれど、食べてみると確かにローメンだなという味がした。


マトンではなく豚肉で作ってみたけれど、甘みのあるタレの味ともっちりした麺は間違いなくローメンだ。でもやっぱりマトンが好きかな。

伊那のみんながいっていた、「ローメンはローメン」という言葉を思い出しながら、おいしくいただいた。


 
 

 

 
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