なくなってた

僕が最初にその手の、歴史的価値がありそうな建物に、ズボッと現代消費社会の表象であるコンビニエンスストアが挟まってしまっている奇妙さに惹かれたのが、横浜スタジアムの脇にあったストロングビルだ。

「あった」と記したのは、そのビルが取り壊されてしまったからである。
ストロングビルにはampmが入居していて（ストロングビルで画像検索するとでてきます）、上京したての頃に「なんてかっこいいのだ、さすが横浜」といたく感激した。
例えはちょっと変だが、スーパーカーに乗って牛丼を食べに行くみたいな、大事にしなきゃならないものを普段使いしているかっこよさを感じた。

なんかちょっとちがう

いまはその場所に、ストロングビルの外観を復元したホテルが建っていて、その1階にもコンビニが入っているというので見にいってきた。

本物を見にいこう

横浜のストロングビルは残念な姿になってしまったが、いまでも立派にコンビニとして営業している近代建築が東京・本郷にある。

国指定文化財コンビニ

文京区本郷3丁目にある「さかえビル」は昭和9年に建てられたビルで、国指定の登録有形文化財になっている（→文化庁のデータベース）。
その１階で、威風堂々とサンクスが営業しているのだ。

日本一かっこいいコンビニ

ここを初めて通りかかったとき、車を運転していたのだけれど、あまりの不思議さに戻って店に入ってしまった。
たぶんこんなかっこいいコンビニ、他にはないんじゃないだろうか。

うまいこと使ってる

文化庁のページによると、もともとは「薬学研究所を兼ねた事務所ビル」とのことで、以前は薬局だったらしい。
その時の店構えをじょうずにコンビニとして使っていて、やることがしっかりしている。

たぶんすごいんだろう

僕は建築のことはよくわからないので、古い建物を見てデザインがどうだこうだという目をもたないが、門外漢が見ても「こりゃ凝ってるな」と思えるところがたくさんある。

普段使い感ビンビン

そんなすごそうなさかえビルは、アルマーニのジャケットをTシャツの上から羽織って銭湯に行く、みたいな、普段使いの贅沢さに満ちている。
国指定の文化財なのに、屋上にプレハブ（通称山岡史郎の家）が乗っていたり、ゴミ箱やタバコの自販機が置いてあったりと、まったく飾っていない。

このさかえビルは、昔の建物が好きな人達の間では有名なビルで、しかもどちらかというとネガティブな方で有名なようだ。
たしかに「貴重な文化財を…」という意見は正しいのだろうけど、だからこそ、こんなんなっちゃってるさかえビルはイカしていると思うのだ。
「ちょいワル文化財」とでも言えばいいのか。

景観に配慮しないでくれてありがとう

冒頭にも書いたけれど、皮肉ではなく本気でさかえビルがかっこいいと思っている。
これが例えば1階のサンクスがなくて、オシャレでレトロなカフェだったりしたら、僕はこのビルになんの興味も持たなかったと思う。
ましてや、新ストロングビルに入っているみたいな、ちょっと遠慮してひかえめな看板にしました、というようなコンビニなんかになっちゃったら、もうそんなの…。