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ロマンの木曜日
 
コップ1杯の油を使うアジアンカレー


問題:この中にエビは何匹使われているでしょう

2年前、マレーシアで買ってきたカレー粉のレシピが独特すぎて未だに作る気になれない。
だって材料に「2〜3人前でサラダ油100ml」とか書いてあるのだ。そんなレシピ信用できない。
とかまあ、そんなこんなで作ってこなかったこのカレーを今こそ作ろう。

加藤まさゆき



スパイスを買ってこい、と言うカレー粉。


価格0.50リンギット。日本円で、1袋15円

これが問題の安いカレー粉。
マレーシアで、あまりの安さにテンションが上がって10袋以上も買ってきた。
だが、日本に帰ってきて愕然とした。
レシピが独特すぎるのだ。


えーと、材料は……
タ…マ…リンド・ペースト? カレーリーフ?

聞いたことのない材料ばかりだ。
しかもそれだけでなく、さらにシナモンだのクローブだのと、スパイスを買ってこいという。
許せない。
カレー粉とは、すでにスパイスがミックスになったものなんじゃないのか。買わせておいてさらにスパイスが必要だなんて、日本だったら詐欺に近い。
なんとも憤懣やるかたない気持になり、すっかり作る気を無くしてしまっていたのである。

 

材料、油コップ一杯??

しかしそんな重い腰をあげて、まあ作ってみるかと材料を熟読して、さらに驚いた。


え!? 「油100ml」!?!?

日本ではありえない油の量である。
これは2〜3人前のレシピだから。1家族5人前作ったら200ml、コップ一杯になる。ほとんど揚げ物だ。
僕の経験の中で未曾有の使用量である。

ここまで来ると逆に面白いな……

興味の湧いてきた僕は、本格的に材料を買い揃えて、この油アジアンカレー作ることにした。


  謎の材料を解明

商品名、まさかのダジャレ。

【Shallot】シャロット
シャロット、これは日本でいうエシャロットのことらしい。
なぜ「エ」が付いたり付かなかったりするのだが、まあ、ナスとナスビみたいなもんだろうか。
近所のスーパーで、1袋168円にて購入。


言語が何語か、さっぱり分からず。

【Coconut Milk】ココナツミルク
知っていても、どこで買ったらいいか分らないものは多いが、その筆頭格であると思われるココナツミルク。
2軒スーパーを巡り、店員さんに聞いたら、中華材料の売り場で売っていた。315円。


喫茶店でお菓子と間違える棒。

【Cinnamon, Cloves, Cardamon, Star Anise】
シナモン、クローブ、カルダモン、スターアニス
ここらもスーパーで何とか買えるスパイスだ。買ったことのないものばかりだが、勢い込んで購入。
スターアニスは八角のことなので、自宅にあったものをそのまま使用。


エスニック料理に欠かせない、だそうです。

【Tamarind】タマリンド……?
今回、2番目に頭を悩ませた材料。
調べると、南アジアで使われる豆を発酵させた調味料だとのこと。
んー……得体が知れない。味噌みたいなものだろうか?
amazonで購入に成功。580円。


中身はこんなの。見た目は味噌っぽい。
舐めると、古い梅ジャムみたいな味。

謎の材料、カレーリーフ

今回、もっとも頭を悩ませた材料が、「カレーリーフ」である。
直訳すると「カレーの葉」。何を言ってるんだろうと思い、調べると、そういう名前のスパイスがあるという。
早速注文した。


届いた。

生の木で。

カレーの臭いはしません。むしろ山椒系です。

【Curry leaf】 カレーリーフ
カレーリーフは、和名「ナンヨウサンショウ」というミカン科のスパイスで、葉は山椒とオレンジの間のような強い香りがする。
生木のほうが圧倒的に香りが強いということで探したら、売っているネットショップがあったので買ってしまった。

分量に「1枝」と書いてあり、リーフ(葉っぱ)なのに枝?と意味がよく分からないでいたのだが、現物を見て納得した。たしかにこれは「1枝」だ。

ではカレーを作りますよ。


〜えびカレー(2〜3人前)の作り方〜

1.えび 600gの皮をむく。

ちょっと待て、えび600gってめちゃくちゃ多いんじゃないか? と思いつつ、愚直にスーパーで買ってきたらこうなった。


冷凍タイガーブラックえび、600g。どう考えても2人前じゃない。

日本人は世界で最もエビを食べる国民だと、言われているのをよく聞くが、その真偽があやふやになった。
マレーシアでは、これが2人前のエビなのだ。1人前で18匹。本気だろうか。
本気だとしたら、世界で最もエビを食べるのは日本では無い。間違いなくマレーシアだ。僕はここで確信を持って断言したい。

 

2.フライパンに油をひき、シナモンと薄切りにしたにんにく・たまねぎ・カレーリーフを金色になるまで炒める。


さあここで、主役の油100mlの出番。

そして玉ねぎとカレーリーフもここで投入!
半ば揚げもののようになるフライパンの油。

明らかにフライパンの様子が異常だ。
炒めものではなく、ちょっとケチな主婦の揚げもののようになっている。
そして漂う香りは、これまでフライパンから嗅いだ事のないシナモンの甘ったるい香りと、カレーリーフの強力なエスニック臭。だんだん盛り上がってきたぜ、えびカレー。


どう考えても油となじむ気がしない。

3.カレーペーストを入れ、薄く茶色になるまで炒める。(ゆるやかに炒めて、大体5分)

カレーペースト、というのはカレー粉とエシャロットを混ぜて作った、もんじゃ焼きのタネみたいな液である。

「薄く茶色になるまで炒める」と、レシピに書いてあるが、入れた時点でどう見ても茶色なので、いつまで炒めたらいいものか全く分からない。
まあ、約5分て書いてあるから、5分でいいのかな。
信じて次の行程にいこう。


と思ったら、意外に油がなじんできている。すごい。

4.残りの水、溶かしたタマリンド、シーフードを入れ、10〜15分煮込む。

ここでようやくエビとタマリンドの登場だ。
エビ36匹を投入して、フライパンはすっかりエビ☆パラダイス。そこへ謎の調味料、タマリンド大さじ3分の1を加える。
カレーの量に対して、タマリンドの量が少なすぎる気がしたので味見してみたら、僕には全く差異が感じられなかった。
僕の舌が未熟なのだろうか。
本場の人が味見したら、「はあ?タマリンド入ってねえのかよ!?」ぐらいの何かがあるのかもしれない


 

5.ココナツミルク、トマト、塩を入れて味をつける。さらに10分煮込んで完成。

そして最後に、ココナツミルクの投入。これでぐっと味がアジアンカレーに引き寄せられる。
味付けは塩のみ。とは言っても、エビのだしがこってり出ているので、かなり濃厚な味に仕上がっている。

さて完成だ。早速食べてみよう


出来上がり! マレーシア風エビカレー!(エビ8匹入り)

ぱっと見、油が浮いているようには見えない。
いろいろな材料が入っていくうちになじむもんなんだなー、とこの時は油断していた。
ところが翌日、弁当に持って行ったところ、カレーの表面はこんなことになっていた。


表面にこってり油の層……

やはり油をなめてはいけない。油はこの中に隠されているんだ……。
さて、それはさておき、味見をした感想を書いてみます。

1.カレーリーフの強力な香り

一口目に感じたのは、カレーリーフの強力な野性味ある香りだ。カレーリーフの雑草と山椒を混ぜたような強い香りが鼻を突く。この感覚に、新鮮なものを感じる心のアンテナがぶるぶると震えだす。

2.辛い
食べてびっくり、驚くほど辛い。
辛口こくまろカレーの10倍くらいの辛さで、食べ始めから食べ終わりまで、ティッシュひと箱分は使ったんじゃないかという汗をかいた。
それはそれはちょっとやそっとじゃない辛さである。


辛い……。

3.さほどエビではない
最初のエビの量を見て、「これ、エビチリみたいになるんじゃねーの……」と思っていたのだが、思ったよりカレーはエビでは無かった。
でもエビから出たエキスはカレーとよくなじみ、素晴らしい味のバランスをなしていた。これ毎日食えるなら、マレーシアでエビの養殖始めようかな。エビエビ。

 

4.トマトがうまい
カレーにくし切りトマトなんて初めて入れたけど、この相性の良さがすごい。爽やかな酸味とさらさらしたカレースープの相性が絶妙。
これからは普通のカレーにもトマトを入れたいと思った。

 

5.油がもたれる
で、油は結局もたれたかのかと言うと、もたれた。
食べている間は、ココナツミルクの味、エビの味、トマトの味に浮かされて気がつかないが、かなりヘビーな量の油を取っている。
ていうかココナツミルクの白いのも油だから、僕はこの一食でどれだけの油を摂取したのだろうか。
そりゃもたれるよ、油。

総じて言うと、カレーはうまかった。
いや、もともとアジアンカレーが好きなので、レシピを覚えたかったのだ。
しかしやっぱり油100mlは多すぎる。
この後アレンジして、油を30mlぐらいに減らし、カレー粉も減らして作ったら、そっちの方がうまかった。
肉でも大体同じレシピでおいしく作れた。

さらにぶっちゃけて言うと、カレーリーフの香りが家族に不評だったので、ローリエの葉で作ってみたのだが、そっちの方が好評で、僕自身もそっちの方がおいしいと思った。
次からもローリエで作ろうと思う。

というわけで用済みになったカレーリーフの木はいま僕の部屋の片隅で、観葉植物として成長している。

ごめんね、カレーリーフの木。ちゃんと育てるから。

おまけ・今回のカレーのレシピ。
※カレー粉の袋の裏のやつの、直訳です。日本の材料と日本人の舌に合うかどうかはわかりません。
作ってみたところ少なくとも、トマトは日本のでは大きすぎるようなので、量を減らしていいと思います。


えびカレー
えび 600g
サラダ油 100mL
このカレー粉 1袋(25g)
シャロット(刻む) 64g
※半カップの水で溶き、ペーストに。
にんにく(刻む)2片
玉ねぎ(薄切り) 1個
ココナツミルク 220mL
タマリンドペースト 大さじ1/4
※水1/3カップでよく溶かす
水 700mL
トマト 1と1/3個
シナモンスティック 2cm
カレーリーフ 1本
塩 適量
  1. フライパンに油をひいて温める
  2. シナモンと薄切りにしたにんにく・たまねぎ・カレーリーフを金色になるまで炒める。
  3. フライパンに油をひいて温める
  4. シナモンと薄切りにしたにんにく・たまねぎ・カレーリーフを金色になるまで炒める。
  5. カレーペーストを入れ、薄く茶色になるまで炒める。(ゆるやかに炒めて、大体5分)
  6. 残りの水、溶かしたタマリンド、シーフードを入れ、10〜15分煮込む。
  7. ココナツミルク、トマト、塩を入れて味をつける。さらに10分煮込んで完成。

肉類カレー
このカレー粉 1袋(25g)
肉(鳥か牛) 600g
ココナツミルク 200g
シャロット(刻む) 12個
にんにく(刻む) 6片
しょうが(刻む) 2インチ
玉ねぎ(薄切り) 1個
にんにく(薄切り) 3片
タマリンドペースト 大さじ1
塩 適量
カレーリーフ 2枝
シナモン・クローブ・カルダモン・スターアニス 少々
サラダ油 100mL
ジャガイモ(半切り)2個
トマト(くし切り)4個
水 500mL
  1. 刻んだシャロットとにんにく、しょうが、カレー粉、コップ一杯の水を混ぜてペーストにします。
  2. サラダ油を熱し、シナモン・カルダモン・クローブ・スターアニスを、薄切りにしたにんにく・玉ねぎ・カレーリーフとともに炒める。材料が黄金色になるまで炒める。
  3. カレーペーストを加え、ペーストが濃くなって油が分離するまで中火で炒める。
  4. タマリンドペーストと塩を加える。
  5. ココナツミルクとジャガイモと水を加える。沸騰させた後に、肉を加える。
  6. 沸騰したら弱火にしてトマトを入れ、あと5分煮る。
  7. できあがり。

チキンカレー
このカレー粉 1袋
※水を加えて、ペーストに。
鳥肉 600g
ココナツミルク90ml
サラダ油 90mL
水 560mL
玉ねぎ 2個
※ひとつは薄切り、もう一つはくし切り
にんにく 4片
じゃがいも 3個
しょうが少々
塩 適量
  1. 玉ねぎ・にんにく・しょうがを薄切りにし、しばらく炒める。
  2. カレーペーストを加え、香りが立つまで炒める。
  3. 肉と水を加え、肉が柔らかくなるまで煮込む
  4. ココナツミルクとくし切りの玉ねぎ、じゃがいもを加え、柔らかくなるまで煮る。
  5. 塩を加えて味をつける
  6. できあがり。

 
 

 

 
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