ダムが好きで、10年くらい前から全国のダムを見てまわっている。
今までにも何回かダム関係の記事を書かせてもらってきたけど、今回は発電用のダムのかっこよさを語りたい。
ダムなんてどれも一緒、と思っている人も多いと思う。でもよく見てほしい。いろいろな役割があるダムの中で、発電を唯一の目的として造られたものは、ひとつの仕事を寡黙にこなす職人のような後姿、そして鍛え上げられた肉体美を持つアスリートを彷彿とさせる存在感があるのだ。
(萩原 雅紀)
発電用ダムとは
まず発電用のダムとそうでないダムの違いを見てみよう。
たとえば洪水を防いだり水道水を貯めたりといった、いくつもの役割を兼ね備えているダムを「多目的ダム」という。多目的ダムは雨の多い季節用、雨の少ない季節用、大雨のとき用といった、目的の違う放流設備をいくつか持っているものが多い。いろいろな場所に水門やバルブがついていて、なんとなく見た目も豪華っぽい。
それに比べて発電用のダムは、貯水池に貯めた水を発電所に送るのが仕事である。上流から必要以上の水が流れてきたときはそのまま下流に流すだけ(本当はもっとデリケートに操作されています)。したがって放流する設備はシンプルで、基本的にはてっぺんに水門がいくつかついているだけのものが多い。
多目的ダムがさまざまな調理器具を駆使してカラフルなフレンチをつくるシェフなら、発電ダムは1組の包丁とまな板で勝負する寿司職人だ。
多目的ダムと発電専用ダム、見た目でどちらが好きかは好みが分かれると思う。たとえば同じ川のすぐ上流と下流にあるダムでも、発電用ダムと多目的ダムではこんなに見た目が違うのだ。
当然僕はどっちも好きだけど、発電用のストイックな立ち姿には惚れ惚れしてしまう。