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ちしきの金曜日
 
カセットテープで簡易コピー
簡単に文字をコピーできます

このタイトルを見て「なつかしい!」と思った方は、おそらく30代後半以上の方だろう。
先日若い知人と話をしていて、なんとなくこの話題になったのだが、その人はカセットテープがコピーがわりになることを知らなくて、僕はとても驚いた。
他の20代の知人にも聞いてみたが、ほとんどの人が知らなかった。

工藤 考浩



当たり前のことが忘れられる

確かに最近ではカセットテープも見かけなくなったし、ちょっとした記録だったら携帯電話のカメラでだいじょうぶだし、文字を印刷したければパソコンを使えばいい。
けれども、あんなにメジャーだった事が、わずか20年くらいの間に消え去ってしまうというのには驚かされた。
文化というのはいかにもろいものか。


久しぶりに買ったカセットテープ(ヤマダ電気大井町店で)

進化もある

とはいうものの、実際に僕もこの15〜6年くらい、カセットテープコピーをやってはいない。
それどころか、カセットテープすら手に取っていなかった。
この記事のために、久しぶりにカセットテープを購入したが、あのどこから開けるかわからなくて悩まされていたパッケージが、ものすごく開けやすく進化していた。
こういうところでもきちんと新しい技術が生まれているということには勇気づけられる思いだ。


CDを録音する人がどれくらいいるのか
開けやすく進化している

コピーの方法

知っている方には説明するまでもないが、知らない方向けにカセットテープを使った簡易コピーの仕方を解説しよう。


これがカセットテープです

まずはカセットテープのリール部分をペンなどで回し、くろい磁性体の塗られた部分が見えるようにする。

ここを回して
黒いところが見えるように

そして、その部分をカセットから適量を引き出す。
ここであまり引き出しすぎると、絡まって戻らなくなるので注意が必要だ。


あんまり出し過ぎない

引き出した部分をコピーしたい文字の上に乗せ、ボールペンのお尻など、棒状のものでこする。


文字の上に乗せてこする

現在でいうところの「スキャン」はこれで終了。
つづいて「スキャン」した文字を「プリント」する。

磁気テープだからといって文字がデータとして取り込まれているわけではもちろんなく、印刷された文字のインクが磁性体としてテープに塗られたγ酸化鉄と反応して記録されるのである。
ちょうど(これも一昔前の技術になるが)ワープロなどのインクリボンプリンターと似た原理だ。


白い紙を用意して

転写

取り込んだ文字を写すための白い紙を用意する。


同じようにこすると

先ほど転写した部分を紙の上に置き、棒でこする。
この場合、強くこすったからといって転写が濃くなるわけではない。
あくまで紙に移すという感覚で静かにこする。


先ほどの文字が

そしてこすり終えたテープを静かにはがすと、先ほどの文字が転写されている。


見事に転写される

用途がないから廃れたのだ

この簡易コピー、何に使われていたかというと、エアチェックなど音楽を録音したテープのレーベルに、アーティスト名や曲名を綺麗に記入するのに役に立ったのだ。

同様の目的でカセットテープコピーの他に、転写用のアルファベットが印刷された「インスタントレタリング」なるものがあったが、価格も高く、また日本のアーティストでもアルファベットで表記しなければならず、そこで誰かが編み出したのがこの技だ。
当時の音楽雑誌などには、簡易コピー用の文字が印刷された専用のページなどもあった。

最近では、音楽は携帯音楽プレーヤーにデジタルデータとして記憶させて聞くのが主流なので、「カセットのレーベルを綺麗に」なんていっても伝わらないかもしれないが、あの頃僕たちはこういうことをしていたという事だけは知っていてもらいたい。
それが僕の希望だ。

懐かしい思い出

この記事はエイプリルフール企画のために作ったうその記事です


 
 

 

 
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